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婚約破棄できない!?~ヒロインは、逃亡した 編~

続きはありません。

毎度おなじみ転生者の旭川 彩羽いろはです。

乙女ゲーム『略★奪☆』の世界に転生しました。

タイトルにネタ切れ臭が漂いますが、突っ込んではいけません。

このゲームは、一般庶民のヒロイン(15)がお金持ちの高校に入学するところから始まります。

そして、お金持ちのお嬢様にはない魅力に攻略対象たちがヒロインに惹かれていくのです。

タイトルに略奪と付くくらいですので、攻略対象たちは全員、婚約者がいます。

そこから、流行りの『真実の愛(笑)』を勝ち取って、ヒロインと攻略した攻略対象が両思いとなるのです。

ゲームでの私の役目は、ヒロイン佐野 海月みづきの親友兼情報収集キャラ。

サポートキャラではありません。

考えてみれば、当り前なこと。

親同士が決めた婚約者がいて、たくさんの恋愛を経験していないのに的確な恋愛アドバイスなんてできるはずないじゃないですか。


女子高校生までの女の子がヒロインで、ヒロインと攻略対象ヒーローに求められる物ってなんでしょうか?

そうです。

お互いが、『他人の物』になってない状態です。

『身』も『心』も。

ぶっちゃけ、『処女』『童貞』。

恋愛に夢見る潔癖なお年頃なら、必須事項ですよね。


現在、海月さんは喜多方孝之ルートを行っています。

喜多方先輩は高校三年(17)で、高校教師(34.5)の京都愛子が婚約者。

彼女は、ライバルお嬢様ではなく悪役お嬢様でもなく悪質お嬢様です。

彼女は自慢の美貌を利用して、様々な男をけしかけて海月さんを傷ものにすることに執念を燃やすというのがゲームでの設定。


京都先生が、喜多方先輩の婚約者となった経緯は________

京都先生と喜多方先輩の母親同士が、親友なのです。

そのことから、喜多方先輩が幼い頃からの知り合いです。

そして、弟が欲しかった京都先生は喜多方少年を大変可愛がりました。

優しく美しい美少女なお姉さんに、喜多方少年が幼いながら恋心を持つのは当然でしょう。

京都先生は、相思相愛の婚約者(恋人)がいました。

家同士の結びつきのための婚約だったのですが、互いを理解し思い合う理想的な恋人同士だったのです。

それが崩れ去ったのは、喜多方少年が7歳の頃。

大好きなお姉さんが、すでに結婚が決まった婚約者がいたことを喜多方少年が知ったことから始まります。

喜多方少年は、大好きなお姉さんと結婚するのは自分だと思い込んでいたので、そのことを知った時に癇癪を起しました。

それで、喜多方少年は大好きなパパに「愛子お姉さんと結婚したい」と泣きながら訴えたのです。

喜多方少年を溺愛するパパは、京都先生が婚約していることを知りながら、社会的な圧力をかけつつ京都家に自分の息子と京都先生の婚約を迫ったのです。

当時、京都家は喜多方家から多額の融資を受けていました。

融資先は他にもあるのですが、喜多方家の圧力に屈して当初の京都先生の婚約者の尾道家に誠心誠意謝罪し、婚約解消しました。

尾道家もある程度格があるのですが、こちらの方にも喜多方家が圧力を掛けていたので、お互いの状況を話し簡単に婚約解消となったわけです。

このことから、喜多方家は京都家と尾道家と懇意にして利益を得ている家から信用を失いました。

「自分の息子の我儘のためなら、他の家たちが必要としている婚約さえ解消させると」

一般庶民が時代錯誤と思う家同士のための婚約なんて、必要不可欠だからするに決まってるじゃないですか。

現在、通っている学園は、実力主義です。

お金持ちが通う学校ですが、合格基準に達しないと付属の高校に進学できません。

喜多方先輩は絶対に高校進学できる自信があるに関わらず、高校進学する自信がないという嘘くさいことをネタに京都先生にさらなる関係を迫りました。

そして、喜多方先輩は中学二年で童貞卒業となったわけです。

乙女ゲームの攻略対象として、あるまじき所業です。

そんなこともあり、ゲームでの京都先生は喜多方先輩に異常な執着心を抱いてました。

さらに詳しく言うと、ゲームとは違い海月さんを口説いてる最中でも喜多方先輩は京都先生との関係を現在も続けています。


ここで、私の婚約者のことも話しておきましょう。

札幌朗(17)。

彼も、攻略対象。

ゲームでは、『お互いを潰し合うために婚約した』。

初めて会った時から、お互いが気に入らなかった。(いわゆる、同族嫌悪です)

なので、邪魔ものたちを牽制するために婚約した。

心置きなく、戦うために。

現実では、喜多方孝之という共通の嫌いな相手からの被害を避けるために手を組みました。

時に、喜多方先輩で遊びトラウマを植え付けながら。

これは、『喜多方家と京都家の婚約の経緯』と一部の家からの反感を買っているのを理解しているから。

それらを知った私と朗さんは思いましたね。

「コイツとは、必要最低限の接触にしよう」と。

お約束のように、朗さんは生徒会に入っています。

ちなみに、ゲームでは喜多方先輩と朗さんは親友です。

あくまで、『ゲームでの設定』です。

うっかり、朗さんに「生徒会長とは親友ですよね?」と脳内が腐ったとある一部の女子生徒たちが言ったところ、その脳内が腐った女子生徒たちは翌日から登校しなくなったそうです。

ちなみに、私も同じことをします。

だって、あんな人間のクズと同類にされたくないじゃないですか。


普通なら、ヒロインである海月さんに攻略対象ヒーローを完全に堕とすために、私が喜多方孝之に関するあらゆる出来事や知識を教え込んでいくのですが、彼のだらしない下半身事情を知っている私は、海月さんに婚約者持ちのバカを止めるように何度も苦言を呈しました。

ですが、その度に海月さんは「喜多方生徒会長は、カッコよくてすごくいい人だよ!昨日も、ものすっごく怖い人に絡まれた時にすぐに助けてくれたし」とどれだけ喜多方先輩が、海月さんをカッコよく助けてくれたかを目をキラキラさせながら語りだしました。

私はそのことをものすっごくいい笑顔で聞き、海月さんから聞いたことを朗さんに話しました。

もちろん、喜多方先輩の自作自演と京都先生が成績に関することを餌に雇った生徒たちのことを調べてまとめた資料とともに。

数日後から、心なしか喜多方先輩の顔色が悪くなってきたのは、絶対に気のせいです。


そんなある日、海月さんが珍しく私に文句を行ってきました。

「ちょっと、彩羽。最近、喜多方会長に仕事を押し付けすぎなんじゃないの!生徒会長としての仕事が忙しすぎて、デートできないと言われたわ!」

「いえ。普通に生徒会長としての仕事量ですよ。今までは、喜多方の小父様から京都家から息子に対する婚約破棄をさせないように頼まれて、喜多方会長の仕事の半分以上を私と朗さんが請け合っていたのですが、喜多方の小父様が息子が海月さんにまで手を出そうとしていることを知って、生徒会長だけで本来する仕事を私たちで手伝わなくてもいいと許可をくださったのです。なので、仕事を全く押し付けてはいないですよ。本来の状態にしただけです」

「ウソッ!?」

「佐野、知らなかったのか?学校内では誰でも知っているほど、喜多方が旭川と札幌に仕事を自分の分まで押しつけてるのは有名な話だぞ。喜多方家が体面を気にして、コイツらの家に仕事をするように圧力をかけたが。京都家には、そのことが漏れないよう京都先生がうまく隠してるんだぞ」

クラス担任の富山先生は、ご丁寧にも海月さんに説明しました。

「そんなっ!?」

喜多方会長が、私と朗さんに仕事を押し付けてきていたのは我慢していたのですが、人に仕事を押し付けてできた時間によって、海月さんに惚れられるための作戦を実行して口説き、京都先生とやることをやって楽しんでいたのです。

それらに対する我慢の限界が来た私と朗さんは、喜多方家の小父様に喜多方会長がしていることをすべて話し、喜多方会長がする仕事を私たちに押し付けないように脅しました。

物凄く、輝くような、素敵な、笑顔で。

なぜか、喜多方の小父様は青褪めた顔をして、即答で早口でまくしたてるように「馬鹿息子の尻拭いは、もうしなくて結構でございます」と土下座しそうな勢いで言いました。


そして、高校三年の皆さんが高校を卒業する日。

乙女ゲームな世界なだけに、前世でよく読んだ乙女ゲームの小説のような展開が待ち構えていました。

高校生活における重要なイベント『卒業式』の日なのに。

「京都愛子、お前との婚約を破棄する!」

得意顔になりカッコよく言っているつもりの喜多方孝之に、怒りで拳を握りしめる喜多方の小父様。

今日、京都先生のご両親が来ていなくてよかったですね。

「未来の息子の卒業式が楽しみね」と京都の小母様は言っていたのですが、多忙で京都の小父様同様来れなかったのです。

来てくれていたら、もっと面白惜しい展開になっていたのに残念です。

「お前は、俺が本当に愛している佐野海月に対して、悪質極まりない嫌がらせをした!よって、お前は喜多方家に相応しくない!精根腐った根性を直さないお前は何より、俺に相応しくない!」

何度も、『相応しくない』を繰り返している喜多方先輩こそ、会社の次期社長候補として相応しくないのに気付いてすらない所が、笑いを誘います。

あっ、今、ハゲの校長がキレた。

ある意味すごいですね、喜多方先輩は。

愛を囁いて抱いた女に対して、精根腐ったというとは。

自分の方が精根腐っているのにもかかわらず。

ハゲの校長が期待のこもった目で私を見ているので、とりあえず反撃をしてみます。

ちなみに、三年の卒業式に出なくていい一年の私はハゲの校長の要請で出席しています。

「喜多方先輩、ちょっと待って下さい。京都先生は、佐野さんに悪質極まりない嫌がらせはしていません」

「ウソをつけ!俺は本当のことを知っているんだぞ!」

「では、どうやって調べたのですか?京都先生が佐野さんにしようとしていた嫌がらせは、私と仲間たちがすべて事前に潰していますよ」

悔しそうに下唇を噛む喜多方先輩を見て、失望する喜多方の小父様。

ちなみに、仲間たちというのは私が情報を握って脅した両親や旭川の親族たち、京都先生を心配する京都家、そして京都先生の元婚約者のいる尾道家です。

「ウソだ!ウソだ!ウソだ!」

本当に調べたのなら、私が関わっていることが分かるはずです。

『調べる』ということが、どういうことを言うのか分かっていなのはガッカリです。

まさか、ここまで馬鹿とは。

「孝之、本当に愛子さんと婚約破棄するんだな」

喜多方の小父様は、呆れた表情を隠さずに喜多方先輩に確認します。

「もちろんです、父さん。俺は、本当の愛に生きたい。彼女なら、愛子と違って俺を支えてくれる」

「そうか、それがお前の考えか。今後、喜多方の名を名乗るな。愛子さんを妊娠させておいて、婚約破棄するとは我が息子ながら情けない。お前は今から、私の親戚の寺田家に入ってもらう。文句は言わさん!」

「ウソでしょ!父さん。俺は、愛子が妊娠しないよう完璧に避妊していたんだぞ!」

「馬鹿者!避妊は、100%出来ないものだぞ。その程度知らなくて、していたのか!」

「なら、愛子が俺を離さないためウソをついてるんだ!そうだろ、愛子!」

ビックリですね。

乙女ゲームな世界で、避妊や妊娠の単語が出るなんて。

意外性を持たせたかったのでしょうか、喜多方先輩?

ハゲの校長と先生方は、喜多方先輩主演の三文劇場を終わらせろと私に視線で訴えてきます。

京都先生にいたっては、本題に入らせてと。

それにしても、『本当の愛(笑)』に目覚めたらしい喜多方先輩は気付いているのでしょうか?

ここに、愛しの佐野さんがいることを。

ちなみにちなみに、私は小声で海月さんにこれまでの喜多方先輩の女性遍歴を語っています。暇つぶしに。

本当の愛(笑)に目覚めたのなら、愛の力(笑)でここに海月さんがいることを分かるはずですよ。

今までなら、海月さんは『喜多方先輩の真実』をどれだけ懇切丁寧に説明しても耳を貸しませんでした。

ですが、この状況では目を覚まさずにはいられなかったのでしょう。

今まで、見ようとしなかった喜多方先輩の真実を自分が理解するまで私に聞いてきます。

もちろん、私は誇張するでもなく『事実のみ』を教えました。

時に嘘よりも、事実の方が性質が悪い。

そして、

「喜多方先輩。本当のことですか?京都先生のこと」

ここに喜多方先輩の予想外の人物が割って入ってきました。

「海月、それは...」

最愛の人に見られたくない現実を見られて戸惑う喜多方先輩。

すでに認めてしまっているので、人目を気にする彼は否定したくてもできないのですね。

「...っ、ウソつきっ!京都先生とは家同士が決めた婚約だから、女として見たことがないって!本当は、そういう関係だったんだ」

泣きながら、海月さんが出て行きました。

「海月っ!」

海月さんを追いかけようとする行く手を阻む、喜多方の小父様。

「父さん、退いてください!今、海月を追いかけないと!」

「馬鹿息子、そんなことより今は卒業式だ!これ以上、この場を乱すな!」

今まで見たことのない父の気迫に大人しく従う喜多方先輩。


卒業式終了後は、喜多方先輩主演の茶番劇場の続きです。

面白がった生徒たちと情報収集をしたい保護者たちで退場者はいません。

若干、私を怯えて見ているのは気のせいです。

「喜多方先輩、海月さんからメールが来ました」

「本当か」

どこか、ホッとしたような顔をする喜多方先輩。

「では、読みますね」

「ああ」

「『喜多方先輩。これ以上、あなたとはお付き合いできません。あなたを信用できなくなりました。さようなら。 海月』以上です」

「ウソだ!!!」

そう言って、私からスマホを奪い取りメールを読みました。

絶望し、膝をつき四つん這い姿になる喜多方先輩。

「...そうだ!愛子!愛子は、俺のことを愛しているんだろ!子どもができたことだし、婚約を続けよう!」

海月さんとは、真実の愛(笑)ではなかったのでしょうか?

真実の愛(笑)に目覚めた割には、切り替えが早いですね。

京都先生は大きくなったお腹をさすりながら、

「なに言ってるの?この子の父親はあんたじゃないわよ。あんたとする時は、どれだけ念入りに避妊をしたと思ってるの。この子の父親は私の本当の婚約者の尾道俊明の子よ。馬鹿じゃないの」

京都先生は、蔑んだように言いました。

説明しよう。

京都先生は確かに、以前は喜多方先輩に執着していました。

だって、愛する人と引き裂かれた原因が喜多方先輩で自分には喜多方先輩しかいないと思い込んでたから。

なので私は尾道家に行き、俊明お兄様に結婚しているのか訊いたのです。

私が訊いたのに初めは驚いたのですが、京都先生のことを話すと京都先生には自分が付いていないとダメだと思い、私の協力者となったのです。

ちなみに、俊明お兄様は独身です。

お見合いは続けていたのですが、京都先生のことを忘れられずにいてわざと婚約を破綻させ続けていたのです。

私は水面下でいろいろ動き、京都先生と俊明お兄様を元の鞘に戻したというわけです。

この時に、京都先生と俊明お兄様から「彩羽ちゃんだけは、敵にしたくない」と言われました。なぜだ?

「喜多方先輩に嬉しいお知らせです♪無事に、京都先生と婚約破棄できました。おめでとうございます♪ち・な・み・に、京都先生と尾道俊明さんはこの後すぐにめでたくご結婚して、今後、京都先生は喜多方先輩と一切関わりがないことを『旭川の名にかけて』保証します。本当に、おめでとうございます」

「おめでたくないだろ―――!こうなった以上は、愛子と婚約し続けないと俺は喜多方の次期社長になれない!ふざけるな!」

喜多方先輩は私に襲いかかろうとしたのですが、私は手近にあったパイプ椅子で返り討ち★

結果、喜多方先輩は私によって戦闘不能になりました☆

朗さんと俊明お兄様が、さらに追い打ちをしているのは見なかったことにします。

誰も、喜多方先輩を助ける人はいません。



喜多方先輩は卒業後、お寺の中で最も厳しいといわれる寺田家所有のお寺に入りました。

そして、私の下僕たち(霊とか妖怪とか)からも躾けられたのです。



海月さんと私は、来年から別の高校に通うことになりました。

海月さんが、「恋愛はしたいけど、お金持ちの男は信用できない」と泣きついてきたので。

次の高校は、このゲームの続編(前作が、ノーマルエンドで終わると仮定した)でセカンドシーズン『ふつうに、恋して』の舞台の高校です。

これが、乙女ゲームな世界の強制力★

・旭川彩羽は転生特典として、『どんな情報でも入手できる』というスキルを持っています。

・喜多方孝之の『孝之』は、あのアニメキャラの孝之さんからきています。

・京都愛子は、旭川彩羽により喜多方孝之の女性関係を強制的に聞かされ、喜多方孝之への思いが跡形もなく消えた

・喜多方孝之が関係した女は、口止めできる同じ年から年上の複数の女性たち。

・喜多方孝之が、旭川彩羽にパイプ椅子で殺られたのは彼が軟弱すぎるお坊ちゃんだからです。

・旭川彩羽は、情報を持っているなら人外でも神でも脅せる。




ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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