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クリミナルサーキット  作者: 雪折小枝
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04

病室から、長谷河が去った後。

二人は、ガールズトークを始めながら。今は、事件の時の話をしている。

姫野は、長谷河や秀紀とともに屋上に居たこと。

椎名は、お昼ご飯を買いに廊下へ出た瞬間に、爆発に巻き込まれたこと。

それによって、学校が休校したことを話した。

「学校……やっぱり休校したんだ……」

「うん……。あんな事件があったから……。理世ちゃん、あの時のこともっと詳しく教えてもらえる?」


姫野のその言葉を聞き、黙ったまま椎名は姫野の目をじっと見る。

椎名の目からは、どこか重たく刺さるものを感じ。姫野は、背筋にぞわっと何かを感じた。まるで、姫野という存在を隅から隅までくまなく見られているように姫野は、感じた。

「なるほど、そうだったんだ」

「えっ?」

姫野は、何に椎名が納得したのか分からなかった。

「友鈴ちゃん、あのね。普通の一般的な人は。私の見解だと深く聞かないと思うの……」

「あっ、ごめんね……」

「私が、体験したことを聞きたがる人って。悪趣味な人とか、もしくはこの事件の解明に頑張る警察の方だけだと思うの」

ぴくっと姫野は、意識していなくても自然に眉が動いてしまう。

「やっぱり、友鈴ちゃんって警察の人なんだね。私に近づいたのは、クリミナルの件で?」

「何を言っているの理世ちゃん……?」

「ごめんね……。でも分かっちゃうの、私のこの目はね人の意識に頭の中にダイブできるの。だから、私に嘘は通用しないよ?」

にこりと椎名は、そこで初めて笑顔を見せた。

だが、その笑顔からは冷たい冷気のようなものを感じた。

「……そうなんだ。ははっ、バレちゃったか」

「うん、ごめんね。普段は、こんなことしないんだけど。さっきの質問には、ちょっと気掛かりで」

二人の間には、重苦しい空気が流れる。

「バレちゃったし、言うとね。上司から、クリミナルを捕まえてこい~って言われて、勘で何となくこの高校に転校したら。ビンゴだった、ただそれだけなの」

「勘で、私とお兄ちゃんがクリミナルのメンバーで分かっちゃうなんて……。そんな」

「でも、そうなの。昔から私、勘だけで行動すると上手く行っちゃったりして。理世ちゃんのとは、違うけど……」

「私のは……。友鈴ちゃんのとは、違って……後天的なもので……」

「『G計画』でしょ?」

椎名は、その言葉に動揺してしまう。

「神様が、現れないなら神様を作ればいいじゃないって。孤児を何人か、被験者として使って怪物を作る計画」

「なんで、そのことを知ってるの! 警察の人だって、上層部の人しか知らないことだって」

「私が、その上の人間だとしたら?」

ふふっと姫野は、笑みを浮かべる。

「だって、さっき友鈴ちゃんは上の人からって」

「そうだよ、でも警察の上にはこの地に住む悪の元凶。資産家が、いるでしょ?」

「じゃあ本当に……。友鈴ちゃんは……」

数秒の無言の時間が、流れ。姫野は、その無言の時間に耐えられないように吹き出しながら、笑う。

「冗談だよ、理世ちゃん。私がそんなわけないじゃん」

「そうだよね……。それで、友鈴ちゃんは、私達を捕まえないの?」

「捕まえないよ? だって、さっき話した通り悪者は、資産家の人達だし。 しかも、クリミナルは悪人しか殺してない。陰ではあるけど、正義の味方でしょ」

「友鈴ちゃん……。その言葉信じていいの?」

「うん、信じて大丈夫。私は、捕まえないよ。でも、気をつけてね。警察は、血眼で探してるんだから」

コクリと椎名は、頷いた。

「それじゃ、仲直り」

姫野は、右手を差し出してくる。

それに一瞬、戸惑いながらも椎名はその手を握った。お互いにふふっと笑みをこぼす。

その時だ、窓から眩いばかりの光が入ってくる。

「こ、この光……あの時と」

「理世ちゃん。伏せて!」

ドオンとという爆発音とともに窓が割れ、あの時と同じようにどこからか黒煙が上がってきた。



長谷河は、必死に走っていた。

犯人が、待つという公園に。

「はぁはぁ、どこだ」

息を切らしながら、周囲を見渡すと木に背を預けて。立っている人物を見つけ、近寄る。

「あの」

「久しぶりだな、辰馬」

くるりとその人物は、振り替える。

黒のポロシャツに黒のニッカポッカを履いたその人物は、長谷河には身の覚えのある人物だった。

「なっ、兄貴」

「そんな顔をするな、俺が死んだと聞かされたんだろうが。この通り、生きている」

「今までどこに」

近づこうとした、その時。

横から、何かの気配を感じとり。長谷河は、肩を上げ防御する。

「お前ごとき人物が、主に近寄るな!」

それは、和服姿の女性だった。

「ぐっ、ははっ。知らない間に兄貴は、一国一城の主にでもなったのか?」

「面白い冗談だな、辰馬。気に入った、やっぱりお前は最後のフィナーレとやらを見せてから殺すとしよう」

その言葉を聞いて、長谷河は確信した。

「あんたが、爆弾魔か」

「ああ。俺が、爆弾魔だ」

ドンっと地面を蹴りあげ、殴りかかるが和服姿の女が立ちはだかる。

「主には、近寄らせない」

「男は、女を殴らないとか世間では言うが。俺には、関係ない。邪魔をするなら、殴り殺すぞ」

「渡舟<わたぶね>、やめておけ。本当に殺されるぞ?」

「兄貴……聞かせてくれ……。何で、生きてるんだとかそんなことはどうでもいい。ただ、何でこんなテロじみたことを」

彼は、ふっと笑った。

「この町は、汚れてしまった。俺は、ただ掃除がしたいだけさ」

「なら、関係ない人を巻き込んで。傷付けるのをやめろ!」

「俺は、掃除がしたいと言ったろ。俺は、この市を消してやりたいんだ。そして、元の田園溢れるあの和やかな町に戻したい」

「そんなことさせるかよ! もう町は変わってしまった。なら、この町をせめていいものにするのが俺達の役目なんじゃないないのかよ!」

大きくため息をつき、ポロシャツの胸ポケットから一本タバコを取り出すと吸い始める。

「なら、守ってみせろ。辰馬、お前自身の命もろともな」

冷たくいい放つと、ポケットからスイッチを取りだしポチッとボタンを押す。

すると、けたたましい音とともにどこかから黒煙が上がる。

「おやおや、どうやらどこかで爆弾が作動したようだな」

ギリッと歯を噛みしめ、渡舟の隙をつき、男を殴る

だが、まるで何事もなかったかのように手を軽く払い、顔を近づける。

「辰馬、いい拳だ。だがな、殺す殺すと言っておきながらお前の拳には、殺意が乗っていない。ただのへなちょこパンチだ」

長谷河は、ぐっと顔をしかめつける。

「それとだな、さっきから黒煙を上げている場所。俺の記憶が、正しければ椎名が居る病院のようだが?」

はっと我に返り、黒煙の上がっている先を見つめると一目散に駆けていった。

「ふぅ~、行ったか」

ふらっとなる男を渡舟は、抱き止める。

「すまないな、渡舟。いや、流石我が弟。馬鹿力だ、殺意が籠っていなくても相手を一撃で沈めることぐらいはできるな」

「主様、無理しすぎです」

「兄貴というのは、弟の前では強がってしまうものなんだ」

渡舟は、そっと殴られた頬を撫でた。

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