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クリミナルサーキット  作者: 雪折小枝
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森や山に囲まれ、田舎町として衰退していく運命だった湯川町はいつしか名のある資産家を引き寄せ、ここ数年で数百万の人口を誇る小さな都市部と化し、湯川市と名を変えた。

だが、資産家が集まるにつれ。湯川の地に光だけではなく闇まで立ち込めてきた。

その資産家の一人ーー成瀬≪なるせ≫氏の所有の豪邸。それは坂の上にあり、成瀬氏の栄華を意味するかのようにこの市を見渡せる。

その豪邸に、一人の少年が捕らえられていた。



屋敷の中には、軍用の装備で固めた傭兵が屋敷を守っており、蟻一匹でさえ入ることが叶わない場となっている。

「本当にあんな少年ごときで、くるんですかね?」

新入りと思われる傭兵の1人がそんなことを言う。

「あいつらは、仲間意識が高い。クリミナルは、必ずくる」

そんな二人の遥か頭上には、一隻のヘリが飛んでいた。

「やれやれ、本当に手のかかる後輩」

ゴーグルを着けた一人の女の子が言う。強風により、その長い黒髪がバサバサと揺れる。

黒のパーカーに、ジーパンを履いている彼女は一見したら綺麗な女性に見えるが、首筋に独特な模様のタトゥーを入れているため怖い印象も与える。

ヘリのドアから、落下地点を予測し。

そして、まるで爆弾のように迷いもなく一直線に建物の屋根に落ちていく。

ドォンとまるで、空から爆撃を受けたかのような音がその場に響き渡る。

落下した彼女からは、粉塵が巻き起こる。

「げほっ、げほっ。あぁ~私じゃなかったら間違いなく死んでたわ、これ」

「だ、誰だ貴様は!」

エントランスに落ちた彼女は、数名の傭兵に囲まれ。彼女は、すぐさま降参と手を挙げた。

「ほらほら、皆怖い顔しないで。私の名前は、白鷺琴梨≪しらさぎことり≫。よろしくね」

パチンとウインクをするが、傭兵達の緊張は一切ほどけない。

「き、貴様が!!クリミナルなのか!」

「クリミナルね~……。犯罪者を……化物を造るように融資したのはあんたらの主様だってのに」

「ま、まぁいい。早くこいつを牢に連れていくぞ」

「はいはい、いきましょ。そこに、どうせ後輩くんもいるんでしょ?」

彼女は、ニヤリと不適に笑みを浮かべて。誘導されるまま地下へと連れていかれる。

長い螺旋階段を下るとそこには、鉄格子にかためられた牢がいくつもあり、その中には生き耐えた人間の亡骸が入っている。

そして、ある牢の中にはお目当ての少年の姿があった。鎖に両手、両足を拘束され。動けないことをいいことに上半身には幾多の殴打の跡がある。

「あ、やっと見つけた」

「おい、貴様!とまっぶ!」

それは、一瞬だった。

振り返り様に喉に抜き手を入れ、右で銃を構えた傭兵には抜き手を入れた傭兵から抜き去ったナイフで首筋を切り、発砲させる隙を与えなかった。

「くっ、くそっ!」

前を先行していた傭兵は、距離を取り銃を構える。

白鷺は、パーカーの下に着ていたシャツをナイフで切り。その自己主張の激しい二つの膨らみを露にする。

すると、傭兵は一瞬それに目を奪われてしまう。

白鷺は、ナイフを投げ傭兵の眉間へと命中させる。


「ふぅ、やっぱり女の武器もしっかり使わないとね」

「先輩……。さすがっすね」

「何、これのこと?」

白鷺は、何の躊躇もなくその膨らみを両手でゆさゆさと揺らす。

「違いますよ……。あっさりと人を殺せるその度胸のことですよ」

「なによ、やっぱり胸のことじゃない。後輩くんは、えっちね」

わざとらしく白鷺は、胸を両手で隠し恥じらっているように振る舞う。

「っと。今、だしてあげるからね」

傭兵の体をまさぐり、鍵を見つけると鍵を開ける。

そして、少年の鎖をナイフで切り裂き、拘束は解かれ、力なく少年は倒れそれを白鷺は支える。

「私としては、そんなにボコボコにされる方が嫌だけどな~。もしかして、後輩くんはM?」

「今、俺。嬉しそうに見えます?」

「ううん、全然」

白鷺は、肩に少年の腕を乗せ、支えながら歩き始める。

「俺には、人を殺す度胸はありません。人を傷つけるぐらいなら人から傷つけられた方がいい」

その真剣な物言いに、白鷺はふっと口元を緩ませる。

「私は、そういうの好きよ。でも、姐ちゃんは納得してくれないかもね」

ドドッと地面を踏み鳴らす音が、上から徐々に近づいてくる。

「白鷺琴梨と長谷河辰馬はせがわたつまだな」

「あらあら、団体さんが来ちゃって。仕方ない、ちょっと壁に寄りかかってね」

白鷺は、長谷河を壁を背に座らせる。

「ちょっくら、相手してくるから」

「この人数に勝てるとでも思ってるのか!」

ニヤリと口元を歪ませて、白鷺は傭兵達に駆けていく。

後ろからその姿を見ていた長谷河は、首筋のタトゥーに目をやる。

長谷河の右肩にも同じようなタトゥーが、刻まれていた。そのタトゥーを長谷河は、優しく撫でる。

「ほら、片付けたから行きましょ」

言葉の通り、階段には傭兵達の亡骸が散らばっている。

差しのべられた手を長谷河は掴み立ち上がると先程のように階段を上がっていった。

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