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親友へのかくしごと

 日曜日になり、私はカナデと遊ぶために街に向かうバスへと乗り込んだ。私はバスに揺られながら昨日のカナデの不安そうな顔を思い出していた。


 本当にカナデと遊ぶのは久しぶりだな……。前はしょっちゅう遊んでたんだもん、不安にもなるよね……。


 私はカナデに申し訳ない気持ちになり、親友を不安にさせないようにこれから気をつけようと思った。


 バスを降り、待ち合わせしているショッピングモールに着いた。県で一番大きいこの建物は、日曜だけあって人が多い。

 少し待ち合わせ時間に遅れ気味になっているので、急いで私はカナデと約束していた広場へ向かう。広場につくと、遠目からカナデの姿が確認できた。私がカナデのもとへ駆け寄ろうとした時、



「離してよ! 私友達を待ってるんだってば!!」


「友達とかほっとけばいいじゃん。俺と遊ぼうよ~?」


 チャラそうなナンパ男が嫌がるカナデに詰めよっていた。男はカナデの腕をとり、自分の方へひきよせようとしている。


「ちょっと! 私の大事な友達に何してんの!!」


 私は急いで二人のもとに駆け寄った。カナデの腕を掴んでいた男の手を振り払い、カナデを私の後ろへ隠す。そして思いっきり男を睨みつけた。


「これ以上この子に何かするなら私が絶対許さないから!」


「…………チッ、なんだようぜー女だな。」


 男はしばらく私を睨みつけていたが、シラけたのか捨てゼリフを吐いてこの場から去って行った。


 男が視界から消えるのを確認して、私は大きく息を吐いた。


 こっ怖かった~……よかった、もっと何か言われるかと思った……。


「はぁ~……カナデ大丈夫だった?」


 私が振り向いてカナデの様子を伺うと、カナデがいきなり私に抱きついてきた。


「ちょっ! カナデどうしたの!?」


「~~~~怖かったよ~! あいつ私が何度無視しても話しかけてきて……!触ろうとするんだもん……!」


 カナデの体から震えが伝わってきた。よほど怖かったのだろう。私は両腕をカナデの背中にまわし、よしよしと撫でた。


「ごめん……私がもっと早く来ればよかったね」


「ううん……大丈夫……追い払ってくれてありがとう。あやねはいつも私を助けてくれるよね?」


「当り前でしょ、何度だって助けるよ」


 カナデは美人だ。こういうふうにナンパしてくる男は前から結構いた。そこから始まる恋もあると思うが、カナデはナンパしてくる男は苦手らしい。私はその度にそんな男達を追い払ってきた。

 落ち着いたのだろう、カナデはゆっくりと私から体を離した。


「へへっ……ありがとね。私もあやねが困ってたり、悩んだりしてたら助けるから! 隠し事はなしね?」


 そう言ってカナデは照れたように笑った。


「……うん。ありがとう」


 ……隠し事はなし、か。

 

 私とりこが付き合う時に決めた事がある。それは付き合っている事は誰にも喋らない事。

 私達の関係が誰にも祝福されないのはわかっていたから。人前でのスキンシップも、仲のいい女子高生同士がじゃれていると思われるレベルに抑えている。

 カナデになら話しても大丈夫かなと思った事はある。でも否定されたらと思うと、そんな勇気は出なかった。


「よ~し! じゃあ気分変えて買い物しまくりますか~ほら行くよ!」


 カナデはそう言って私の手を握り、歩き出そうとしている。私は苦笑しながらカナデの手を握りかえしたその時


 どこからか視線を感じた。


「ん? あやねどうしたの?」


「……いや、なんでもないよ。ごめん行こっか?」


 気のせいだと思い、私はカナデと手を繋いだまま広場をあとにした。





 モールの二階には広場全体を見渡せるカフェがある。そこの窓際の席に一人の女の子が座っていた。


 注文した紅茶のカップを指先が白くなるほど握りしめている。


 くやしそうな、それでいて深く傷ついたような表情をしていた。





 女の子……春川りこは、あやねとカナデが去って行った方向をいつまでも見続けていた。





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