彼女に贈ったプレゼント
私とりこは今アクセサリー雑貨の店にいる。あの日から私達は色々な場所に行った。遊園地、水族館、映画館など、数え切れないほどデートを重ねている。最初のデートの時はお互いすごく緊張していたが、今ではもう慣れたものだ。
「あやねちゃんこれ可愛いよね?」
りこはそういって、天然石のブレスレットを私に指差した。ムーンストーンの柔らかい感じが素敵で、りこにすごく似合ってた。
「どうしようかな……三千円か……。ちょっと高いかも」
「……それ私りこにプレゼントしようか?」
「えっ!? そんないいよ悪いし!」
りこは慌てて首を振った。しかし目線はちらちらとブレスレットを見ている。私は苦笑しながらブレスレットを手に取り、レジに並んだ。
「もともと何かプレゼントしたいって思ってたし、その分バイト頑張ったからね。……贈り物させてよ」
そう言ってブレスレットを店員さんに渡し、会計を済ませた。
「ほら、腕出して?」
りこは顔を赤らめながら腕を差し出す。私はりこの手をとり、ブレスレットを腕に着けた。りこはそのブレスレットを見ながら嬉しそうに微笑んでいる。世の男性達が好きな女の子に、アクセサリーを贈る気持ちがわかった気がした。
「ありがとうあやねちゃん……。大事にするね。お返しは何がいい? アクセサリーがいいかな?」
「りこの手作りがいいな~。りこ手先器用だから作れるよね?」
りこは本当に手先が器用だ。お菓子作りはもちろんの事、りこが今日身につけているビーズの指輪や髪飾りも自分で作ったらしい。プロが作ったみたいな出来栄えだった。
「そんなのでいいの? 少し時間かかるかもしれないけど……でも嬉しいな。あやねちゃんが身につけるものだから張り切ってつくるよ」
時々りこはこんなふうにすごく可愛い事を言うから困る。私は照れくさくなって、少し強引にりこの手をとり、店をあとにした。
「な~~んか最近あやね付き合い悪いよね~?」
ある日の放課後、りこは委員会で遅くなるみたいで、私は次の日曜に りこと遊ぶデート場所を考えながら、自分の席で恋人の帰りを待っていた。すると教室に残っていたカナデが私の背中に体重を乗せ、あごを私の頭の上に置いて、ふてくされたように呟いた。
「え、そ、そうかな~気のせいじゃない?」
りことデートしてるので時間がないとはさすがに言えなかった。私が笑ってごまかそうとすると、カナデは私の前の席に移動し、ジト目で私を睨みつけた。
「気のせいじゃないっつーの! 最近私と遊んでないし。罰として次の日曜に私のショッピングに付き合ってよ」
次の日曜は予定があると、断ろうとした時。カナデは心配そうな顔をして言った。
「……私達ちょっと前までは、しょっちゅう遊びに行ってたじゃん? だからさ……心配になっちゃって。あやね、私の事嫌いになったりしてないよね?」
「っそんな事あるわけないじゃん!!」
私は音を立ててイスから立ち上がり、カナデの両肩に手を置いた。
「カナデを嫌うなんて私がするわけないでしょ? 私の一番の親友だもん……。わかった、次の日曜日遊びに行こう? 心配させて本当にごめん……」
カナデは私の言葉を聞いて、安心したように笑った。そして待ち合わせ場所と時間を決め、先に教室をあとにした。
りこに謝らないとな……。でも りこの事だからきっと許してくれるよね。
そう考えていたら、委員会活動を終えた りこが教室に入ってきた。
「あやねちゃん遅くなってごめんね、帰ろうか。そういえば次の日曜だけど……」
「ごめん!りこ……次の日曜日用事ができて、遊べなくなった!」
私は腰から上半身を曲げ、大きく礼をした。カナデと遊ぶからデートが出来なくなったとは、言えなかった。
「……………………そっか」
怒ったかな……?
私は恐る恐る顔を上げてりこの表情を伺おうとしたが、りこはいつもの優しげな表情で私を見てた。
「用事が出来たなら仕方ないね……また今度遊べるのを楽しみにしてるから」
「ごめん、本当にごめんね。この埋め合わせは必ずするから」
私はりこが許してくれた事に安堵しつつ、二人で帰る準備を整え教室をあとにした。