スキンシップをはかりましょう。
通ってる学校の駅で電車を降りる。駅から学校までは大通りを歩いて10分といったところだ。今までは、あ~くそ駅から学校まで遠いんだよ。ちょうどいいバスも通ってないしマジだるいわ~。と思いながら通っていた。でも今は隣にりこがいる。今度は、あ~くそ駅から学校まで近いんだよ。もうちょっと遠ければ、りこともっと一緒に歩けるのに…と思ってしまう。現金なものである。
りこと話をしながら学校までの道を歩いて行く。りこは聞き上手だと思う。私の話に相槌をうち、笑顔を見せ、時に驚いた顔をしてくれる。私がしばらくりこの目を見続けると恥ずかしそうに目を伏せてしまった。そこを可愛いと思いつつ、私の頭はある考えに支配されていた。
手っ……手を繋ぎたい……!!
あ~くそくそ手を繋ぎたい! ダメかな? 周りに人がいるからだめかな? でも女子高生同士で腕を組んだり手をつないでる人見た事あるし……。というか私友達に、お嬢さん……あやねの右手、空いてますよ? とか言って繋いだ事あるし。でもそんな事言って、りこがもしドン引きしたら耐えられないし……!あ~もうなんで他の友達に言える事が、りこに言えないのかな~。
こんな感じで私の頭は煩悩の塊状態である。悶々としていたらいきなり――
「ぐぶぇっ!?」
背中側の横腹を誰かに思いっきりパンチされた。私がせき込みながら後ろを向くと、そこには見慣れた顔があった。腰に届く長い髪。モデルみたいな体。なんでこいつ無駄に美人なんだろうと私は思った。
「おっはよ~! あやね、今朝は寒いね~。マジヤバイ」
「カナデ~っ!! ヤバイのはあんたのほうだっつの! 私を朝っぱらから殺す気かっ!」
彼女は水嶋カナデ。私と同じグループの一人で尚且つ幼馴染みでもある。小さい頃から一緒に遊び、趣味も性格も何もかも相性が良くて、よく一緒にバカな事をして遊んで叱られたものだ。私の家の近所に住んでいたが、中学の終わりに隣町に引っ越した。でも高校は相変わらず一緒なので寂しくはない。私がいちばん心を許す親友である。
「やだぁ~あんたの目を覚まさせてあげようとしたんじゃない。効いた? 私の目覚めの一発」
「目覚めすぎて三途の川が見えたわ! 永眠しちゃったらどうしてくれるっ!?」
カナデは私の反応を見てひとしきり笑った後、りこに笑顔を向けた。
「りこちゃんもおはよ~。どうしたの? 今日は遅いんだね~いつも早めに教室にいるのに」
「あ、うん……今日はちょっと寝坊しちゃって」
りこは恥ずかしそうに目を伏せている。りこは同じグループの友達でもなかなか軽快に会話ができない。最近改善されてきたと言っても、もともと性根が大人しく、人見知りなのだ。でも無視なんで絶対しないし、ちょっと難しい会話でも一生けん命答えてくれる。嫌な感じは全然しなかった。
「へ~りこちゃんみたいな人でも寝坊なんてするんだ~。意外かも? でもそういう時もあるよね。あははっ」
そう言っておかしそうに笑った。カナデは全然人見知りをしないタイプ。明るく頼りになってクラスのリーダー的存在だ。大好きな二人がこうやって会話をしてると私も楽しくなってくる。大事な二人が仲がいいと私も嬉しい。
しばらく三人で話しながら歩いていると、りこがハッとして私達を見た。
「ごめん二人とも……今日私委員会の当番だった。先行くね!」
「えっ? あっちょっと! りこ!」
そう言うと、りこは小走りで大通りを駆けて行った。もう姿は他の登校者達に隠れて見えない。カナデが残念そうに言った。
「あら、言ってくれれば私達も一緒に急いだのに……ね?」
「……ホントだよ。りこってば」
せっかく一緒に登校していたのに。まぁ明日から一緒に登校できるからいいけど……。
私はため息をついた。その時ふと、私はカナデに言った。
「ねぇカナデ、寒いから私と手繋がない?」
「甘えん坊だねぇ~あやねは……ほら、手ぇ貸して?」
カナデはしょうがないなぁ~といった感じで私の指と自分の指を絡めてくる。
あったかいな……。友達でもあったかいんだもん。りこの指と絡めたらどんな気分になるんだろう。
「……あやねの手熱いね。熱でもあるんじゃないの?」
「っ!気のせい気のせい! さぁ私達も急ぐよ~っ!」
「あっコラばかっ! 急に走るな~~~っ!!」
私はカナデの手をひっぱりながら、人ごみのなかを走っていった。
正直すぎるだろう、私の体! こんな感じだと、りこと手を繋いだら火傷させちゃうよ! そういえば昨日は、りこを抱きしめたりもしたんだった!
その事を思い出し、さらに私は顔を赤く火照らしながら、カナデといっしょに学校までの道のりを急いだ。