電車のホームでドキドキしてます。
ジリリリリリリリッ!ジリリリ ダン!
目覚まし時計を止め、大きく伸びをする。体はまだ寝ぼけているが、頭はすっきり起きていた。なんてたって今日は、りこと私が恋人同士になった最初の日だ。それに私を好きになった理由を教えてもらうのだから。私は手早く制服を着て、リビングに降りていった。
「ふふ……うふふふふ……」
「何朝っぱらから気持ち悪い顔してんだよ」
私が朝ご飯のトーストを齧りながら、昨日の出来事を思い返していると、目の前に座っている兄からひどいことを言われた。兄は既にご飯を食べ終えたようで、食後のコーヒーを飲んでいる。
「何さ~せっかく人がいい気分でご飯食べてたのに。お兄ちゃんのせいで台無しだよ」
「ほぉ~そんな事言うんだな。今日は仕事は9時からだから、ついでに駅まで乗せてってやろうかなと思ったが……」
「すみません私の素敵なお兄様。どうか乗せてって下さい」
私はテーブルの上に手をついて上半身土下座をした。私は通学にバスと電車を使っているが、バスはいつもすし詰め状態だ。あの通勤ラッシュを回避するためならば、土下座でも何でもしてやりましょう。
兄はそんな私を見て苦笑すると、立ちあがって私の頭を小突いた。
「ほら、バカな事やってないでそろそろ行くぞ。準備しろ」
ふぁ~い。と私は残りのトーストを口に入れ、学校に行く準備をし、兄の車に乗り込んだ。
駅の改札口を抜け、学校へ行く電車のホームに着くと私の一番会いたい人がそこにいた。
「りこ!? どうしてこの時間にいるの? いつもはもっと早い電車で学校に行ってるよね?」
私は急いで、りこに駆け寄った。りこは結構遠い所から電車を乗り継いで学校に通っているらしい。始業時間ぎりぎりの電車がないため、いつも早く学校に着いてしまうと教えてもらった事がある。
この寒空のなか待ってる時間が長かったのだろう。りこの鼻が赤くなっている。りこは、はにかみながら言った。
「あやねちゃんはいつもこの時間帯の電車に乗るでしょう?……いっしょに登校したくて待ってたの」
可愛すぎるだろーーー!! 何回私をノックアウトさせれば気がすむねんっ!
そこで私はハッとし、ポケットに入れてたカイロを彼女の頬にくっつけた。
「りこの気持ちは嬉しいけどこのままじゃ りこが風邪ひいちゃうよ。私が1本早い電車に変えるから」
「えっそんなの悪いよ! 朝の時間は貴重なのに……」
「ううん、私がそうしたいの。それに朝だって、りこが待ってると思うとすっきり起きられるし、実際今日起きれたし……ね?」
りこは少し迷った様子だったが、頬を赤らめてこくんと頷いた。今まで朝は苦手だったけど大好きな時間になりそうだ。
電車が来るまでまだもう少し時間がある。するとりこはもじもじしながら鞄から袋と手紙を取り出した。
「あの……これ私が作ったマカロンなんだけど、よかったら食べてね。あとこっちはその……昨日言ってた、私があやねちゃんを好きになった理由が書いてあるので……」
袋と手紙を受け取る。透明な袋の中には色とりどりなマカロン。薄いピンクの手紙には、りこの繊細な文字で『あやねちゃんへ』と書いてあった。
どうしよう……すごく嬉しくて、顔がにやける。なんだか顔が熱い……顔真っ赤になってるかも。
私はにやける顔を抑えつつ、手紙の封をあけようとしたら、慌ててりこに家に帰ってから見て! と止められた。確かにこの場でこの手紙を読んだら、更にだらしない顔になるのは間違いないだろう。折り目がつかないように丁寧に手紙とお菓子を鞄の中になおした。
その時ちょうどいいタイミングで、ホームに電車が入ってきて、私達は二人いっしょに電車に乗り込んだ。