部屋でもんもんとしちゃいます。
私は今、自分の部屋のベッドで抱き枕を抱きしめ、ゴロゴロしながら今日の出来事を思い返していた。
「えっ! 本当に……? 本当に私と付き合ってくれるの? 藤川さん」
私の返事が予想外だったのだろう。告白してきたりこは、目を見開きながら言った。
「うっうん……というか、こんな私でよければですが……」
私がそう言うと、泣きそうだったりこの目から涙があふれた。私がギョッとして慌てると、恥ずかしそうに目をこすり、私の腕からゆっくり体を離した。
「ごめんね、すごく嬉しくて泣いちゃった……断られると思っていたから」
そうして微笑みながら私の手を両手で包み、ぎゅっと握りしめた。相変わらず顔は真っ赤だ。
「……嬉しいです。本当にありがとうね……ふふっなんか照れちゃうね。あ、あとね、お願いがあるんだけどいい?」
「な、何かな?」
「あのね、藤川さんの事……名前で呼んでいい?」
「もちろんいいに決まってるでしょ! ってゆーか、りこが転校してきた時私最初に名前呼び捨てでいいっていったのに、今まで名字呼びだし……!」
「あっあれは! 最初緊張してて言えなかったの! でも仲良くなって名前で呼ぼうとしたけど、なんか今更な気がして言えなくて……その事ずっと後悔してて……」
りこはそう言いながら段々顔が沈んでいった。当時の事を思いだしているのだろう。でもすぐに顔を上げて私の手を握りなおし、そして大きく深呼吸した。
「で、でもこれからは名前で呼べるからいいもんね……これからよろしくお願いします……あやねちゃん」
どくんっ。
ぎゃあああああっす!! 何この可愛い生き物! 死ぬの!? 私死んじゃうの?
私が心の中で咆哮をあげていると、黙っている私に不安になったのだろう。りこは首を傾げながら私を不安そうに見ている。首を傾げると犯罪級に可愛いからやめてほしい。
「こ、こちらこそよろしくお願いしますらろっ!!!」
……思いっきり噛んだ。なんで私はこういう肝心な時こうなんだ。りこを安心させてやりたいのに。
今度は私のほうが落ち込みそうになった時、笑いを噛み殺そうとして失敗しているりこの声が聞こえた。
「何笑ってんのさ~……」
「ご、ごめっ……! でも、ふふふっあやねちゃんが可愛くて……! ふふふっ」
りこの笑い声を聞いていたら、なんだか私もおかしくなって、二人で声を上げて笑った。
ひとしきり笑って落ち着いた後、私とりこは駅まで一緒に帰った。正直何を話したのかはよく覚えてしない。でも、りこは私の話を微笑みながら聞いてくれていた。
「……というか、これ夢じゃないよね?」
私は抱えていた抱き枕にぎゅっと力をいれた。家に帰り着いて、ご飯やお風呂を済ませて、こうやってベッドに寝転がっているけど今日の出来事が頭を離れない。
そもそもなんで、りこは私を好きになったんだろう。私だったらこんなおっさんみたいな発言ばっかの女子なんて願い下げだ。
「っあ~もう! なんで私肝心なこと聞いてないかな~っ!?」
私はベッドの端から端へゴロゴロと移動し、抱き枕をそいやと巴投げした。そして一番肝心な事を口にした。
「……私って女の子が好きなのかな?」
女の子にセクハラはいっぱいした事がある。でも付き合いたいとか思った事はなかった。男子学生を見れば普通にかっこいいと思うし、男性芸能人を見てこの人と付き合ってみたいな~って思う。りこに対してはどうなんだろう。私は友達としての好きを、恋愛としての好きと勘違いしていないだろうか。
考えてはいけない、いや考えないといけない事だ。私の頭の中がぐちゃぐちゃになりそうになった時、
デーンデッデッデッデデデデンッ♪
ケータイのメール着信音が部屋に鳴り響いた。私は足がつった時みたいにビクッとした。
「うぅっ!? ~~っもう誰よこんな時に!」
ケータイのディスプレイを見ると春川りこと表示していた。
私は急いでメールの内容を確認した。
『あやねちゃんもう寝ちゃったかな? 今日は本当にありがとう(*^。^*)告白オーケーしてくれた時本当に嬉しかったです。実はまだドキドキしています。明日からよろしくね、大好きだよ。』
さっきまでの悩みがすーっと溶けていくのを感じた。心の中に暖かいものが広がっていく。
りこに対しての気持ちがどんな感情なのか考えるのはもうやめよう。今大事なのは私がりこの事を考えると暖かい気持ちになることだ。りこを大事にしたい。泣かせたくない。
急いで返信のメールを打った。
『こっちこそありがとう。私もまだドキドキしてるよ。そういえば聞き忘れてたんだけど、私のどこを好きになったの? 明日教えてもらうから(笑)楽しみにしてま~す(*´д`)』
送信ボタンを押して、りこがこのメールを見て慌てているところを想像する。なんだか可笑しくなって、にやにやしながら私は部屋の電気を消して、ベッドにもぐりこんだ。