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あなたにもらったプレゼント

※りこ視点の話です。

「うん……ありがとね、りこ。私でよければ……お願いします」


 夢かと思った。まさか私の告白を受けてくれるなんて、思いもよらなかった。


 私があやねちゃんに告白してから数週間が過ぎた。最初の数日は緊張して、何度もこれは私の妄想なんじゃないかと疑った。でもその度にあやねちゃんは笑いながら、これが現実じゃないなら私も困ると言って、私の手をギュっと握ってくれた。


 二人でいっぱいデートに行った。あやねちゃんとならどんな場所に行っても楽しくて、こんなに楽しい事は私は経験した事がなかった。


 好きな人といると、どんな事をしても楽しいんだな……。


 あやねちゃんが笑ってくれるだけで、私も嬉しくなってくる。あやねちゃんが好き。その気持ちは時間がたつにつれて、深く大きくなっていった。




 ある日私とあやねちゃんがショッピングに行くと、天然石のアクセサリーショップに目を惹かれた。店内に入ると色とりどりのきれいで可愛いアクセサリーが沢山あって、私は思わず顔を輝かせた。もともと私はこのようなアクセサリーが大好きで、自分で手作りした事もある。商品を見ながら店内を歩いていると、特に気になる物を発見した。


 うわ~これすっごく可愛い……欲しいけど値段がなぁ……。


 それはムーンストーンのブレスレットで、淡い石の色がとても素敵だった。すぐに買いたかったが、これを買ってしまうとお財布の中がちょっと厳しくなってしまう。私が迷っていると、


「……それ私りこにプレゼントしようか?」


 あやねちゃんが私にそう言ってくれた。そんなの悪いと私が断ると、あやねちゃんは苦笑しながらブレスレットを手にとり、レジに並び会計を済ませた。


「もともと何かプレゼントしたいって思ってたし、その分バイト頑張ったからね。……贈り物させてよ。ほら手を出して?」


 あやねちゃんは少し恥ずかしそうに笑って、私が手をだすのを待っている。嬉しくて、少し気恥ずかしくて、私がおずおずと手を差し出すと、あやねちゃんはブレスレットを私の手首につけてくれた。


 このブレスレットすごく可愛いと思ってたけど、なんかさらに素敵になった気がする……理由はわかってるけど……。 


 好きな人からのプレゼントは、きっと何でも素晴らしく思える魔法がかかっているのだろう。あやねちゃんの様子を伺うと、私を見ながら照れくさそうに笑っている。

 そんなあやねちゃんを見て、私も何かプレゼントしたくなった。あやねちゃんに何がいいか尋ねると、私の手作りのアクセサリーが欲しいと言ってくれた。

 私の作ったものをあやねちゃんが身につける、そう考えると顔が赤く火照ってくる。時間は少しかかるかもしれないが、私が作る最高の物をあやねちゃんに贈ると約束した。




 


 あやねちゃんと付き合うようになって、少し変わった事がある。それは同じグループの水嶋さんの事だ。初めて水嶋さんと話した時は明るく社交的な人で、こんな私にも優しくしてくれた。しかし最近私があやねちゃんと話をしていると、水嶋さんから視線を感じるのだ。気のせいかと思ったが、それが何度も続いた。そしてその視線は、私が前の学校でいじめられていた時に感じた視線によく似ていた。

 その視線を受けると昔を思い出し、具合が悪くなりそうになるが、これは罰だと思った。もともとあやねちゃんと水嶋さんは親友同士でとても仲がいい。そこに私が割り込んできたのだ。気を悪くして当然だ。けれどいくら恨まれても、私はあやねちゃんと離れたくはなかった。



「りこちゃ~ん、委員会おつかれさま。ちょっといいかな?」


 ある日の放課後、委員会が終わり、あやねちゃんの待つ教室に帰ろうと廊下を歩いていたら、水嶋さんに呼び止められた。


「あ、水嶋さん……うん今委員会終わったところ。どうしたの?」


 水嶋さんから声をかけられるなんて久しぶりだった。何を言われるのか内心ドキドキしながら答えた。


「あのね、今度の日曜あやねと遊ぶんだけど、りこちゃんもどうかな? 三人でいっしょに遊ぼうよ。あやねもりこちゃんといっしょがいいって言ってるし」


「え……あ、うん、大丈夫だよ。でも私もいっしょでいいのかな?」


 本当ならその日は私とあやねちゃんがデートする日だ。けれど最近あやねちゃんは私と遊んでばかりだったから、水嶋さんの誘いに断れなかったのだろう。それにしても私も一緒に誘ってくれるとは意外だった。


「う~ん、本当の事を言うと、最近あやねとりこちゃんがすごい仲良くて、ヤキモチやいた事もあるよ。でもあやねの大事な人は私の大事な人でもあるからね。りこちゃんとも仲良くしたいって思ってるよ」


「……! あ、ありがとう水嶋さん。私も水嶋さんと仲良くしたい……!」


 その言うと、水嶋さんは照れたように笑った。


「えへへ、ありがと。じゃあ日曜日ショッピングモール広場の二階のカフェで待ち合わせね。窓際の席で待っててよ。じゃあ楽しみにしてるから」


 水嶋さんは手を振りながら、そのまま昇降口のほうに歩き去って行った。水嶋さんを見送って、私は大きく息を吐いた。



 よかった、私水嶋さんに嫌われていなくて…待ち合わせ場所にはあやねちゃんといっしょに行こうかな


 そう考えながらあやねちゃんの待っている教室まで歩き、扉を開けた。あやねちゃんが私に気付き、私の傍にやってくる。


「あやねちゃん遅くなってごめんね、帰ろうか。そういえば次の日曜だけど……」


 いっしょに待ち合わせ場所に行かない? そう言おうとした時、あやねちゃんが大きく頭を下げた。


「ごめん! りこ……次の日曜日用事ができて、遊べなくなった!」


 え…………?


 どういう事だろう。3人で遊ぶ約束をしてまだ少ししか経っていないはずだ。急な予定でも入ったのだろうか。

 私はあやねちゃんに理由を尋ねようとしたが、頭を下げ続けるあやねちゃんにそれ以上何も言えなかった。


「用事が出来たなら仕方ないね……また今度遊べるのを楽しみにしてるから」

 

 私がそう言うと、あやねちゃんはやっと顔を上げた。


「ごめん、本当にごめんね。この埋め合わせは必ずするから」


 水嶋さんと二人で遊ぶのは初めてなので緊張するが、水嶋さんは私と仲良くしたいと言ってくれた。きっと大丈夫だろう。



 申し訳なさそうに謝るあやねちゃんを慰めた後、私達は帰る準備を整え、教室をあとにした。



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