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私と彼女の体温

 私はベッドのシーツを握りしめながら、りこが眠っている布団を見続けていた。心臓が早鐘のように鳴り響いている。体は石のように硬くなっているみたいだ。一つの考えが私の頭の中を支配していた。


 りこに、さわりたい 


 好きな人が隣にいるのに、平然と眠れる人がいるのだろうか?そう思う反面、早く眠らないとりこが気付いてしまう。こんな気持ちの悪い感情を抱いているのを知られてしまったら生きていけない。

 私は寝がえりをうって、りこに背中を向けた。なんとか眠ろうと羊を数え始めた時、


「……あやねちゃん、まだ起きてる?」


 りこの視線を背中に感じた。


 私はぶわっと体から汗をかいたような気がした。先程までりこをずっと見ていた事に気付かれてしまったのだろうか?

 返事をするかどうか迷ったが、りこは私が起きているのに気付いてしまっているだろう。無視する事はできなかった。おそるおそる返事をした。


「……起きてるよ。…どうかした?」


「ごめんね……ちょっと寒くて眠れなくて」


「えっやだ早く言ってよ! ちょっと待って暖房つけなおすから……」


 私は急いで隣に置いてあったリモコンに手をのばそうとすると


「そうじゃないの……! そうじゃなくて…!」


 りこは布団から起き上がり、私の腕をつかんだ。暗くて表情はよくわからないが、手からは震えが伝わってくる。


「寒いから……あやねちゃんがあっためてくれる?」





 りこが私のベッドに入ってくる。もう私の心臓は早鐘どころのレベルじゃない。冗談ではなく死んでしまいそうだ。りこは私の体に自分の体を押し付けてきて、そのまま顔を私の胸にうずめる。そしてクスリと笑った。


「ふふっ……あやねちゃん心臓の音すごいね……すごくドキドキしてる」


「……っあっ当り前でしょう!? な、なんかりこ冷静じゃない?なんで……っ」


 私が情けない声でそう言うと、りこは私の手をそのまま自分の左胸に押し当てた。暖かく、やわらかい感触の向こうには、私と同じくらい早くリズムを打ち続けていた。


「私の心臓もすごいでしょ……? 自分でも今している事にびっくりしてるもん……。お風呂に入っている時もあやねちゃんがさっきまでこのお湯につかってたんだと思うと恥ずかしくてドキドキしちゃって……」

 

 何かがブチっと切れたような気がした。私はりこの腕をとり、私とりこの体を反転させる。りこが小さく悲鳴をあげた。今度は私がりこを押し倒している状態だ。

 

 りこと視線がぶつかる。私達のまわりだけ時間が止まってしまったみたいだ。息が上手くできない。


 りこが瞳を閉じた。

 

 私はそんなりこを見ながら、ゆっくりと自分の唇をりこの唇と合わせた……。



 その後、何度もついばむように、私とりこは唇を合わせ続ける。

 そして私が顔をあげた時、気付けば私の目からは涙がでていた。りこの目からも涙がでている。頬を赤く染め上げ、荒い息を吐き、涙を流しながら私を見上げるりこを、誰よりも綺麗だと思った。


「はぁ……はぁ……っなんで、泣いてるの? ……嫌だった?」


「はぁ……んっ! 違うっ違うっ!幸せで……幸せすぎて、でてきちゃうの……!」


 ああ、そうか。これがうれし泣きというやつか。私もうれし泣きで泣けるんだ……。


 幸せだ。私にはもったいないくらい幸せだ。すごく、すごく。


「あやねちゃんは私だけだよね? あやねちゃんは私しか好きじゃないよね!?」


 りこはそう言って私の体に両腕を絡めた。まるで懇願するように、私を見上げている。そんなりこを見て、様々な感情が私を支配した。


 愛しい。苦しい。切ない。嬉しい。ありがとう。ごめんね。恋をし続ける。永遠に。 


「当り前でしょっ……! りこしかこんな事しない! 絶対にっ!」


 私はりこを深く強く抱きしめ、再び唇をふさぐ。りこは私の頭を撫でている。このまま二人で溶けてしまいたいと思った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




 ふと、夜中に目が覚めた。


 暖房がきれた部屋は冷えて、とても寒かった。でも私は平気だった。だって私の腕の中にはりこがいたから。

 りこは安心したように寝息をたてている。そんなりこを見て、私はりこの額にそっとキスをし、再び眠りの世界に戻った。


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