彼女が私の部屋に泊まっています
その後、私とりこはリビングで夕食の宅配ピザを食べ、テレビゲームで遊んだ。兄も参戦し、3人で落ちゲーやら格ゲーやら音ゲーやらプレイしたが意外にもりこは強かった。兄は自分が自信のあるパズルゲーで勝負を申し込んだが、こてんぱんにやられて落ち込んでいた。
意外なりこの一面を知って私は少し驚いたが、それ以上にまた新しいりこを発見できて嬉しかった。
風呂が沸き私はりこに一番風呂を進めたが、あやねちゃんが先に入ってと言われたので、先に私が入る事になった。私は湯に浸かりながら、少し残念な気持ちになっていた。
「はぁ~……りこが入ったお風呂に浸かりたかったな……。それか一緒に入るとか……。」
そう言って二人が裸で一緒にバスタブの中に入っているのを想像して、私はキャーっと叫びながら湯船をばんばん叩いた。
私が風呂からあがりリビングのドアを開けると、りこと兄はソファーで楽しそうに話してるみたいだった。私に気付いたりこは、私の顔色を見て心配そうに駆けより手を私の頬にあてた。
「あやねちゃん顔赤いよ、大丈夫? のぼせちゃった?」
「……うん、大丈夫。ありがと」
風呂場であなたの妄想してました。とは言える訳がない。
「ほら、りこも入っておいでよ。今ちょうどいいし、私は部屋で待ってるから」
「うん、じゃあそうさせてもらうね。お兄さんお先に失礼します」
りこは兄にお辞儀をし、小走りでリビングを出て行った。
「……あの子可愛くて本当いい子だなぁ~」
「やらん! ロリコン! 変態!」
兄がにやけながら呟いたので、私は兄の隣に座って冗談じゃないとばかりに兄の頭をチョップした。
「いだっ! そういう意味じゃねーっつーの! 俺彼女いるし、あんな妹が欲しかったってそういう意味!!」
「それはそれでムカつくからダメ!」
今度は兄のお腹を狙ってくすぐる。相変わらずそこを触られるのが苦手のようで、ヒーヒー笑いながら悶えている。私がくすぐるのをやめると荒い息を吐きながら私を睨みつけていたが、ふと真剣な目をして私に言った。
「……あの子、お前のおかげで学校に通えてるって言ってたよ。恩人だって。あんないい子泣かせないようにな」
「……もちろんだよ」
私も真剣な表情で答えると、兄はそれでこそ俺の妹だと言って、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。
私は自分の部屋で緊張しながら、りこを待っていた。ノックの音が聞こえ、りこが扉を開けて入ってきた。
「お風呂頂きました……。気持ちよかったよ。入浴剤すごくいい香りがしてた」
「う、うん。とっておきのを使ったからね……!」
りこは湯上りのせいか顔が火照っている。淡いピンクのワンピースタイプのパジャマが可愛くて、りこにすごくよく似合っていた。
それに比べて私のパジャマはどーよ……。
上はただのロングTシャツに下のズボンは中学の時のジャージだ。こういうところに女子力ってでるよな……と落ち込みそうになった。
「あやねちゃんのお兄さん面白くて、優しいね。いいな~」
「え~口うるさいだけだよ。……あやねはあんな感じの人がいいの?」
りこの兄を褒める言葉に思わずヤキモチをやいてしまった。りこはクスリと笑って私の頬に両手を添える。
「もう……確かにお兄さんは素敵だけど、あやねちゃんのほうがもっと素敵なんだからね?」
「……はい」
私は微笑んでいるりこを見て、この子には敵わないな~と心の中でため息をついた。
しばらく楽しく二人でおしゃべりをしていたが、りこが眠たげに目をこすり始めた。時計を見ると、もう時刻は午前になっていた。
「ほら、布団しくからもう寝よう?」
「うん……そうしようか……おやすみなさい」
私は手早く布団を敷き、そこにりこを寝かせる。おやすみとりこに挨拶をして、電気を消して自分のベッドにもぐりこんだ。
コチコチコチといつもは気にならない時計の音が耳に残る。
私に背を向けて寝ているりこに視線をやる。
眠れるわけがなかった。