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神殿の地下へ

舞とナディアは、先頭に立って狭い階段を下りて行った。すぐ後ろからシュレーが、そして圭悟、キール、リーク、メグ、玲樹と並んでついて歩いていた。舞は、灯りが無くても足元が難なく見えるのに驚いたが、それは舞とナディアだけのようで、シュレー達には真っ暗で見えないようだった。なので、舞とメグが杖の先を光らせて、それで明かりを採って歩いていた。

その狭い階段を抜けると、そこには広い空間が広がっていた。そこから、様々な場所へと入り口がある。ミクシアの神殿や、バーク遺跡と同じだった。

舞が回りを見回すと、まるであの、現実社会での非常口のサインのように、ぼうっと光る表示が見えた。「地下牢へ」「女神の間へ最短」「裏口へ」など、よく見える。しかし、崩れた場所がなんと呼ばれた場所なのか分からなかったので、舞は崩れた方向の入り口を見た。そっちは三つあって、「危険地域」「女神の間へ巫女の部屋を抜けて」「宝物庫」と、あった。

玲樹が、崩れた方向の入り口の一つに歩み寄った。

「こっち側が崩れただろう。どれかから降りたら通じてるんじゃないのか。」

「ダメ!」

舞とナディアが同時に叫んだ。玲樹は驚いてその場に固まった。

「…なんだよ!驚くだろうが!」

舞は首を振った。

「玲樹が手を掛けようとした所に、危険地域って書いてるわ!ちゃんと見て!」

玲樹はキョロキョロと見回した。

「どこに?何もねぇぞ。」

舞はハッとした…そうか、これが巫女の力なんだ。ナディアが言った。

「心理的に、降りたくなる道に罠がありまする。その隣は、宝物庫に降りる入り口のよう。そちらから下へ参りましょう。」

舞も、頷いた。皆は身震いした…何も見えないのは、この暗い神殿の中かなり怖いものがある。

舞とナディアは頷き合って、先に立ってその入り口へと入って行く。皆は慌てて後に続いた…恐らくはぐれたら、出て来る事も出来ないだろう。

しかし、舞とナディアはサクサクと先へと歩いて降りて行く。皆はそれに倣って、はぐれないように必死に歩いて付いて行った。


舞は、少しのサインでも見逃さないようにと注意しながら足元やら頭上やらをきょろきょろ見ながらその階段を降りていた。しばらく行くと、広くなった部屋のような所へ出た。しかし、何もない。机も椅子も、とにかく何もない場所だった。

「蟻の巣みたいだな。」圭悟が言った。「こうして着いた部屋から、またいろいろ入口が分かれているんだ。」

確かにそうだった。回りには、またいろいろな入口が分かれていて、舞にはその上のサインが見えた。ここの入口は、ほとんどが危険地域と出ていた。唯一それ以外のサインなのが、「女神の間へ」と書かれたものと、「宝物庫へ」と書かれたものだけだった。

「こっちよ。」舞が、宝物庫の方を指した。「これを降りましょう。」

ナディアも頷いた。

「ええ…あ、気を付けて!」ナディアは、シュレーに叫んだ。「そこ、どす黒く変な光が出ておりまする。」

舞も、床を見た。そこには、敷石一枚分の大きさで、変な光りが漏れていた。やはりシュレーには見えないようで、足を止めたまま言った。

「どれだ?そこと言われてもわからん。」

「そこよ。」舞が、光る杖で指した。「これ。これを踏んだらいけないのだと思うわ。」

皆が、入り口に向けてそれを必要以上に大きく迂回して行った。ナディアがため息を付いた。

「これから、きっとこういうのが増えて来ますわ。壁も、決して触れないで。床も、我らが踏んだ場所だけを踏んでついて参って。」

皆は、さらに緊張した。そうして次の入口へと入って行った。

そこは、今までとは様相が違った。入っていきなり広い階段で、とても広い部屋へと降りて行く形になっていた。なんだか生臭い臭いがする。しかし玲樹は、ホッとしたように言った。

「ああ、よかった。これなら壁に手を突くこともないし。」

しかし、舞が緊張した顔をした。

「でも、床がヤバいわよ。」と、杖の光を大きくした。「どす黒いのと、緑っぽく光ってるのと二つ見えるの。」

玲樹はピタと表情を凍らせた。

「なんだって?どっちを踏めばいいんだよ。」

舞は、目を凝らした。

「この床、模様が付いてるわよね?花の模様と、丸い模様。丸い方を踏んで行けば、大丈夫だわ。花の床は、絶対に踏まないで。全部変な光が漏れてるから。」

ナディアも、頷いた。

「ええ。花は駄目よ。さ、行くわよ。」

二人は、慎重に丸い模様を踏みしめながら大きな階段を下りて行く。皆、足元ばかりを見て、前を見ていなかったが、誰も花は踏まなかったようだ。しかし、下まで降り切った所で、ナディアが言った。

「…あれを。」

床からやっと目を離した皆が、その降りて来た道の回りと、前を見た。そこには、点々とメールキンが倒れていた。通常サイズのメールキンは、人と同じぐらいの大きさだ。皆が皆、何かに貫かれた形で絶命していた。

「ここへ迷い込んだ奴らか。」シュレーが、回りを見ながら言った。「この臭いは、こいつらのせいだったんだな。」

玲樹が、口を押さえている。とにかくこういうのが苦手なのだ。キールが、急かすように言った。

「こんなものはどうでも良い。早よう兄者の所へ!」

圭悟が、キールの肩に手を置いた。

「わかってる。かなり降りたから、もう少しだ。」

キールは、圭悟を見た。

「そう、かなり降りた。この高さを飛び降りたのだぞ?そろそろではないのか!」

ナディアが、言った。

「我とて夫が心配なのですわ。でも、皆の命もあるのです。ここで慌ててしまっては、夫を助けることも出来ませぬから。用心するに越したことはないのです。」

キールは、黙った。そして、進み出す舞とナディアについて、皆はまだ移動し始めた。

その部屋を抜けると、次の部屋の天井の半分は崩れ落ちていた。あちら側の壁が、崩れてなくなっていて、向こう側の部屋まで見通せる。そこは、落ちて来た瓦礫で足の踏み場もなく、あちらこちらに罠が発動した後が残っていた…瓦礫に反応して、最後の罠が放たれた後のようで、あちらこちらが、不自然に穴が開いた状態になっている。シュレーが言った。

「この上が崩れたんだな。罠の心配はないだろう。あっちだ!」

シュレーが、先へと足を踏み出す。舞が、言った。

「光源を打ち上げるわ。サラ様に教わったものがあるの。」舞が手を上げて、上に向かって光の玉を打ち上げた。すると、その場所をまるで小さな太陽のように、その光は照らし出す。

そこは、大きくえぐられたようになっていた。落下地点は、向こうの部屋の方のようだった。

「よし!行くぞ!」

シュレーが駆け出す。皆が、それについて走り出した。

瓦礫を上ってあちらの部屋を覗くと、そこにはあの大きなメールキンが倒れていた。もはや絶命していることは、ピクリとも動かないことでわかった。二番目の背びれが無くなっている…それが、生き残ったアークやダンキス、それにマーキスが行なったものなのか、それとも落ちた衝撃で無くなったものなのかは分からなかった。

「アーク!」シュレーが叫んだ。「ダンキス!マーキス!」

「チュマー!」

舞が叫ぶ。しかし、返事はなかった。舞が打ち上げた光で昼間のように明るい中、皆は瓦礫の隙間を三人を探して覗いて回った。

「ここに落ちたんだ。」

圭悟が、立ち尽して上を見上げた。遥か上には、巨木が覆い被さっているのが、光の加減で見えた。そこには、大きな新しい血痕があった。

「怪我を…!」

ナディアが、その血痕を見て絶句する。圭悟は、背を撫でた。

「殿下、しかしここに居ないということは、少なくとも移動するだけの力があったということです。」圭悟は、回りを見回した。「三人ともに居ない。チュマは、浮けたはずだが、チュマも居ないということは、きっとここを脱出しようと移動したんだ。」

玲樹が、今来た道を見た。

「怪我をしてるなら、この瓦礫を上るのは困難だったろうな。そっち側へ行ったんじゃないのか。」

シュレーは、ハッとして腕輪を開いた。光のサインが、今自分が居る場所に数個、違う場所に、二個見える。

同じように腕輪を開いて見た圭悟が、シュレーと顔を見合わせた。二個…。生命表示が、二個。

舞が、悟って首を振った。

「私のこともあるわ!私、未だに腕輪が壊れていて皆に表示が出ないもの。大丈夫、皆無事よ!」

ナディアが、涙ぐみながら頷いた。

「行きましょう!あちらね?」

シュレーが、腕輪を見ながら言った。

「ああ、そっちだ。そこの通路を抜けたら、また部屋があるような感じだな。そこを抜けたんだろう…ここの地図がないから、あっちに居るとしか分からないんだ。」

舞は、そちらの入り口を見た。危険地域と書かれたサインと、女神の間と書かれたサインの二つがある。

「…どっちを行ったと思う?」

舞とナディアは顔を見合わせた。シュレーが「女神の間」の方を指して言った。

「…こっちか?」

舞が、驚いた顔をした。

「え、シュレー、見えるの?」

シュレーは首を振った。

「何となくな。ここまで通って来た道のパターンだと、こっちじゃないかと思ったんだ。だが、アークやダンキスはどっちへ行ったか。」

圭悟が、下を見た。

「こっちだよ。」と、女神の間の方の入り口の床を見た。「ここに、点々と血が落ちてる。」

シュレーは、血のことには触れないように言った。

「よし!とりあえずは道を間違えていないってことだ。行こう!」

そうして、一行は再び迷路のような神殿の奥深くへと進んで行った。

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