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グーラ達の再会

『ふーん』低い声が言った。『そうか、そう来たか。なら最初からこうしておれば良かろうが。主らの言うこと、オレには分かるが、主らには分からなんだしの。不自由極まりなかったのに。あの時とて、なぜにあの山の頂上へ降りれなかったか、説明出来たであろうが。』

他のグーラより、数段低い声でそう言ったのは、マーキスだった。その声に、横に居たグーラが言った。

『兄者、そんなことはもう良いではないか。キール達が帰って来たのだぞ?我ら、これで兄弟が揃った。』

そのグーラは、キムという名だった。グーラ達皆がわいわいと話す様は、さすがに魔物使いのシャーラでも茫然としていた。

マーキスは、ここに居る皆が卵の頃、弱って落ちていた子供をダンキスが拾って来たただ一体の野生のグーラなので、最初は全く慣れなかったらしい。しかし、毎夜共に休み、世話をした結果徐々に慣れて、他のグーラ達が赤ん坊の頃は、よく遊び相手をする良い兄としてシャーラを助けた。なので、皆が皆マーキスを兄者と呼ぶ。マーキスも、兄のつもりのようだった。

マーキスは、ため息を付いた。

『そうよの。ま、良いわ。よう帰ったの、キール。』

キールは、頭を下げたように見えた。

『兄者。やっと帰って来れ申した。何しろ、人は我らを斬ろうとするし、デカい変な同族は横行しておるし、方向は分からぬし、盗賊の元を脱走したもののどうしたものやらと思うておったのよ。やはり、オレはここが良い。誰も我らを斬ろうとはせぬゆえ。』

マーキスは頷いた。

『であろうの。奴らには我らの言葉が分からぬからな。困ったことよ…我らには分かるというのに。許してやろうぞ、劣った者にも寛大な気持ちを持たねばならぬ。』

圭悟は、それを聞いて苦笑した。確かに、グーラにはこっちの言葉が分かるのに、こっちからグーラの言葉は分からないものなあ…。

ダンキスが呆れたように言った。

「こらマーキス。劣った者とはなんぞ。オレがお前を連れて参ったから、命を取り留めたのだぞ?ほんに口の減らぬ。ま、こうしてお前の言葉を直に聞ける時が来るとは思わなんだが、嬉しいことよ。」

ダンキスが嬉しそうにマーキスの首の辺りを撫でる。マーキスは、横を向いた。

『…別に、助けてくれと言うた訳ではないわ。だが、礼を言うても良い。オレは礼儀知らずではないからの。』

まるで思春期の息子が父親に突っかかるような感じなのに、舞は微笑ましい気持ちになった。なんやかんや言って、ダンキスのことも好きなんじゃないかな、マーキスは。

そんなこんなで、シャーラ、シャーラと舞の術で話せるようになったグーラ達はシャーラを取り囲んで必死に話すので、シャーラはグーラの囲みから出られず、皆はそのままにしてグーラの小屋から出て来た。


日が暮れて、ダッカにその日は滞在することになった一行は、集めて来た女神の石を前に話し合った。

「ちょっと整理しよう。」圭悟が、言った。「…石は、全部で、八つ。二つは陛下に渡った石と、機械の石を飲んでいたメガ・グーラの腹から出て来て、四つは機械から回収した。一つは、バーク遺跡に残っている。残りは、一つ。恐らく、前回オレ達が運んだ、今は行方不明の機械に仕込まれていた石だ。それは、シュレーと舞がシオメルの雑貨屋で見かけたと。」

シュレーが、舞を見ながら言った。

「そうだ。間違いなく、あれは女神の石だったと思う。同じ形状で、同じ色。しかし、あの時は何も知らなかったからな。何に使う物かと、舞と話したから覚えていたんだ。」

舞は頷いた。

「そう。だから、それさえ回収出来れば、あとはバーク遺跡へ行けばいいだけなんだけど。」

玲樹が、ため息を付いた。

「簡単に言うなよ。結構な移動距離になるんだぞ?シオメルは近いってのにここから歩いて一日は掛かるしな。バーク遺跡までなんて…船や鉄道を使っても、また二週間ぐらい掛かるだろうが。」

ダンキスが唸った。

「玲樹の言う通りぞ。やはりグーラ達を使うべきか…しかし、グーラ達でも五日は掛かるだろうがの。それにあやつらは小さくすることも出来んから、あの大きさのまま連れ歩かねばならん。この人数を運ぶとなると、最低でも三体はグーラが要る。一体に四人は、長距離は無理よ。シオメルぐらいなら大丈夫だがな。」

メグは、道中の街中をグーラを引き連れて歩いて行く様を想像してみた…駄目、どこかのパーティに殺されてしまうかもしれない。何より、街中に三体もグーラが出現したら、大騒ぎになってしまうだろう。説明するのも大変そうだし…。

すると、舞が横から言った。

「じゃあ、飼いグーラだと分かるように首輪を付けたら?」皆が怪訝そうな顔をしたので、舞はチュマを引っ張り出した。「ほら、チュマにもシアでネックレス買ってつけてるの。これで、食べられちゃうこともないかなと思って。」

チュマが誇らしげに胸を張った…まんまるなので、どこが胸が分からないのだが、きっと胸を張ったと思った。

『すごいでしょう?これ、気に入ってるんだ。マイが買ってくれたんだよ~。』

ダンキスは唸った。

「しかし、あやつらが素直にこんなものを付けさせるものか。何しろ、見た通り誇り高いやつらでの。納得させるのが大変ぞ。まず、マーキスだ。あやつが良いと言わねば、他はあれに準じておるからの。」

圭悟が、口を開いた。

「いや、いい考えかもしれないぞ。もっと重厚な作りのやつを考えたらいいじゃないか。」

シュレーが眉をひそめた。

「…お前、マーキスを説得する自信があるか?首輪なんて、死んでも付けたくないだろう。」

玲樹が言った。

「なら、首輪だと言わなけりゃいいんだ。」皆が、玲樹を見た。「飾りだよ。王だって、ここの長だって皆飾りを付けるだろうが。オレ達だって、気が付いたら額飾りとかなんやかやと付けてたしな。特別なグーラだという印だと言えばいい。」

ダンキスと、アークとシュレーが顔を見合わせた。

「じゃあ、ここの職人に言って、作らせてみるか?」アークが言った。「鉄の首輪を付ける訳ではないのだ。もしかしたら、良いと言うかもしれぬだろう。」

シュレーも、頷いた。

「どっちにしても、移動手段は要るんだ。グーラに何としても納得してもらわなければな。」

そうして、ダンキスから職人に、長が付ける首飾りのような重厚な物を作るようにと知らせが行った。


次の日、それを持って小屋の中へ入ると、シャーラが皆に取り囲まれるようにして眠っていた。まだ眠っているグーラも居るが、マーキスはもう起きていて、手前に居た。ダンキスが、マーキスに言った。

「マーキス。これからの旅に、お前達を連れて行きたいと思うておっての。それで、お前達が普通のグーラでないことを知らせる方法を考えたんだが。」

マーキスは、ちらとダンキスの腕を見た。そこに握られている、中央に大きな宝石が付けられた首輪を見て、眉をひそめた。

『…オレは、そんなものを巻かれたくない。犬じゃあるまいし。』

やはり、とダンキスは思ったが、首を振った。

「何を言う。オレだってつけておった、長の首飾りと同じ物であるぞ。わざわざ職人に作らせたというのに。これを付けておったら、誰もお前達に斬り掛かったりせぬし。」

マーキスは、フンと鼻を鳴らした。

『オレは斬られることなどない。斬り掛かったヤツの身を案じることよ。』

ダンキスは、お手上げだというような顔で、圭悟を見た。圭悟は、マーキスに歩み寄った。

「マーキス…ちょっと、表へ出ないか。」

そこに居た、他の者達がびっくりして圭悟を見た。なんだってマーキスと?散歩か?!

しかし、マーキスはじっと圭悟を見て、頷いた。

『いいだろう。』

圭悟とマーキスは、並んで出て行った。

皆は顔を見合わせながら、それを見送った。

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