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ディンダシェリア ~The World Of DYNDASHLEAR~  作者:
エピローグ・新しい世界で
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10年後

シュレーの声が聞こえる。

「おい、レイキ!今日はあっちで皆と合流だと言っていなかったか?オレはわざわざ陛下に非番にしてもらったんだぞ。」

玲樹は、慌てて起き上がった。

「うわ!今、何時だ?」

シュレーは、呆れたようにため息を付いた。

「8時。」

玲樹は慌てて起き上がった。

「やべぇ!船の時間8時半だぞ!急ぐぞ、シュレー!」

シュレーは、仕方なく玲樹について駆け出した。

「だからお前と一緒に旅なんて嫌だと言ったんだ。やっぱりマーキスに迎えに来てもらえば良かったよ。」

「アレスの方が近いだろうが。頼むなら、やつだ。だが間に合うって!」

二人は、そうしてやっとのことでメク行きの船に乗り込んだのだった。


舞は、マーキスから降りて、その景色を楽しんでいた。何かの遺跡のような場所に、不釣合いな綺麗な建物。ここが、王立の研究所なのだという。すると、後ろから子供の声がした。

「ママ、ここにお友達が居るの?」

八歳の娘、マナが言う。すると、後ろから来た十歳になったばかりの息子、ラーキスが言った。

「違う。主は何を聞いておったのよ。父上がおっしゃっていただろう。ここに居るのではなくて、来るんだ。」

ラーキスは、マーキスにそっくりの小さなマーキスと言った感じの息子だった。マナは頬を膨らませた。

「もう、お兄様ったらいつもそんな風に私を馬鹿にして。いいもん。ちょっといい間違っただけだもん。」

舞がいつものことに苦笑して止めようとすると、マーキスが割り込んで来て言った。

「さあ、参るぞ。そのように口げんかばかりしておったら、友に対して恥ずかしいではないか。もう少し心得よ。のう、マイ。」

舞は、微笑んで頷いた。マーキスは、それこそ大事そうに舞の肩を抱くと、子達に頷き掛けて一緒に歩いて研究所へと入って行った。

「楽しみだわ。」舞は言った。「皆が集まるなんて、何年ぶりかしらね。」

マーキスは答えた。

「そうよな。ダッカにはバラバラに訪ねて来るゆえ、一同に介するのは10年ぶりぐらいではないか。」

舞は、久しぶりにうきうきとする気持ちを抑えるのに苦労した。ああ、皆にやっと会えるんだ。

次々に到着する、グーラ達の背には、アークとナディア、それに二人の息子の姿もあった。アレスとダイアナ、キールは久しぶりに会って話し込んでいる。舞はちょっとした同窓会といった雰囲気に、足取りも軽く歩いて行った。


圭悟は、現実社会へ帰って来て10年、毎日を必死にこなしていた。舞や玲樹のことを調べると、彼らは初めから存在しないことになっていた。圭悟は驚いたが、つながりを絶つとはこういうことだったのかと今更に思った。もう、遊びで行き来できるような状態ではないということだ。今まであちらとこちらで二つ持っていた身が一つに統一され、つまりはこの身一つで生きて行けということだ。思えばそれは至極当たり前のことなのだが、圭悟は今更ながらに驚いていた。そう、今まで身を二つも持っていたなんて。

圭悟は、その不思議に、もう遠い世界のことのような気がしてきていた。夢だったのかも、とさえ思うことがあった。

しかし、あのディンダシェリアでの経験は、圭悟に他にない覚悟と忍耐を植えつけていた。今や、最年少の本部役員にまで上り詰めていたが、圭悟は後進を育てながら、実はじっとまだ待っていた。自分の両親を送り、今や圭悟には、抱えるものがなくなった。あれから、結婚もしなかった…そんなものを持ってもいいと思わなかった。何しろ、自分は皆が迎えに来たらあっちへ行ってしまう身なのだ。家族を置いてなどいけない。

メグは、その言葉の通り、結婚して二児の母になって忙しくしていた。圭悟は、思った…このまま、自分はずっと一人なのだろうか。もう、皆の顔を見ることも叶わないのだろうか…。

瑠璃色の玉を、毎夜じっと見つめて寝た。あの当時、これであちらへ行っていた。だが、今はそんなことは望めないのは分かっている。だが、一目でいい、皆に会えないのか…。

思いながら眠りに付いた圭悟の手の中で、瑠璃色の玉はきらりと意味ありげに光った。


声が、聞こえる。

「…ねえ、あの玉を握っててくれてよかったわよね。場所が特定出来ないところだったでしょう?」

聞き覚えのある、明るい声だった。他の声が答えた。

「しかし眠ったままでないと連れてこられないとは何と不自由な。他に方法はないのか、ハンツよ。」

これも、聞き覚えのある男の声だ。すると他の声が答えている。

「ここまで開発出来ただけでも、たいしたもんなのですから。こんな短期間で、急げ急げと王から矢のような催促、私達も必死に研究した結果なのですよ。」

他の声が飛んだ。

「これ、でも帰すことって出来るの?」

困ったような男声が答えた。

「いえ、その、そこまではまだ。でも、かなりいいところまで来ております。」

「何だってぇ?もしもこいつが帰りたいとか言い出したらどうするんでぇ!」

その声に、圭悟は弾かれたように目を開いた。

「…玲樹!」

玲樹は、びっくりしたような顔をした。

「け、圭悟…!お前、すっかり老けちまって!」

圭悟は、頷いた。

「お前だって!もう35、6ぐらいだろう?」

玲樹は、自分の頬も触った。

「あ、そうか。そうだな、舞にだって子供が居るぐらいだしさ。」と、手を差し出した。「圭悟…久しぶりだ。」

圭悟は、その手を握って、起き上がって回りを見回した。みんな居る…アーク、ナディア、舞、マーキス。アレス、ダイアナ、シュレー、キール。そして見慣れない、でもどこかで見たことがあるような顔の子供達…。

「ああ」圭悟は、言った。「帰って来た。」

舞が、涙ぐんで頷いた。

「お帰りなさい、圭悟。」

圭悟は、皆の方へと足を向けながら、途端に囲んで来る仲間達に笑顔で応対し、そのまま話しに花を咲かせた。

来る時に握り締めていた、瑠璃色の玉はとっくに手から滑り落ちていた。

もう、帰ることは考えなかった。これからは、ずっとここで皆と一緒に暮らすんだ。

圭悟は、皆と話せるこの時にただただ酔って、その夜は語り明かしたのだった。


ディンダシェリア。

この世界で、皆と共に暮らして行く。

メイン・ストーリーを、完結した者として。

ここまでの長丁場、本当にお付き合いありがとうございました!RPGの恐ろしさを、痛感した数ヶ月でした。あっちもこっちもと伏線を張っていて、そして人物もほとんど思いつきで登場し、その人物の過去やらが入って来て、なかなかに前に進まない…。ふつうのゲームで、じゃあまずはクリアして、それからサブイベント見て行くか~、が出来ないのが小説なのでございます。それに掴まってしまい、二ヶ月ほどで書き上げてしまう予定が、思いもかけず4ヶ月も経ってしまっていました!ディンダシェリア2は、もし書くのなら次世代なのか、何なのか、と言った感じ。作者はそこまでの根性がまだ湧き上がって来ません。気力が湧き次第大至急アップしてがんばります。もしも2が出来ましたら、またよろしくお願いします。1/30

皆様のアクセスに力を頂き、次世代編のようなもの、アーシャンテンダ~EARSHUNTENDA, the world~準備中です。単独でも読めるお話です。また連載開始時には活動報告からご報告致しますので、 よろしくお願い致します。2/8

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