表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディンダシェリア ~The World Of DYNDASHLEAR~  作者:
エピローグ・新しい世界で
189/193

シャルディーク

一行は、その不思議な空間を後にした。シュレーは黙ってラキを布で包んで回収し、ナディールへと連れ帰った。あちこちが掘り起こされたようになった、変わり果てた姿のナディールでは、シンシアとデューラスが、レンと共に表へ出てこちらを見上げてた。辺りはもう、夜になっている。回りでは、兵士達が辺りを片付けるために働いている。メグが、ダイアナの背で叫んだ。

「ああ!無事だったのね、シンシア、デューラス!」

二人は、並んで微笑んでいる。その姿が、以前より落ち着いたように見えた圭悟は、地上に降り立って言った。

「二人共、大丈夫だったか?メグから聞いていたから、心配してたんだ。」

シンシアが言った。

「私の気も残り少なくなって来て、もう終わりだと思っていた時に、天上から赤い光がたくさん落ちて来たのよ。」シンシアは、デューラスを見た。「それで、私達もその力に捉えられて、気がつくとなんともなかったわ。驚いてこちらを見たら、格納庫の前の兵士達もそうだった。ディンダシェリア全体に落ちてるんじゃないかというぐらい、たくさんの光だったわ。」

デューラスは、シンシアの肩を抱いた。

「お前達が戦ってくれたから、助かった。オレ達はもう、駄目だと思っていたからな。これで、生き直せる。」と、シンシアを見て微笑んだ。「オレ達、結婚するんだ。」

メグが、涙ぐんだ。

「おめでとう!そうなの、本当に良かった…!」

舞も、微笑んで頷いた。

「本当、お祝いをしなきゃ。」と、マーキスを見た。「ねえ、ダッカでする?あ、でも、まだ火事の後が復興してないか…。」

シンシアが、肩をすくめた。

「今はどこも同じようなもんよ。そっちがいいなら、ダッカでもいいかな。」と、デューラスを見た。「私、ほんとは都会より田舎の方が好きなのよね。」

デューラスは笑った。

「知ってらあ。お前は清流で泳ぐのが好きだったもんな。」

「もう、よく覚えてるわねえ。」と、歩き出した。「神殿に戻ってるわ。」

二人を見送って、レンが言った。

「全く当てられっ放しなんだよ。」と、シュレーが布の包みを抱いて下りて来るのを見て、表情をこわばらせた。「…誰だ?」

シュレーは、レンを見た。

「ラキだ。」レンは、ショックを受けた顔をした。「立派に戦ったんだぞ?こいつが居なけりゃ、オレ達はデクスを倒せなかった。」

アークが、進み出て頷いた。

「命を懸けてデクスを倒す機会を作ってくれたんだ。丁重に葬りたい。」

レンは、頷きながら言った。

「とにかく、皆火葬にしている。」と、遠く離れた野で、上がっている煙のほうを指した。「この騒ぎで亡くなった者達を、デシアに連れて帰るためにな。夜を徹して行なわないと、間に合わないんだ…命の気を取られて、殺された兵士が多い。ラキも、ああして連れて帰ろう。」

シュレーは、その弔いの煙を見ながら言った。

「ラキは、オレが故郷の土に埋めてやる。こいつは、きっと最後まで、平和だった自分の出身国へ帰りたかったはずだ。こうして平和になったんだから、オレはそこへ連れて行ってやりたい。」

レンは頷いて、歩き出した。

「さ、こっちへ。お前達の王も、そろそろ連絡して来るんじゃないか?こっちのリシマ王は、早々にデシアへ戻ると伝えて来られた。我らも、ここを始末して早くあちらへ戻らねばならん。きっと、向こうも我に返った奴らで大混乱だろうしな。事情を知っているオレ達が、何とかしなきゃならないんだ。」

シュレーは、ラキを抱き上げて歩きながら、レンとそんなことを話ながら去って言った。圭悟が、それを見送ってから皆を振り返った。

「さあ、とにかく今日は休もう。陛下から書状が来てるみたいだが、ちょっとぐらい待たせてもバチは当たらないさ、なあ?」

玲樹は、ふふんと笑った。

「なんだ圭悟、言うようになったじゃないか。お前ほんと、真面目なヤツだったのによ。」

そう言うと、圭悟と強引に肩を組んで神殿の方へと歩き出す。圭悟は、足を取られながら、玲樹に引っ張られて歩いた。すると、目の前にシャルディークとナディアの透き通った姿が並んで浮いた。驚いた二人は、思わず足を止めた。

「シャルディーク…。」

シャルディークは、穏やかに微笑んだ。

『主らは、ほんにようやってくれたの。』シャルディークは、傍らのナディアと微笑み合った。『ウラノスの仕業であろう。ナディアが、我が何もせぬのに解放されておった。』

舞が、二人を見上げて言った。

「では、命の気はまた分散されたのでしょうか。」

ナディアは首を振った。

『いいえ。シャルディークの力の石は、ひとつあのまま残して置きまする。もはや意思はありませぬが、それでも命の気はシャルディークの力に吸い寄せられて流れる。心配は要りません。』

舞は、ホッとした。マーキスが、言った。

「本当に世話になった、シャルディーク。主が居らねば、我らどうなっておったか分からぬ。最後まで、主の力に頼ってしまったの。」

シャルディークは首を振った。

『我こそ礼を申さねばなるまい。マイと主が我をあの地下で見つけてくれておらねば、我は未だにあのままナディアに会うことも出来なんだ。』と、ナディアの肩を抱いた。『我らは、参る。』

アークが、寂しげな顔をした。

「…また、会えるか?」

シャルディークは笑った。

『おそらくはすぐにの。我ら、あちらでしばらくゆっくりしたいと思うておったが、ウラノスのあの言い方では、それも叶うまい。早よう転生して、この地を平和に保つ力添えをせねばならぬ。恐らく、何も覚えてはいまい…それでも、我はそなた達を忘れぬぞ。』

ナディアも、微笑んだ。

『では、また。あなた達と共に居て、楽しかったこと。』と、舞とダイアナを見た。『我の娘達。どうか幸せにね。』

二人は、黙って頷いた。そうして、シャルディークが手を上げる。二人は、天から伸びて来た光の中、上昇し始めた。

「シャルディーク!ありがとう!」

圭悟が叫ぶ。玲樹も、同じように叫んだ。

「またな!結構好きだったぜ、シャルディーク!」

それを聞いたシャルディークは、驚いた顔をした。そして、ナディアと顔を見合わせて、微笑み合った。

『我も、主らと一緒に居って、楽しかったぞ。』

遠く、もう姿さえもはっきりと見えなかったが、シャルディークの声は届いた。

そうして、シャルディークはナディアと共に、光の中へと消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ