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光の魔物

9人がそこをただ柄の石の光だけを頼りに歩いて行くと、不意に先頭を行くマーキスが立ち止まった。キールも、アレスも眉を寄せて険しい顔をした。

「…何か、気が乱れておる。」

アレスが、目を凝らした。キールも頷く。

「2、3…4体か。」

マーキスが頷いた。

「小さいがの。複数だと厄介よ。」

玲樹が、剣を抜きながら言った。

「なんだよ、見えないぞ?」

横のアレスが言った。

「直に見える。」と、自分の剣を抜いた。「そら。」

四つの光が渦を巻いたかと思うと、そこに4体の光で実体があるのか無いのか分からない、狼のような形をした魔物が突然に姿を現した。まだ武器を手にしていなかった者も、皆一斉に剣を抜く。

「おいおい、気が見えないオレ達は、一体どうしたらいいんだよ!」と、剣を振り上げた。「いきなり現れるんじゃねぇか!」

舞は、後方へ下がって杖を構えた。そして、落ち着いて炎の術を詠唱した。大丈夫…あんなの小物。ルクルクを倒すつもりでやればいい。

「フォトン!」

舞の術が飛ぶ。前衛の玲樹、圭悟、マーキス、キールは剣を振り上げて切り付けていた。中衛のアーク、アレス、ラキ、シュレーは、それぞれの得意な魔法技を放っている。舞は、回復も担って後方からただ一人術を放っていた。

「直接攻撃は駄目だ!」玲樹が叫んで、炎をまとう剣を振り上げた。「魔法攻撃でないと!」

圭悟も、慌てて自分の剣に術を掛けた。キールもそれに倣い、マーキスはしかし、そのままだった。

「この剣は、いける!」マーキスは言った。「もらった剣は、利いているぞ!」

マーキスが、最後の一太刀を魔物に浴びせた。それで、4体の魔物は消滅した。後には、静けさが残る。

「ああいったのが、出て来るのか。」圭悟が、言った。「あれは、普通の剣で切っても利かなかった。利くのはマーキスが持ってるあの剣だけだ。」

ラキが頷いた。

「術を掛けるしかないな。心配しなくても、今と同じように我らが後ろから魔法攻撃で支援する。」

圭悟は頷いて、剣を鞘へ収めた。一体デクスの居る場所まで、どれぐらいあるのだろう…。


それからも、突然に光の魔物達は行く手を塞いで現れた。

この人数なので、皆で掛かってそうてこずる事もなかったが、それでもそれは、時間的ロスには変わりなかった。一度かなり大きな光の魔物が出て来た時は、その大きさに同じ岩に乗ることが出来なくて、横の岩に分かれて魔法技を放ち、消し去ったこともあった。

そうして、とめどなく同じ景色の空間を進んでいると、遠く向こうの方に、光のカーテンが下りている場所が見えた。圭悟が言った。

「あれか?」

皆が、並んでそれを眺めた。マーキスが、剣の柄を見る。

「そのようだな。光がより強くなっている。」

玲樹が、嬉々として足を進めた。

「見えて来たらこっちのもんだ。今まで何もなかったから、何を目指してるのか分からなくなって来ちまって。」

舞も、同じ気持ちだったので、苦笑した。

「目標物が見えて来たんだもの、がんばりましょう。」

9人は、それを目指して岩場を選んで進んで行くと、急にアレス、キール、マーキスが空を見上げた。

「伏せろ!!」

3人が叫ぶ。舞も、マーキスに乱暴に掴まれて地面へと倒れた。途端に、回りの岩場を破壊して、大きな鳥のようなものが空から降って来た…舞は、その気に覚えがあった。

「デクス?!」

舞が叫ぶ。それぞれがその場に伏せて岩場に転がった状態で、半身を起こしてそちらを見た。

そこには、人型のデクスが浮いていた。間違いなく、これがオリジナルのデクス。紫色のような黒髪に、金色の目だった。

『避けるとはの。ま、気を読むグーラ達が共であるから、それも可能か。』

デクスが降りて来た回りの岩場は、隕石でも落ちたかのような有様だった。しかし、デクス自体は浮いている。つまりは、回りを包む気がそれを成しえたのだろう。

マーキスが、腰に吊り下げた巾着の中の身代わりの石を握り締める。それを見たアークが、留めた。

「まだぞ。」

マーキスはアークを見た。

「しかし、あやつにはこの剣は利かぬ。」

小声であったのだが、デクスはああ、という顔をした。

『我が創造主より、その剣を取って来いとの命での。それを持って行かねば、力を戴けぬのだ。だが、剣を取るために少しだけ力は与えてもらえたぞ?』と、突然にその手から大きな光線を発射した。『見よ!』

マーキスが、咄嗟に舞を抱いて横へと転がる。皆が必死に岩を移ってそれを避けた。デクスは大声で笑った。

『はははは!どうよ、ほんの少しでこれよ!創造主の力、いかばかりかと思うわ!そら、避けてばかりでは我を倒せぬぞ?そら!』

まるで雨のように、デクスから破壊光線が降り注いで来た。皆が身を翻して避けて行く中、マーキスが言った。

「マイ、しばらく離れておれ。」と、デクスに向かって睨みを利かせた。「消してしもうてくれる!シャルディーク!」

こんな離れた空間の中でも、シャルディークの白緑の光は届いた。マーキスに憑依したシャルディークは、赤い目を開いてデクスの前に浮かんだ。

『主とは決着をつけねばならぬ。』シャルディークの声が言った。『我に対する行いの恨みはないが、無下に殺された民達の無念さには我慢がならぬ。死ぬが良い!』

シャルディークから、一気に大きな光がデクスへと向けて放たれた。デクスは、必死に防御している。だが、押されているのは一目瞭然だった。

『今の…我は、主などに、負けぬ!』デクスは、叫んで一気にその力を押し返した。『創造主に頂いた力ぞ!もっともらうためには、その腰のものを渡せ!』

シャルディークは、ふんと鼻を鳴らした。

『何が創造主ぞ。悪魔の片棒を担ぐようなものは、滅せられる運命ぞ!』

ピシッという音が微かにした。マーキスが、急いで次の石を掴む。シャルディークは、そのままマーキスに憑依し続けた。デクスから、マーキスに向けて再び破壊光線が発しられた。アークが、それを見て叫んだ。

「皆で、回りから援護するのだ!あの石は力の大きさで消耗の度合いが決まるゆえ!」

それを聞いた皆が、一斉にデクスに向けて魔法技を放ち始めた。デクスは、鼻を鳴らすと、回りに向けて小さく細かい光を降らせた。

「危ない!」

舞が、必死に膜を張って防御する。マーキス=シャルディークが叫んだ。

『死ね!デクス!』

再び、マーキスから光が真っ直ぐにデクスに向かって放たれた。デクスは、それを両手で受け、唸った。

『くそおおおシャルディークめ!』デクスは、歯軋りした。『創造主に力をもらえば、お前など一瞬で消し去ってしまうものを!』

デクスは、回りからの魔法技も受けて、よろめいた。明らかに、受けきれていない…舞は、あと一押しだと浄化の気砲の構えをした。これで、きっとデクスは吹き飛ぶはず!

舞の目の前に、大きな光が収束し始めた。それに気付いたデクスが、顔色を変えた。

『…させるか!』

デクスは、不意にその場から消えた。マーキスが、光を止めて回りを見る。

『どこへ行った?!』

口から出たのは、シャルディークの声だった。アレスが、いち早く気配を呼んで叫んだ。

「あちらぞ!」

光のカーテンのより近く、デクスは浮いていた。そして、両手を挙げて叫んだ。

『全て終わりになれば良いわ!我が我のための世界を作ってやるゆえな!』

デクスの気が、どんどんと膨らんで行く。マーキス=シャルディークは飛んでそちらへ向かった。

『思うようにはさせぬ!』

下の仲間も必死にそれを追って岩を飛び越えて走った。目の前で、デクスが暗い光に覆われて、見えなくなった。

『…伏せよ!』

シャルディークの声が叫ぶ。しかし、シャルディークの憑依したマーキスには見えた…間に合わない。

マーキスは最後の石を握り締め、皆を守る膜を力いっぱい張った。

舞は、衝撃で岩場に倒され、必死に目を開けて回りの状況を把握しようとした。

しかし、マーキスの張った膜の外を、何かが物凄い勢いで流れているのが見えるだけで、他は何も見えなかった。

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