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ディンダシェリア ~The World Of DYNDASHLEAR~  作者:
明らかになって行く過去達
162/193

デシアの闇の中2

シュレーは、居心地が悪かった。

シンシアは、自分があのヒョウのシュレーの人型なのだとは知らない。なので、普通に面倒なことも言わないが、それでも時に問いかけるような目で見上げるのには、どうしたらいいのか分からなかった。

だが、シンシアが何も言わないのでそのまま、地下へと黙って二人で降りて行った。その時に、何人かの兵とすれ違ったが、こちらが何も反応しないでいると、あちらも全くこちらを見もしなかった。本当に、皆屍が、無理に動かされているかのようだった。

あの日、ラキに連れて来られた地下の格納庫は、綺麗さっぱり何も無くなっていた。あの時マーキスと共にここへ踏み込んだ時には残っていた台座すら、もうここには無かった。シュレーがぶらぶらと辺りを見回しながら歩いていると、シンシアが壁際に作りつけられているコンピュータをカチカチと押している。そして、黒い画面に何かの設計図のような物が出た。

「シン、見て。」シンシアは言った。「これは残っているわ。」

シュレーは、画面を覗き込んだ。しかし、専門用語ばかりで何が書かれているのか分からない。シュレーは顔をしかめてため息を付いた。

「オレは機械はからっきしなんだ。何と書いてる?」

シンシアも、首を振った。

「機械を知っていたとしても、これは専門知識がなければ分からないわね。データだけを持って行く?」

シュレーは、頷いた。

「出来るか?」

シンシアは、何かをまた操作して、シュレーの腕輪を見た。

「そこへ送る。この前に腕輪を翳して。」

シュレーは、言われた通りにした。すると、コンピュータ側の何かが光って消え、腕輪が光ったかと思うと、データ受信完了と出た。

「…これで、ここのデータはコピー出来たわ。」と、上を見上げた。「隠れて!レンよ!」

見ると、透明のエレベーターにレンの姿がちらと見えた。シュレーはシンシアと共に、慌ててまだ壊れたままの地下通路の方へと駆け込んで行った。


一方、ラキはデューラスと共に、司令室へ到着していた。中を伺うと、レンは居ない。いつもなら、レンが居なければ誰か他に代わりの者が居るはずなのに、ここには誰も居なかった。罠か、とも思ったが、今の混沌とした中で罠など思いつくこと自体が考えられなかった。なので、そのまま見慣れた司令室へと足を踏み入れた。

手早く、手分けしてコンピュータの履歴などをチェックする。ヘリの発着日時など、ざっと目を通していると、デューラスが言った。

「レンが、やたらと腕輪の周波数を探知してる。」デューラスは言った。「同じ者ばかりを一日五度は確認してるな。」

ラキは、そちらを見た。憑かれているはずのレンが、そんなことを命じられているというのだろうか。

「誰だ?」

デューラスは目を上げた。

「ボスだよ。」

ラキは、急いでその画面を見た。確かに、位置を確かめるために行なう周波数のチェックを、日に数回行なっている。しかも、時間はまちまちだった。

「まさか…レンは、飲まれてないのか?」

デューラスは、首を振った。

「だが、ぼーっとしている時もあるぞ。こっちに気付いてないような。だが、時に目が鋭くなるだけで。」

ラキは、そのチェックの履歴を見つめた。これによると、デューは週に一度こちらへ戻って来る。そしてチェックが二日ほど飛んでいるのを見ると、その間はここに居るのだろう。そして、二日後またチェックが開始される。さっきのヘリの発着日時と、その日付は合致した。まだ二週間ほどだが、おそらくこの行動はこのままだろう。

「…レンに、会ってみたい。」

デューラスは、驚いた顔をした。

「何を言ってる。駄目だ。あいつははっきりしている時もあるって言ってるだろうが。捕まるぞ!」

「だが、お前達をあそこへ放り出した。」

ラキが言うと、デューラスは訳がわからないという顔をした。

「それはそうだが、だから?」

ラキは、コンピュータを叩いた。

「だから、あいつは意識があるとオレは思う。レンの居場所を探そう。お前もそっちのモニターをチェックしてくれ。」

デューラスは、渋々ながらチェックし始めた。もしもレンの意識があるのなら、まだここを解放する望みはある!


シュレーは、シンシアと地下通路へと飛び込んで、そこを走っていた。このまま行けば、一度外へ出てしまうが、待ち合わせ場所には外から回り込んで行けるはずだ。

必死に走っていると、少し明るくなり始めて白んだ空が見えて来た。シュレーとシンシアがそこを飛び出すと、そこには、地下格納庫に降りて来ていたはずの、レンが立っていた。

「待っていたぞ。」

思わずシュレーが構えると、シンシアも剣を抜いた。

「レン!あなた、間違ってるのよ!って言っても、お馬鹿さんになってて分からないか…」

シンシアが術を放とうとすると、レンは言った。

「オレは間違ってなどない。馬鹿はお前だ、シンシア。どうして逃げなかった。何のために外の守りにつかせたと思ってる。」

シンシアは、放ち掛けた術を止めた。

「え…」

シュレーが、警戒しながらも足を踏み出した。

「レン、お前飲まれなかったのか。」

レンは頷いた。

「オレは、どうしたことか平気だった。というのも、おそらくはこれだ。」と、ポケットから、紫色の石がはまったネックレスのような物を出した。しかし、その石は黒く濁ったようになっていた。「これに、代わりに憑いた。オレも何かが意識の中へ入り込もうとしたのを感じたが、これを身に着けていたお陰で助かった。捕らえた男から、没収した物だったんだが。」

シュレーは、それを見つめた。黒い影のようなものが中を渦巻いているが、見覚えがある。

「身代わりの石…。」と、レンを見た。「いったい誰から?」

レンは、シンシアを見た。

「こいつらが連れて来た、地下の研究者だ。大切なものなのか、箱に入っていて。綺麗なものだったから、オレは箱から出して首に下げていた。そのミクスという男は、あの時は分からなかったが、何かに取り憑かれていたのだと言っていた。自分は、空間を破壊するような物を作るのに、加担してしまったと。ライアディータへ帰してくれと叫んでいたが、社長に連れて行かれて…どうなったのか、わからん。しかし、皆が次々におかしくなって行き、自分まで意識を支配されそうになって、やっとあの男が言っていたことが本当だったのだと知った…社長は、大変な物を作っているのだ、とな。」

シュレーは、レンを見た。

「レン、ではお前こそ、なぜ逃げなかった?」

レンは首を振った。

「今ここで逃げてしまっては、仲間があんなものにとり憑かれたままになってしまう。それに、あの兵器を野放しにしてしまうことになる。なので、社長が戻った時にはこの石を握り締め、憑かれたふりをしながらここに残った。どうにかしてあれを破壊できぬものかと考えていたのだ。監視モニターにお前達が映ったので、急いで来た。」

シュレーは、頷いた。

「ラキも、来ている。オレ達もあれを破壊出来ないかと策を練っているのだ。」

レンは、わかっている、という風に頷いて、ポケットから何かを出した。

「ナディールに移転する時に作られた研究所の見取り図だ。山へ向かって段階的に作られていて、最上階にあの兵器は設置されているはず。」

シュレーは、それを受け取った。

「すまない。これで、道に迷わずに済む。」

背後の通路から、足音が反響して聞こえた。シュレーが警戒して振り返ると、ラキが息を切らせて立っていた。

「レン!」

レンは、微笑んだ。

「ラキ!お前なら、来てくれると思っていた。シンシアとデューラスが知らせてくれたらと思って外へ出したのに、一向に立ち去る様子もないし…困っていたところだった。」

ラキは、ホッとしたようにレンを見た。

「やはり、お前は飲まれていなかったか。司令室で、デューの周波数を調べているのを見つけて、きっとそうだろうと思っていたのだ。」

レンは、ラキに言った。

「夜が明ける。とにかく、お前達は行け。オレはここに居て、定期的にあいつらを強制的に眠らせて休ませなければいけないんだ。でなければ、死ぬまで飲まず食わずで睡眠も摂らずに居ることがわかってな。昼間になると、動きがまた活発になる。早く今のうちにデシアを出るんだ。」

ラキは、頷いてレンを握手した。

「レン。なるべく急いであれを破壊して、デューを始末する。それまで、皆を頼む。」

レンは頷いた。

「任せておけ。」と、昇って来る朝日を見た。「さあ、急げ!」

シュレーとラキは、シンシアとデューラスを連れて、再び地下通路から、デシアを抜けて行った。

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