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悪魔に会う準備

次の日、まだ暗いうちにマーキスと共に小屋を出た舞は、皆が待つダンキスの小屋で朝食を取り、明けて来た空に向けて飛び立った。マーキスには舞とチュマ、圭悟が乗り、キールには玲樹とメグが乗って、ダイアナとアレスの二体を先導してミクシアへと飛ぶ。他のグーラ達は、それを見送っていた。ダンキスとシャーラも、変わり果てたダッカの村でこちらを見上げて手を振っていた。それを見た舞は、涙ぐんだ。つい、数日前には、皆が綺麗な村からこちらを見上げて見送ってくれていたのに。そう思うと、いたたまれなかった。

そんな舞を見て、圭悟がいたわるように言った。

「舞…だが、グーラ達が来てくれたから。これで済んだんだよ。ダンキスもシャーラも無事だったし、他のグーラ達もだ。亡くなった村人達は残念だったが、これから復興して行くよ。」

舞は、頷いた。とにかく、これからもっと犠牲が出ないように、デクスを倒して、そしてそれからは皆の偏見を無くして行ける様に活動しよう。舞はそう思った。魔物といわれるもの達の中でも、話が通じるものも居る。ただ闇雲に倒すのではなく、話が出来る魔物とは、話して共存できるように。グーラを夫に持つんだから、自分がそういう活動をしていかなければいけない。舞は、そう決心していた。

『オレも悔しい。だが、生き残ったもの達のためにも、今はもっと強大な敵を何とかせねばならぬ。マイ、共にあの悪魔を倒すように、努力しようぞ。』

マーキスが言う。舞は、言った。

「マーキス…私もそう思ったところよ。デクスを倒したら、私は巫女として、グーラを夫に持つのだし、魔物との共存を考えて皆に訴えて行く活動を始めるわ。グーラ達や魔物を訪ねて、皆に術を掛けて話せるようにして回るの。そうしたら、話せる魔物とは、きちんと話し合うことも可能でしょう。そうやって、私がしなきゃならない。そう思うの。」

圭悟は、驚いていた。舞は、こっちへ来た時はそんなことを考えるような感じではなかった。本当に普通の女の子で、恥ずかしがりで、何も知らなかった。なのに、そんな活動をしようと思うなんて。

「すごいな、舞。オレも手伝うよ。こっちの世界も、それで変わっていけたらいいな。正直、こっちへ来ても、メインストーリーを求めるパーティ達に押されて、オレも毎日ただ情報屋が持って来る仕事をこなして、生きていく糧を何とかすることしか考えてなかった。でも、それじゃあこっちに来ている意味がないもんな。この旅を終えてからの目的が出来て良かった。」

舞は、微笑んで頷いた。マーキスが、舞を少し振り返った。

『なんと申すか…ケイゴというのは、会った始めから思うが、相手の気持ちの良く分かるヤツよ。思えば最初にオレがお前達の言うことを聞いてやろうと思うたのも、ケイゴと話してからであったわ。おかげでマイと交流することが出来て、オレはこうして結婚することが出来たのだがな。礼を言わねばならぬ。』

圭悟は、びっくりした顔をした。オレが、そんな大そうな。

「オレが?え、そんなたいしたことしてないんだけど。」

舞がふふと笑った。

「圭悟は、ほんとにいい人よね。きっと、何も思わなくてそんな性格なんだわ。実は私、最初にお店の前で転んだ時に、初めて圭悟を見た時から、とても憧れていたのよ?とてもハンサムだったし、それにやさしかったから…。」

圭悟が、またびっくりした顔をした。マーキスも、驚いたようでお尻の下の体が震えた。

「え…オレ?玲樹じゃなくて?あの時自転車直したの、玲樹だろう。なんで、オレ?説明しただけだったんじゃなかったっけ…。」

圭悟がうんうん唸って考えていると、マーキスが言った。

『…なるほどの。ケイゴか。分かる気がするの。レイキのはずはないがの。ふーん。』

舞が慌てて言った。

「ち、違うわよ、マーキス。憧れだって言ったじゃない!ちょっといいなと思っていただけなの。別に、圭悟とは何も無かったんだから。圭悟だって、今知ったばかりよ。」

圭悟も必死に言った。

「そうだよ!マーキス、オレは今の今まで知らなかったんだからな。今も前も仲間なだけだって!」

マーキスはしばらく黙っていたが、ふんと鼻を鳴らした。

『そんなに必死にならずとも、主らが嘘をついておらぬことは気を見て分かる。別に前に何があってもオレは何も言わぬわ。今はオレの妻だしな。今更何を言っても、誰にも渡すつもりはない。案ずるでないわ。それに、必要以上におたおたすると、気が見えぬ者からだとかえって怪しく見えるものぞ。そのように焦るでない。オレに気が見えて、良かったの。』

圭悟と舞はホッとした。余計なことを言わなければ良かった…と舞は後悔していた。気が多い女と思われたんじゃないかしら。

しかし、それからそれについて何も触れず、気が付けば見慣れたミクシアの上空へと到着していたのだった。

アーク達が、もう入り口で立っていてこちらを見上げていた。どれぐらいからそこに居たのかは知らないが、かなり前から立っていたようで、ナディアの髪が風で乱れてしまっている。マーキスとキール、それにダイアナとアレスは、そこへ降り立って人型へと変げした。アークが、走り寄って来た。

「待っておった!ダッカはどうだ?我らこちらから行こうにも、歩くと数日掛かるゆえ…待っておるしかなくて。」

それを見た圭悟は、アークとナディアがかなり心配していたことを知った。

「メク山脈のグーラ達に助けられて。今は、落ち着いている。とりあえず休める小屋は作ったし、これから一軒ずつ家を建てて行こうと言っているよ。グーラの兵隊達があっちへ残ってくれて、守ってくれているから、心配ない。」と、ダイアナを見た。「その、メク山脈のグーラの女王、ダイアナだ。そして、その兵隊の長、アレス。」

二人はやっと慣れて来た人型で歩み寄って来た。

「初めてお目に掛かる。ライナンの長、アーク。我がダイアナ、こちらがアレスよ。」

ダイアナが言った。アークは、グーラのメスに初めて会った…メスはオスに比べて格段に弱いので、滅多に巣から出て来ることがないからだ。アークは頷いた。

「会えて光栄だ、ダイアナ、アレス。これは、オレの妻のナディア。」と、ナディアを前に出した。「巫女と言われる女性で、変わった魔力を持っている。そちらのマイと同じよ。では、こちらへ。」

アークは先に立って歩き出した。一行はアークについてミクシアの中へと歩いて行った。

奥の、前に滞在した丸い半円形の建物へと入って行くと、中にはシュレーとラキが座っていた。玲樹が、驚いたように言った。

「なんだ、シオメルに居たのに?もう着いてるのか。」

ラキが答えた。

「ヘリがあったのでな。リーマサンデの山岳民族が、急なことでダイナ河を下っていては間に合わぬとみて、ヘリで山を駄目元で越えて来たのだ。なので我らは、それを使って昨夜からこちらへ向けて飛んでいた。主らが寝ておる間も、ずっと飛んでおったわ。そやつらが言うには、ナディールは大変なことになっておったらしい。軍が入って、何やらやっていたのだそうだ。」

舞は息を飲んだ。ナディール…あの、ルーラが居た癒しの場所が。命の気が豊富だから?

圭悟が険しい表情をした。

「シュレーから聞いていたが…あの兵器の開発を、そこでするためか。」

ラキは頷いた。

「間違いなくそうだろう。オレが読んでいた通り…早くしなければ。気が満たされれば、あの装置は作動するだろう。完成して、気で満たされたことを考えると、ぞっとする。」

玲樹は言った。

「そうか。言っていた通り、急がなきゃやばいんだな。で、どうする?このままデルタミクシアへ登るのか?」

今は昼近く。今からなら、マーキス達なら夕方までにはデルタミクシアに着くが…。

「出来ればそうしたい。が、ここでシャルディークと細かい打ち合わせをして、一緒に行ったほうがいいと思うのだ。」アークが答えた。「マーキス、もう心の準備は出来たか?」

マーキスは、薄く微笑んだ。

「ああ。オレはとうに出来ておる。主はどうか?」

アークは、頷いた。

「オレも、もう大丈夫ぞ。」と、手を上げた。「シャルディーク!」

もう見慣れた緑色の白い光がカッと光ったと思うと、シャルディークが姿を現した。そして、その場に浮かんだまま言った。

『…まずはお悔やみ申そうぞ、マーキスよ。主の里の惨状、目に余る。我には見えておったが、所詮死した男。何も出来なんだ。我は呼ばれねば来ることが出来ぬのだ。それに、我だけで手を下すことも出来ぬ。デクスが人の体を使っておるのと同じよな。』と、疲れたようにため息をついた。『で…聞いておったぞ。その、兵器とは何ぞ?デクスはいったい、どんなものを生み出したと?』

ダイアナとアレスが息を飲んでシャルディークを見ている。

ラキが、現状をシャルディークに話し始めた。

明日は、7時に世界観と登場人物の紹介と、続きのお話の二つを同時に二つアップします。17時は通常通りです。

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