彼女の置き手紙
この手紙をあなたが読んでいる時、私はもういないことでしょう。
ごめんなさい。
黙ってあなたの前から姿を消すなんて。
でも、私はそうするしかないのです。
あなたは悲しんでくれますか?
それとも、怒るのでしょうか?
私は今、あなたが寝ているベットの脇で、この手紙を書いています。
あなたの寝顔をこのままいつまでも見ていたい。でも、それはかなわない願いです。
私はこの手紙で、あなたに罪を告白しなければなりません。
今夜、あなたと初めての夜を過ごしました。
紳士なあなたの野性的な一面を知りました。
私はされるがままでしたね。
惚れなおしてしまいました。
あなたはいつだって、かっこよかったですね。
私が第三王子に婚約破棄されて追放されようとしたときも、あなたがさっそうと現れて私を救ってくれましたね。
でも、その時に、あなたが第一王子様だとわかって、私はすごくびっくりしました。
その上、私にプロポーズをしてくれて、私はとても幸せ者でした。
あなたはいつでも私を助けてくれました。
望まない第三王子との婚約で、嫉妬された令嬢達からいじめられたときも。
あなたは、いつだって私の素敵な王子様でした。
でも、私はあなたの前から消えなくてはいけません。
あなたに抱かれている時に、思い出したんです。
昨日、魔法実験で配合した薬の量が間違っていたことに。
あなたは眠っているので、気がついてないですが、私の工房の方角からとんでもない爆音の爆発音がして、天に届く淀んだ紫の火柱が上がってます。
さっきから紫の粉が、雪のように空から降り続けてます。
環境が変わるぐらいのやばいことが起こっているかんじです。
それで、私、ちょっとした用事があって、ちょっとでかけないといけないんです。
逃げるわけじゃないですよ。本当に用事があるんです。
本当ですよ。
それで、できればでいいんですけど、
できればでいいですよ、
この事態を何とかしてもらえたら助かるんです。
できればでいいですから。
でも、あなたはいつだって、私の後始末をしてくれて、期待しちゃうんです。
婚約破棄してきた第三王子の全身に私がペンキをぶっかけた時も、いじめてきた令嬢の顔面に私が豚のエサを叩きつけた時も、あなたが後始末してくれて。
できればでいいです。
本当にできればでいいですから。
でも、やってもらえたら嬉しいです。
本当にごめんなさい。
おわり




