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ポール・アンド・エキゾチック・マスターズ

ガライベントでの成功から半年。美咲とエレーナの名は、デュッセルドルフの夜の世界だけでなく、欧州のダンスシーンにも密かに広まり始めていました。


そんな二人の元に、エレーナが一通の招待状を持ってきます。それは、ハンブルクで開催される欧州最大級のストリップ・パフォーマンス大会「ポール・アンド・エキゾチック・マスターズ」への出場権でした。


新たな挑戦:アートか、エンターテインメントか

「ミサキ、これはただのストリップじゃないわ。身体能力、芸術性、そして観客をいかに『支配』するかを競う、真剣勝負よ」


エレーナの瞳には、かつてない闘志が宿っていました。しかし、美咲には迷いがありました。ガラで見せたのは「融合の美」。けれど、この大会で求められるのは、剥き出しのセクシャリティと、それを超越する圧倒的なパワーです。


「私にできるかな。ワッツ(水中指圧)で人を癒やすことと、ステージで人を熱狂させること。その『極点』を、この大会で見つけられると思う?」


「見つけるんじゃないわ、ミサキ。あんたが作るのよ」


ドイツSPAでの「極限美活」:大会仕様の肉体改造

二人は、大会に向けてさらに過酷な調整に入りました。今回は「しなやかさ」だけでなく、鋼のような「筋密度」と、ライトに負けない「肌の質感」が求められます。


塩の洞窟ザルツグロッテでの瞑想:

ドイツのSPAにある、壁一面が岩塩で覆われた部屋。そこで二人は、呼吸器を浄化しながらイメージトレーニングを行いました。美咲は、日本の「静」の極致である「舞」の呼吸を、ストリップの激しい動きにどう組み込むかを模索します。


ハイドロセラピー(水圧療法):

強力なジェット水流で全身をマッサージし、筋肉の癒着を剥がす。激しいポール練習で青あざだらけになった足を、ドイツの最新SPA技術でケアし、最高級の泥パック(ファンゴ)で毛穴一つない絹のような肌へと仕上げていきました。


大会当日:ハンブルクの熱い夜

会場のボルテージは最高潮。各国のダンサーたちが、アクロバティックな技を繰り出します。

二人の出番。演目は、自分たちで名付けた**『ミキシング・ブラッド(混ざり合う血)』**。


ステージ中央。美咲は、和服を大胆にアレンジした真紅のシースルー衣装。エレーナは、ドイツの騎士を彷彿とさせるメタリックなボディースーツ。


音楽は、重厚なバイオリンの旋律に、心臓を抉るような重低音のビートが混ざり合うオリジナル曲。


美咲は、ポールの根本で、まるで水中にいるかのような、ゆっくりとしたワッツの動きを見せました。観客はその異質な「静寂」に一瞬で引き込まれます。そこから一転、エレーナがポールの頂点から鳥のように舞い降りると、二人は狂気を感じさせるほどの激しいトゥワークを開始しました。


「柔」の美咲が、ポールの周りを見えない水流のように泳ぎ、

「剛」のエレーナが、その水面を割るような鋭いスピンを見せる。


クライマックス。二人は一本のポールに同時に飛び乗りました。美咲がエレーナの腰を支え、エレーナが美咲を空中へと蹴り上げる。

それは、SPAでの信頼関係がなければ一歩間違えば大事故になる、命懸けの「信頼のデュエット」でした。


審査員席の沈黙と、その後の爆発

踊り終えた二人は、肩で息をしながら、寄り添うように立ちました。

審査員席には、高名な振付師や、ヨーロッパの大物プロモーターたちが並んでいます。


沈黙。


そして、一人の審査員が立ち上がり、ゆっくりと拍手を始めました。

「私は長年この業界にいるが……セラピーとエロティシズム、そして高度な身体表現がこれほど高い次元で融合したものを見たことがない。君たちは、ダンスの新しいカテゴリーを創り出した」


結果は、「最優秀芸術賞(Best Artistic Performance)」。


トロフィーを抱えた美咲とエレーナ。

バックステージに戻ると、二人は言葉もなく抱き合いました。

大学でダンスの道を諦めたあの日の涙とは違う、熱く、誇らしい涙が美咲の頬を伝いました。


「ねえ、エレーナ。明日からまた、SPAのプール掃除から始まるのよね」

「そうね。でも、私たちの筋肉には、このハンブルクの喝采が刻まれているわ」


デュッセルドルフへ戻る列車の中、窓の外に広がるドイツの平原を眺めながら、美咲は確信していました。

稼ぐために始めたこの道が、いつの間にか、自分にしか歩めない唯一無二の「正解」になっていたのだと。

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