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サークルクラッシャー本田さん?

「………なわけでね」

「なるほど、ちょっと時間をおいて熱が冷めてから集団戦闘すべき、と」

「サークルクラッシャーしたいわけじゃないんよ…私はさ」


 サブマス、ルシテアさんと内緒の面談。

 マジくんの変化に小石ちゃんがキレ気味の状態を知り、正直本人が楽しく登場する気にならない。


 どういう空気か知る前に、単純にいやだよ、そんなん。


 というわけで、顔が広いというルシテア氏の力を利用…いやちょっと助けてもらって、遊び相手の紹介をしてもらおうと言うワケだ。

 このギルドに来る下請け仕事を受けてちょっと貢献してるという雰囲気も言い訳にしたい。


 小石ちゃんに対して。


 この状況において、バイバイとあっさり逃げるのも薄情な気がするのだ。

 主にサブマスにだけとはいえ、ギルドに恩義があるのもあるし。

 と言うワケで、気が済むまでは仕事である。

 だが二人からは逃げる。

 ほとぼり冷めるまで。

 ちなみに恋愛感情についてはサブマスはよくご存じなようで、あーあれね、の空気で理解の上で便宜を図ってくれる。


「なるほど、とりあえず用件通り集めてくれる人の紹介と…ってうおでっか…」

「でかいのは別に仕事と関係ないですよね…?」

 

 しょっぱなタブーに触れようとする態度は見逃さない。


「う、うん…あるのもあるかもしれないけど」

「そっちはナシで」

「大丈夫です、大丈夫です」


 熟練の受付という雰囲気をうけるが、それでもセクハラ手前はちゃんとしてくる。

 これを利用した何かってなんだ、バーチャルなキャバクラの斡旋もしておるのかねこのギルドは!

 何が悪いのか。世界か。

 そんな妄想はさておいて…。

 とりあえず紹介してもらったのは、よくある生産系ギルドである。

 この手のゲームではなくてはならない、いわゆる生産と買取販売を請け負う、経済を行うやつらである。

 今回きたのは、服など汎用防具系を取り扱うギルドらしい。


「…と、いうことでよろしくお願いします」

「しかし、いいんですかね…上級職に延々草拾いって」

「需要のあるアイテムを知っていただく学習期間、ということでひとつ」

「そ、そういうことでしたら……まぁ」


 サブマス、ルシテアさんに連れてきてもらったまではよかったが、受付は歯切れがよくない。

 初心者だから、適当に扱ってもらって構わないのだが。

 そんなこんなで、説明を受ける。

 誰でも狩れる、安定価格の素材類。

 これらは、まとまった量であれば手間の関係でさらに需要が高く、取り合いもよく起きる。

 主にポーション類の原料である草だが、属性付与、染色、特殊効果発動条件でも使われる。

 つまり、楽に取れるからと、あらゆる生産系で使う設定にされたバグみたいな高需要アイテムなのだ。

 これを一定量、定期的に、確実に納められる実績と信頼が、あのギルドの顔の広さの一因らしい。


「……実のところ、もしかして何かの罰ゲームなんじゃないんですか?」

「罰ゲームなんてしないから!?」


 先日の裸で徘徊してたの時に言われていたことを思い出すと、さすがに笑顔ではいられなかった。

 ……知ってて言ってないよな?

 

 

 てなわけで、危険も何もない、駆け出しのたむろする平原。


 ずっと狩りしてたわけで、生産系スキルなんて触っていたはずもなく、これはこれで楽しい。

 岩の間をごそごそしたり、無双ゲーのごとく適当に敵を蹴散らして遊んだり。

 混んできたら別のところにいこう、と予定したものの、そんな杞憂すら無駄だった。

 初めての、のんびり世界を眺めて楽しむという時間。

 いいものである。


 …ただ。


 目的が違うだけで人がいないわけではないのである。

 採取中、休憩中、移動中。

 わりといつでも、範囲チャットやボイチャ会話は流れてくる。

 ………みんな苦労……してるな…。


 ノルマがきついだの、金がもっと稼ぎたいだの、イベント近いから貯めこみたいだの、人とは様々だ。

 その中で気になるのは…NPCに貢ぎたいが割と多く聞こえるのが何とも言えない。

 この世界いったい何が起きているのか。


 丘の上のいいとこで座って、そんなちょっといい感じで流れる周りの会話に耳を澄ます。

 まったりしてるようで偵察みたいなことをしている。

 ボーっとしてると、こんなゲームの中でも人間関係の窮屈さや面倒さに悩むのが当然らしく…聞くだけでむなしい。

 ゲームは楽しむものだと思うのになぁ、と。

 なんでもいいから隣の世間話に口出ししたくすらなる。



 いかん。


 これ以上この環境のままだと、やる気にかかわる。


「作業しよ」


 自分は自分でやろうと、聞き耳モードは終えてまた草刈りに。

 と、いうところでだ。

 悲鳴がした。


「このエリアで人って死ぬの!?」


 ちょっと失礼な物言いだが、感覚としてはそう。

 街に近くて驚異の少なさはゲーム中屈指ぐらいのはずだ。

 それが、ぼそりと呟いたそのあとにも数人の悲鳴がしたとなると、気になる。

 つい好奇心でそれを見つけに動くと、それこそすぐに死体がある。

 複数、それはすぐ。


「なんじゃこりゃあ…」


 思わず言いたくもなる。

 平和にはあまりにも似つかわしくない光景が、スローライフのためにあるような緑の大地に広がっていた。

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