決着。
「本名そのまま入れた子供と言われるのが恥ずかしくって、名前はずっと出さないようにしてきた」
「それで別の名前を名乗って…それを広めるようにしてきたってこと?」
「作り直しも考えたけど、考えてる間にだらだら続けて、この装備を取ってしまったから」
「そりゃ、確かにキャラ消せたりしないわね」
まぁ本名と勘違いは嫌なのわかるけど、それ以前に話し方が、そう思うと結構幼いようにも感じるなぁ。
ラウーゼ君…そこから強くなってったのか。
いや、オサナイくんと呼ぶべきなのかどうなのか。
「それで、ラウーゼって名前を広めたくて名前隠して出歩いてた…のでいいのかな?」
「そうだよ」
「行く先々で、自分の名前を言って回ってた…?」
「いや、あいつはそういう名前だよと、言ってもらう人が必要だったよ」
小石ちゃんのような…か。
『小石が実際のその役目でセット運用だったのが真実だねぇ』
チカちゃん!?
『ふうむ、10秒くらいラグあるんだね、ベルテの配信から見て様子は確認してたんだけど』
『いい御身分です事』
まぁ、解説くれること自体は悪くはないから聞いてやろう。
でも、えらいこと言われたぞ。
後、麻痺も強制で叩きこまれたのか、キャラが倒れちゃった。
ラウーゼ…いやオサナイ君の様子見れないぞ。
『小石はオサナイ君の実の姉で、役割で必要だからで始めたクチなんだよ』
『そうなるとさ、いつもの…多いなぁ、オルアラの人たちが』
『そうじゃないのがイレギュラーなんだよ、あのギルドはそもそもオルアラが悪役じゃない存在として遊ぶためのダミーギルドなんだから』
『ちょっと!?』
何その暴露は!?
ここに来て言うこと!?
『もっと正確に言うと、小石が好きな人を繋ぎ止めとくために一つだけ言ったわがままのための愛の巣になる予定だったギルド…に人数欲しいから頭数でオルアラ面子が乗った後、そうなった』
『だから例外が小石ちゃんとキミ関連だけで、よく拾ってこられる人間は早めに巣立たされてたってコト!? 私が来る前までは』
『ベルテは割とウマが合ったのと私の要望も入ってたけどね、ベルテ自身が大人数のところで迷惑かけるの避けたいって相談してきたから』
そこはまぁ、なるほど。
『あとは私がゆめっち追い出した後、最悪の流れに行きそうなら即拾ってって裏からケア頼んだところから始まった現状だし今更よ』
『…なんもかんも、手のひらの上…って話かよこれ…』
『ちなみにオージンさんとルシテアさんは、シテンとハクヤクのサブ垢な』
ついさっきこの手でぶち殺したんですけど。
『…ずっと、あの二人がパーティでなんか態度変わったから追い出されたと思ってたんですけど』
『逆、逆。 牧場行きになりそうと心配したり、リアルなご友人をうちに置いて悪ぶらせるのいいと思ってるのかとか、何とかならないんですかねとか、かなり複雑な気持ちを私に言ってきて態度にも出てたから、私が手早く手を切らせる手段を取ったって流れよ』
重ねて、その恩人を私がこの手でぶち殺したんですけど。
『…もう何もかもぶち壊してくれたな…騙されっぱなしジャン私』
情緒めちゃくちゃだよ…。
ずっとオルアラに囲われてたんじゃん。
楽しかったけどさ。
一方、そう思うと、一つ疑問がある。
『ケイさんが二重スパイがどうこう、すごく内部を疑ってた節もあったのはじゃあなんなのさ』
『あれは中身のテーシアが神経質なんだよ、オサナイのためになると思って仲間内の計画に口は出さないけどしょっちゅう睨みきかせに来る愛情の表れってやつ』
ある意味、生粋の悪役なんてそうそういないって話で光が見えた気は…いや、しないような…ちょっとするような。
「…死んだかい?」
余裕で終わったその姿を見て、もう毒が効きすぎくらいの時間がたってるのを改めて知る。
「「ごめんな」」
何の偶然か、私とラウーゼ君が同時に言った。
そして全力で切り付ける。
ポーション飲みながらザクザク、余裕見せてるのを切り刻むのはよくない見た目だが、毒で安心しきるのが悪い。
すまんが、そういうことだ。
「なんで!?」
「修正入ったのかこのフィールドの限定ルールなのか、体力1で止まって効果消えたよ、その毒」
ずっとラウーゼしてたってことは、その効果ずっと使ってなかったでしょ。
修正されたかもな。
私のカウンターも、明日にはそうなるさ。
「ここで死ぬわけにはいかないから、四段階目の手加減で悪いね! 輝けゲイズ・オブ・ロードス!」
「そんなものに!?」
にしたって。
画面から目をそらしていたのか何なのか…。
そのまま、あっけなく彼は倒れてしまった。
そんな馬鹿な。
「…もしかしてだけど、負けようとしてたとか、そういうのじゃないよね…?」
返事はないだろうけど、問うてみる。
これで終わるっていうと、なかなかむなしいな…。
「どうすりゃいいんだよ、これ…空気感が、さすがに」
ケダモノのほう行ってみるが、何も変わりはしない。
「突っ込みもボケもいないと、間が持たねえし、死にたくなるぜえ」
『それはいけないニャ!』
「まぁ、いけないのはわかっとるよ」
ほぼ独り言になってるが。
『どうせなら、最後の勝負まで連れてってくんないかニャ↑~…生中継でみんなが見れるニャよぉ』
「…ま、みんなの見世物になるってことが悪いわけではないか」
死体をお姫様抱っこで抱えて、残りの二人を探すことになっていた。
趣味が極めて良くない。
…でもわかるよ、聞こえてないだけで、ケダモノがこのシーンでめちゃくちゃにテンション上げてるのが。
聞かなくても浮かぶもん。
そのためにむしろやらせる口実なんじゃねえのか?
そう思いながらも行く当てなく、ちょっとウロつこうとしたあたり…。
『本田さん』
『誰って…ああ、ルクスちゃんか』
不意な、関係ない形で来る耳打ちにちょっとびくっとした。
思えば、そんなに対面では話してなかったな。
ケダモノの後輩、それで同じ事務所で多分声優なんだろうルクスちゃん。
『わたし、先輩のこと凄い好きなの、知っておられます?』
『……信奉者みたいなこと言われてた評判はキャラちゃんから』
『好きなんです!それなのに本田さんこんなに最高のシチュでも先輩を喜ばせること一つしないでそのままやり過ごそうとしてません!?許せませんよさすがに!どういうレベルの損失だと思うんです!先輩の才能と偉大さを知ってるんですか!先輩を喜ばせて大きなステージに立つ勇気を与えてあげることの大切さっていうものを本田さんがご存じないなんて、そんな方だと思ってませんでした!大それた子かもしれませんが、私のしてあげたいことを少しでも本田さんはやってくれると思ってそれで凄くお二人が大きくなれると思っていたから応援もできたのですが、それにしても今を見るとですね、本当に私は…!』
今になってなんか爆弾投げ込まれたが!?
想像以上に強火だった。
ブロックはしないが、どう答えたらいいかわかんねえよ。
しかも、ずーっと続いてるんだ、何分も。
…かれこれ十分は超えた。
二十分くらいかもしれん。
この休みなしがずっと続きながら、ケダモノをお姫様抱っこして荒野をさまよっている。
……なんだよこのシチュ。
たまにくるケダモノの耳打ちも、聞き取れるときは生返事するけど、かき消されるのもあるだろう。
すごいな、君の後輩は。
と。
あるタイミングで急に止まった。
たぶんだけど、私のマイクあたりからこのパワータイプルクスが聞こえたかなんかしたな?
雰囲気だけど、なんか確信がある。
当人に叱られたろ、これ。
何もないようにまた、ケダモノがチラチラ声をかけてきてるが、少しすまなそうな感じもする。
何事もなかったようにするけど。
そんなとき。
「減ったぞ…」
『減ったニャね』
残り二人。
つまり私と、あと一人のタイマン確定。
会うことがあったら、そいつとどちらかが勝者だ。
「もーさぁ、どうせなら移動しないで待っててよね!配信付けないと見つけられなかったよお?」
「…その声…」
ラストの相手が来た。
知ってるやつである。
「んじゃ、ケダモノはここで見てるんだよ」
ぽい。
「よりによって最後が…あんたかい」
「本田さん、こうなってくれて本当にうれしいよ、私は」
今回は、運であって筋書きじゃないんだよな?
いろいろ、今迄からすると、疑っちゃうよ?
「クララボ学園の、守る人に紛れて何とか生きてた本田さん、それと、残ってた適当なのはだいたい始末しながら、私と小石だけは残して頑張ったオサナイ…」
「……てことは、残った四人の中で途中で消えたの小石ちゃんか…それをやったの?」
「ちゃんと、本田さんによろしくって言ってたよ?」
「結局、おおよそ予定通りって言われそうで嫌だねぇ」
「…ほんと、呼んでよかったよ」
「わたしも、このゲームに居られてよかったとは思ってる」
誘ってくれてありがとう、と言うべきなんだけど、それはこのタイミングでは言ってやらん。
「街のあの襲撃イベントでさ、何も迷わず、特に中身がいるわけでもない商店街の人を見て、守るよって言ってくれたの、私にとって最高にうれしかったんだ」
「……き、急に、なんか動揺誘ってくるじゃない」
「置きっぱなしのキャラや街の他人たちってさ、あんまり気に留めない人を多く見すぎたから、あの一言で、本当に呼んでよかったって思ったんだ、これマジでさ」
「…つ、つられて喜んだりしないぞっ!」
「でもまぁ、私は立場では完全に敵だから、手加減はしないよ『本田さん』」
「…私だって、背負わされたものと頼ってきてた人の気持ちがあるから…全力だよ、『マリア』さん」
そして、両方真正面から切りかかる。
「約束したこと、かなったなあ!」
「したかな?」
「いったよ、この世界で、このゲームで一番になって、みんなの視線の中心に行こうぜって」
「…少し言われた気もするかも」
「私はちゃんとしたいこと叶えたよ!『本田さん』は、何か叶ったかい?」
「特にないかもしれないけど…でもさ」
「なになに?」
「まだ、見てないところも知らないものも山ほどあるから、いろんな人と関わりながら回りつくしてみたいよ、みんなで!」
「…かなうといいな!」
「…そうだよね!」
いつの間にか死にそうになってる。
しかも、こちらの攻撃は一つも当たってないっぽい?
多分、回避専門のアサシンに…。
「なんで服脱いだ!?」
「属性防御反転のオーブ山ほどつけて、こっちのカチカチの防御を逆手に取ってんだろ、そっちの装備!」
「このゲーム理解してきてるじゃん、えらいえらい」
なら、こっちのほうがダメージ低いよ絶対。
「じゃあ改めて……!」
「先手貰いー!」
受けた。
そして私は…。




