負け確?
『まいったまいった、うちが戦闘メインの集団でないのと傭兵が前にぐんぐん行ってるのを見事に狙われたねえ』
『…それにしたって、そんなにすぐ入り込まれるくらい全員ガバってことは…』
『三人だけだったのと、さらにスキルの透明化か何かを使われて抜けられたんだろうね…荒らして指示系統片付けてすぐ帰ったよ…』
死亡でもある程度、耳打ち会話はできるんで絶望することじゃないんだが、移動もできない様子も見れないは辛い。
それと、確実に数の優位がもうなくなったと見ていいだろう。
そして、ミカさんが用意していた、順次で戦闘の激しいところにポーション持ってく回復班たち。
それらがやられたことは、まず確定と思われる。
太刀さんが切り進んで、その間に横をさらっと抜けていったのか?
「ケダモノ、本陣やられた!一度見に行く!」
「お付き合いしますニャ↑~!」
一路、進路を変えて本陣に。
たどり着くと…。
そりゃそうだ。
復活はフィールドのルールでできないから、死体しかねえ。
残ってたら戦うかもとも思ったが、それなら逃走経路の予想をミカさんにしてもらって待ち受けるほうが…はるかによかったな…。
「ぽよぽよーーお!!」
「姫!?」
生存者いるのか。
「よく生きてたね…ミカさんだけが目的だったりしたのかな…?」
「………チカだった…」
「そういうことか」
予感はちょっとあった。
うちらを別陣営に固めて、忙しいからこっちにいても構えないと言ってる時点で、何か仕込みがあるから連れていけない行動をする予告だった、ということだ。
「つまり、ノネも生きてる可能性ある?」
「後ろにいますけど」
「っわ!?」
いるなら最初から言ってほしいものだ。
「耳打ちで、こっちのほうは追いかけてまで斬らないからと誘導されまして」
「私の位置とか、聞かれてなかった?」
「それやったらただのスパイじゃないですか…?」
「さすがに仲良しゲームの中でやるのはルール違反か」
情け容赦ない襲撃しながら何か、ちょこちょこ礼儀や仁義を感じるのはなんなのか。
見ると、意外に生きてるのはいる。
ポーション抱えている人たちの略奪も、ほぼないようだ。
いや、三人だから奪おうとしたところで持ちきれないだけか。
死んだ救護班から、ありがたく私はポーションぶんどっていくけどな。
『動けないで情報纏めてもいいけど、さすがにずっと死んだ意味もないのを続けるのもなんだから、控えめにしとくかねえ』
『気負わないほうがいいですよマジで』
『………あと、すまないね……これはもう…』
『私は負けてないですらね!』
『そうだけど…』
『ここまでやって諦めるようなこと、他に言っちゃさすがに私だって恨み言言いますから』
『…そうだね…すまん』
全回復のポーション持ってる子を探してごそごそしながら、ミカさんともできる限りは話しておく。
引継ぎみたいなものはなさそうだ。
ともかく、内心負け確かなとは思えど、楽しみつくすと言ったのは自分じゃねーか。
私からも、ミカさんからも「もう駄目だぁ」なんて言って気分を削いでくれてたまるものか。
臨機応変にはなるが、先陣のほうに早めに合流しよう。
「あ、待ってください、私もご一緒します」
「えっと……あれ、いつものギルドの人だっけ」
「ケイです、一応回復はいたほうがよろしいと思いまして」
「回復はまぁ、居ればいるだけいいけど…あれ、ケダモノは?」
「いるニャよお↑~! キャラとルクスと、あとみんな…おっと……の確認してるニャ」
ほとんど話したことない人なんで、どうも間が気になるのでケダモノの話に逃げた。
意外にあいつに頼ってるな…。
「そういえばそっちも、同行者いたっけね…」
「いやあ、スケジュールがあるから、このタイミングで実戦は流石に無理でしたニャねぇ」
「使い倒してやろうとは思ってないから、まったりしとこうぜ…期待してないとまでは言わんから」
まぁ社会人に廃人並みのレベル上げしろとは言えないし、ルクスとキャラちゃんに期待しはしない。
ケダモノもたまに無言になったり、何か別の人の話を絡めたりしている素振りはあるが…。
配信中で手はずの整えとか、視聴者だけに伝えたいとかあるのかもしれない。
そこは突っ込むべきではないのだろうな。
「そうはいっても、見せ場の一つくらいは欲しいもんニャよ↑~、目立ってなんぼの世界で生きてるニャ↑」
「…お前の場合は明らかに間違った、というか…かわいいの基準にいささか見解の相違を感じる…」
「本田さんもそう思いますかニャ…?」
「世間一般からはかなりずれてると思ますニャ」
「…興味深いニャ↑……」
「いや、まじめに考える問題ではない」
「いやいや、突き詰めれば、妻にかわいいって言ってもらえる重要情報じゃないかって…」
「それは手遅れだからあきらめろ」
「え↑~……」
欲張りなケダモノだよ、まったく。
「そこで寝ているルクスからも、あんまりだとご意見をいただいておりますニャ」
「……月曜に燃えるゴミの日あるから、ちゃんとそういう意見は丸めて捨てておくように言っときなさい」
「…だそうですニャ」
ま、そのうち私の態度にも慣れるだろう、たぶん。
「……でも、私は、のうのうと生き残って地獄を感じております…」
キャラちゃんだ。
あの時、後のことが少し心配でケア対応にと、うっかり連絡先伝えてるから、リアルでわずかに交流はあるんだよな、こっちは。
「キャラちゃん、私やケダモノといると、最前線に必ず放り込まれるけど、同行する?」
「…途中までなら…ここは…もはやこの世の終わりですから…居心地はいい気はしますけど」
「ま、いいかぁ」
クラスメイト大体勢ぞろい、という状況にはなった。
ケダモノ、うちら三人、キャラ、ケイさんと六人態勢か。
全員、本当にオルアラと戦わせる気はないが、本陣が壊れてるなら安全なとこを新しく探す必要はある。
ついでだから、残ってる人も一気に連れていくか。
陣地が間延びして先陣から切り離されてる今の形じゃ、横の漁夫狙いどもに持ってる回復アイテムごと掻っ攫われるかもしれない。
…そうは思っても、自分に自信は、はっきり言ってない。
ので、希望者だけってことで声かけ。
結果百人前後はいるだろう、大移動にあいなった。
多少戦える人間と伝令に使える誰かを、主に右と後ろに配置。
ま、いないよりはマシだろうと。
『と、言うことで持ってくよ、死体以外』
あと、ミカさんに一応、余計なことしてないか確認だけする。
自分の判断を怪しみすぎるが。
『本田さんも、状況観察とかできるもんなんだねえ』
『多分、けなしてますよね、それ…』
『いやいや、私が生きてたらそうするだろうと感心しているところだよ』
『でも、なんで何の説明もしてないのに生き残りの移動についてさらっと言えたんですか』
『そりゃ、ベルテちゃーんの配信見ながらゲームしてるしねえ』
………あ!
そうか、こいつの配信で私の行動なんて、そもそも筒抜けじゃねえか。
そりゃ奇襲だって成功するし、近くに狙ったやつも来ないわけだ。
それと……そうわかると、私が本陣にいないのを見せびらかしたから、こんなことやられたのかもと、ちょっと後ろめたいな…。
加えると、実はあともう一つ、それがあるならば懸念事項がある。
今のこの行動、見てたら誰が狙っても別におかしくないわ。
非戦闘員の移動みてえなもんだもん。
『……あのぉ、右から魔法使いの群れのようなものが見えますが、もう…ダメですかね私…』
『耳打ちまでしっかりキャラ作ってんじゃねえ!報告は的確に!』
『すみませぇん…』
そりゃそうさ。
挟み撃ちの構えなのか、私にも見える。
前からちょっと、ちょっかい出してやろうかという集団が。
しかたない、やるか。
「ケダモノとノネ、あと姫も右いって食い止めてもらっていいかな」
「合点ニャ!」
「はいはーい」
「ここの相手は、おひとりで?」
「あいつら、ちょっと知ってるやつでね」
「…では、おまかせします」
離れていくみんな。
そして、私が歩いて挑んでいく相手。
「きみら、状況わかっているんだろうか?」
「嘘つきに何言われたって何も信じるわけないだろ!」
「そうだよなあ!」
「へぇ…嘘って、何言ったんだろうか、私」
動揺はしている。
彼らの顔は、正直見てるだけでちょっと痛い。
心の奥側が、なんか、つらくなる。
「同じなんて言って、そんなもの来てふんぞり返りやがって!」
「……そんなに、そんなに違うかな?」
ギルド名は、牧場経営。
そう、初心者ポーションを狩るために集められた彼ら。
私にとっては、つまり、心の中で私たちと呼んでしまう人たち。
これが、彼らの今の姿だ。




