武士道とブレード
「……どうもお久しぶりでございまして…」
「そうであるなぁ!」
言うこと考えてる間に切りつけないでくれます!?
時間稼ぎの間に整えようと、盾に持ち替えてオートガードの確率上げてなきゃ今ので死んでるよ!
「生きているのか」
「先週までの私なら職業ボーナスなくて死んでましたよ、相変わらず容赦ってもんがない…」
たった一回の斬撃で回復がぶ飲みである。
ゼロテーブルの産物にしてサムライ専用の反則クラスの装備、ムラマジブレード。
かつてのイベント上位配布の商品だったらしいジンバオリ(タイヨーオーラ)とかいう、たしかワールドで五人だけ持ってる装備。
カッコイイより派手で狂気を感じさせる、誰が見ても彼とわかる見た目。
昔は何だっけ…巣鴨サンダーバイザーだかいう、対戦ゲームの有名人だったと聞く。
やってたゲームが廃れてしばらく落ち着いてたらしいけど。
「どうした、お返しが来ないのであるなあ」
「うちの嫁をいいようにするニャんてぇ…!」
「だめだよ!この人に無策で殴りかかると離れてたって死ぬから待ってな!」
「気の抜けたことを言われるとつまらんのだが、逃げないのに敬意を払っていいものを見せてやりたいものであるな」
「スキル見せつけながら言われると、心底ビビりますなぁ」
そんな彼の得意とするスキル、見切り。
7/150秒だったか、相手の攻撃のタイミングにそのスキルの狭すぎるスキルを合わせて発動すると、攻撃は何でも受けることなくノーダメにできるらしい。
いくらネトゲだって、そんな細かい通信を全体でくまなくやってるはずはないはずで、適当なラグやワールド全体を動かし続ける通信環境などを加味すると、現実的には安定は不可能とどこでも判定されている。
それを、やりきって使いこなしているただ一人のプレイヤー。
ぶっちぎりの怪物である。
さすがに全方位から魔法が降り注ぐ集団戦では効果がないはずなので、乱戦に紛れて死んでいてほしかった…のだが。
それを避けていた偶然なのか、私がいるらしいという噂に即時飛んできたのだろうか。
どっちもありそうなんだよな。
ちなみに、見切りからのダメージ増加しての連撃は、今の私でもたぶんムラマジブレードの攻撃力から言って即死。
なので、通常の攻撃判定が当たらないように距離を保ちながら、デバフどれだけかかるかスキル撒くだけの存在になっている。
いいのかなぁ…仮にも目立つ大将とか主役が得意技攻撃ダウン技だけって。
「使ってもらえないのであるか?伝説の剣とやらは」
「あんなのこの場で使ったら自滅しかねえんだよお!」
「ほう、うちの大将が持っているものとはだいぶ違うようであるなぁ」
…そういえば、そういう情報も出さないほうがいいんだったか。
失敗し続けだ。
これじゃあ全回復ポーションこんな段階で飲み切っちまうよお!
内心ずっと泣き言を言っておりますが、これでも勝つ機会はずっと狙っちゃいる。
効くデバフをしっかり伝達して有効な攻撃できる誰かを手配してもらえば…数で何とか…!
自力で勝つ気ないな!自分で言うの何だけど!
移動低下は入ってるようなんだけど…見切りの後の居合で距離なんて無視してくるからな、確かサムライ。
じゃあ逃げるしかないのか…?
「はぁい、お待たせお待たせ、そろそろヒーロー役が欲しくないかい皆さん!」
……と。
思考どん詰まりに響く軽快な声。
「来たんかヒーロー!」
「威勢がいい以上の何かはあるかな?」
「応援がまず二人になったけど、まぁ、やってみるよ」
シャウベルさんたちだ。
腕は私よりよほど確かな人たち。
でも、ふたり?
「ねーさんは急用?」
「範囲攻撃では見栄えいいの持ってるからねぇ、うちのねーさんは」
「オルアラの先陣の脅しにちょうどいいから、姿見せて棒立ちしてもらってるのよ」
「…オルアラのメインメンバーの前で言っていいこと?」
「だってオルアラと戦ってるからには知ってないとおかしいしな」
「そういえばそうか」
「…話は、おわったか?」
「太刀さん、それなりに優しいよね」
会話を待ってくれる余裕はあるらしい。
「じゃあ、あとは任せてもらおうか」
「いやいや!?」
二人だけでやるつもりじゃあるまいな?
「どうしても試したいことがあって…ね」
飛空さんが言うなら、そのほうがいいんだろうか。
「じゃあ…!」
シャウベルさんがすんなりと切り込む。
当然受ける……が。
「なっ!?」
飛空さんが仕掛けた罠がある。
爆発罠っぽいが、設置罠を踏んだのは、たぶんシャウベル。
PKエリアで敵味方判定が働いてないのを利用している。
攻撃する構えではなく罠の爆発でもろともダメージを与えることで、タイミングを見計らって見切りをするのと全く違うタイミング、距離、範囲で別の攻撃判定を重ねたり発生させたりしている。
しかも見切りで取られても、向きを合わせないところで罠を踏んだりして、相手の攻撃範囲内には居ないでスカった隙に攻撃を叩きこむ。
そこに、さらに弓を合わせることも絡め、爆発でダメージを入れることも、目くらましをして見切りのタイミングを外させることも、複合で絡めて二人が太刀さんを削り続ける。
飛空さんはとにかく忙しいだろうが、事前に埋まってる罠の打ち合わせもしているのだろう。
新しく置いている罠も加え、すごいリズミカルに機能している。
本当に、この二人、強いな。
「いい案ではあるが、目くらましなど想定していないと思うのは甘い!」
「あと、馬鹿正直に二人だけに任せて私が見てられると思うのも甘い!」
目くらましに乗じて、たまーに私が防御増加させて突っ込む。
ガードスキルで足を止めて罠設置の時間を稼いだり、連撃の時間中に見切りを同時発動できないはずと、わざとオートカウンター発動を期待して切りかかりに来た太刀さんを迎え撃つ。
「こっちにも反撃技はあるわけよ!」
「…止められたのであるか!?」
オートです。
そんなすげえ腕はない私の、ガードからの相手のガード崩し、オートガードと同時のオートカウンターという流れ。
そこから…。
「ガードが下げられた…のであるか?」
マジの奥の手出しちまった。
だがこれで、ある程度削ってるはずのところを、防御力下げておいて瞬間的に残り体力ぶんのダメージを入れられたら…。
勝てる! はず!
「やっちまって!」
「おう!」
すかさずシャウベルさんが叩き込む。
「…が、見切りが効かなくなったわけではないが!」
連撃を耐えきって、隙に一つ見切りを決めて、無敵の状態で太刀さんも切り返す。
「そこにかかりっきりなら!」
シャウベルさんたちの攻撃できている時間が長いのを見て、ここぞと、貧乏貴族も今まで狙っていた一撃をぶちこもうとする。
しかし、無敵時間なのを知らないので…。
「甘い甘い!!すべて甘い!」
イアイ。
遠かろうと、踏み込んで一閃を叩き込む。
カウンターでコレを当てられるから、おとなしくって言ったのに…。
ただし。
そのディレイと、少しの硬直がある間に無敵時間が消えているのを、私も飛空さんも、ケダモノも気が付いている。
「「「お互いさま!!」」」
一斉に一番ダメージ高いものを叩き込む。
「やったか!?」
「そんなはずが!」
覚悟なのか。
下がるより、回復より優先して、全員切り捨てる自信があるのか周囲にスキルで切りかかる太刀。
「いや、死んでもらう!」
「…やるものである…!」
私のフラグみたいな発言から。
ギリギリから放ったろう一撃と、シャウベルの横からの一撃が同時にぶつかる。
ぶつかったように…見えた。
「相打ち…?」
シャウベルさんと太刀さんが、判定的に同時だったのだろうか…どちらも倒れた。
奥を見ると、イアイの一撃で貧乏貴族も死んでいる。
強いのは仕留めたが、割ときっちり犠牲は出ちゃったな…。
「…んじゃ、本田さんは早く本陣に戻りなね」
「飛空…さんは?」
「わたしはここで、ちょっと、しちゃと思い出話でもしてるよ……あと、こっちからくる漁夫はちゃんと止めるから」
「………それで、いいの?」
「うん」
実質ギブアップなのは疑いようもないが、言わなかった。
飛空さんのことだ、死ぬまで一人でちゃんと、ここを通ろうとするやつは止めるのだろう。
並んで倒れる人がいるところで。
「…じゃ、そうするよ……無理しないでね」
「するからここにいるんだよ、気にしないでね」
「私も、頑張るよ…」
そのまま、ケダモノだけがついてくる遊撃隊となって、ここから離れる。
少し寂しい気はするが…。
『本田さん、アテクシ役に立てました?』
おや。
『システム上で耳打ちはできるままなのか…亡霊みたいだなオマエは』
『これでも頑張ったんです!』
『陰で実は、結構やってたろ』
『本田さんが来なくなるの、私のせいじゃってちょっと…思ってしまったから…』
なんか、口調が違うなぁ?
内心みたいの漏れてる?
『なんの勘違いしてんのかわからんけど』
『だって、自警団から初心者ギルドの事情に詳しい人で名前出したすぐあとだったりもしたから……様子もおかしかったようですし』
『あれ紹介したってお前かよ!!』
『は、はい、ごめんなさい!』
たしかに、初心者ポーション牧場のやつは精神にかなり来たんだよな…やめるかって気分になった原因とは違うが。
『知らんけど、自分が下みたいな態度すんのやめろ』
『だって…それは本田さんが、自分の命の代金分はこき使ってやるって前から言って…』
そうだったな。
『じゃあ、今から対等でいいから、それやめろ!』
そんなに気にするタイプと思ってなかったぞ。
『じゃあ、対等に…本田さん勝ってね!アテクシ、どうしても本田さんの作る国が見たい…!』
『万一でうまくいっても、島しか作れねえよ!』
『……あ』
『でも、言われたからには、もうちょっとしたら、きっといいもの見せてやるよ』
『はい!』
無茶な約束をまた、してしまった。
「なーなーワイフの本田さん」
「だからいつ結婚したのって!」
また雰囲気ぶち壊しだよ!
「おかしくないニャ?この、うちの連合の真ん中突き抜ける移動でほとんど人と会わないニャ…」
「……あれ?」
言われると。
すかさずミカさんに聞きに行く。
『ミカさん、そっちどうなってる?』
『あの、本田さんすまんね……たったいま、本陣壊滅した』
………はあ?




