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JKたちは『AHO』なことをしています  作者: 畑楽 繰間


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演説

 なんて地獄を引き当てたものか。

 何百人いるかって、この人間のど真ん中に立って。

 しかも、ケダモノ含めて何人か、それ以外のネット中継ありですってよ奥さん。


 今度ばかりは真剣に恨むぜ、ミカさん。

 もうこうなったら、ぶち壊されても文句言うなよ。

 そう、決起集会の進行中に心を決めた。


 何なら全員追い出してやる。


「それでは最後に、うちのユメージから激励をいただくねえ」


 くそが。

 とは流石に言えないが、逃げないで律義に壇上に上がるのがまず、私の弱さですよねえ。


「……集まってくださった皆さんには…本当に盛り上がっていただいて…本日も…」


 ヤバイ、ちょっと声が震えてる気がする。

 ダメだ。

 切りかえて、設定と出力をちょっと弄る。


「はーやめやめ、こういうのやっぱりだめ、向かないわ!」


 瞬間的に、すごい周囲がざわめく。

 わたしが、会話モードを音声の人工変換していた今までのモードじゃなくして声が変わったせいだ。

 女なの?誰?これマジで本人?など、いろいろ聞こえる。

 包み隠さずマイク垂れ流しは、ケダモノがそれでこっちが少し面食らったくらいには珍しいし、普通やらない。





「いきなりで悪いけどね、この場に来てもらったみんなで、正義とか、悪に打ち勝つなんて義務感とか責任でやってるのは、正直帰ってもらっていい!」

「本田!?」


 ミカさんが近くにいるので動揺が聞こえるが、知らん。


「わたしは正義なんて知ったことじゃないし、最後にみんな得したって思える行動して楽しい終わりができると確信してやるならウソだって騙しだって悪いと思わないくらいには歪んでる!」


 ぶちまけていいと悪いもあるだろうけど、私だって我慢というものの限界も堪忍袋もある。


「悪いことしてる奴の言い分だってわかる、自分だって身内を一番にしたいからちょっと損してもらう人がいるのは仕方ないなと思ったりするもんさ」


 ざわざわしているが、これで帰るってひと、意外といないんだな…。


「だから、義務感だけで死んでもいいってのはちょっと私にはわからないし、空しいんじゃないって思うだけだから、それを先に言っておくし、そこを気に入った人だけいてほしいんだけど、いいよね?」


 静かだ。

 返事も退場も、反応もない。


「私はね、そんなのはいらなくて、ゲームしてるんだって、ゲームって楽しくやって日ごろの色々発散するもんでしょうって思ってる!」


 これは、私の心情みたいなもんである。

 譲れはしない部分。


「だから楽しむ人たちと一緒に居たいし居てほしい!このゲームやって日は浅いけど本当に楽しいって心から言えるしさ!」


 あー、緊張して何言ってんだか。


 しかし今更引き返して逃げることもできぬ。

 なんでもいいから、もう頭の中を垂れ流そう…。




「いろんな人たちのいろんな考えを聞いて話して、初心者してた時に助けてくれたりするのも、されても、あとでするのも凄い楽しかった…後からそんな人らを見てるのだって好きだったから、それをみんなでそうだと言いたい」

「……そうでしたね」


 誰かが、どこかでそういった。

 きっと、二人並んで微笑んでるギルマスくらいの立場の誰かが。


「それができる場所を、もっと増やせればいいし、私はそれを見る場所がもっとあればもっと楽しいことができると思ってる、それができると思って一応ここにはいるけどさあ!」

「あ、いつもの本田さん」


 誰かがそう言って笑った。

 たぶん態度が人によってころころ変わりそうな誰か。


「楽しいってわがままで、それはつまり自分が一番楽しいのが最高で、それと同じ考えの人間がいればいいなって、その程度しか結局考えてないんだよ」

「ぽよぽよは、多くの人の前でそれ、言いたいの?」


 誰かが不思議そうに言う。

 多分見るたびに惚れ直しそうな可愛い声の誰か。


「だから責任とか要らなくて、みんな楽しめることができればいいくらいしか、私はこの先も思わないと思う!」

「うちの嫁、これだから惚れてられるニャねえ」


 誰かがそうして欲しくもないのに誇らしげに言う。

 きっと小さな毛むくじゃらの誰か。


「そんな奴らだけで集まりゃ、それで私は満足はできるよ!同じようにみんなで笑えることだけ優先して、たまには初心者の案内したり、金に困ったのをちょっと悪口言いながら手助けしてやったりさぁ」

「あら、好きでやってましたのねぇ、アテクシを助けるのも」


 誰かが驚く。

 ちょっと仲良くなったけど言動を聞くと意地悪したくなる誰か。



「そんなのに共感できそうなやつらなら、仲良くなれそうだし一緒に笑えるはずだって思うのは絶対譲らねえ!」

「…それ、正義ではないですが、言ってるのは仁義とかの…義の精神だと思いますよユメージさん」


 誰かが輝いた目を向ける。

 きっと正義のことしか考えてないような真っすぐな誰か。


「そうでもない人に見放されるのはいい!でも、それをいいと思って一緒にくるやつがいたら、全員が全員、参加してほんとによかった、楽しかったと全員、絶対思わせてやる!」

「…無理でしょうけど、結構それ、殺し文句じゃない?」

「自分に惚れさせてやる宣言みたいだなぁ」


 誰かが楽しんでいる。

 きっと三人組で仲良く肩を並べて眺めている誰かたち。


「もう喋るのも疲れたわ…なわけで、言葉じゃどうでもいいんだ、楽しけりゃいいって私の考えだけ覚えて帰ってください」

「いい盛り上げじゃないかねえ」


 そして誰かが満足した。

 いろいろな人を巻き込むのがうまい誰か。


「……んじゃ、これだけ言っても残ったやつらは私くらいハッピー優先バカだろう」


 多少帰ったかな?

 でもそれでいいよなぁ。

 担ぎ上げたやつらが悪いって、自分で後悔できるだろうさ。


「みんな一緒に……『遊び』にいくぞ!」


 思えば、ケダモノとかが中継していたのに生声サービスは不注意が過ぎた。

 あと、この場以外にも人がいるという点を全く考えていなかった。

 それを抜いたとしても、思ったより雰囲気って怖い…なにも中身聞いてなかったのかこいつら。

 そんなくらいに、何でか、けっこう不評じゃなかったみたいだ。

 証拠に、壇上からミカさんに引きずり降ろされなかった。

 そしてなんでか、中央に通る道を、すすっとみんなが作ってる。

 聖書のネタでもする仕込み…誰かした?

 罵られる大声があるわけでもなく、何か叫ばれるわけでもなく、なのでその道を促されて通っていく流れになっちゃいたが…。


 煮え切らない。

 私としては不調というか、不思議というか、不満だった。


「正義って言っときゃ楽なのに、自分の考えと自分のカリスマだけを看板にしてすべて責任負うってイバラの道を宣言したようなもんなんだよ本田さん……私は助けたくなるけど、わかっているのかねえ……」


 後ろの方でそんなことを言う人がいたようなのだが、全く聞こえはしなかった。


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