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JKたちは『AHO』なことをしています  作者: 畑楽 繰間


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傍から見ると痴話喧嘩

 即死。

 付与ステータスの類の特殊能力である。

 毒や麻痺と同じ顔してその場ですぐ死ぬ。

 体力いかんにかかわらず。

 とにかく、とても嫌われる能力である。


「ガスの塊になっても動くの、これどうなってんのお!?」

「ダメージ叩き込むペースがおかしいんで、2%ごとの定期的即死ブレスが数秒ごとに吐かれてんだよ!」


 ゾンビキメラとかいう、この敵。

 要は近寄ったらダメな敵で、もともとの場所では壁に引っ掛けてハメができるらしい。

 それが定番で広まったせいで、アプデのたびにそれを克服する競争のような行為が行われていたのだとか。

 当初からは遠距離の光線とHPの大幅増加。

 初期は体力半分からの10%経るごとに一方向即死ブレスだったのが全方位2%に変更。

 さらにブレス中のディレイや停止もなくなった…。


 …で、今の状況は。

 ダメージ量はその%をすぐ超える火力があるので止まらないブレスを吐き、引っかける場所はなく、近寄ったら死ぬので盾で足止めする人もいない。

 そこそこのスピードで動くので遠距離攻撃班も続々犠牲になっており、その中で動いて攻撃しなおせるガンナーがずっと減らし続けるものだからガス玉の移動即死が止まらない。

 …でも、出来る限り早く終わらせたいなら早く倒してしまいたいのは当然なので、強くは言えない。

 早かろうが遅かろうが単純計算50回ブレスは吐くのだ。


「体力50切ったら強制回復するからね、そいつ!」

「馬鹿じゃねーのか設定!!」


 それ以上でした。


 ラウーゼ君がターゲットになったっぽいときに街頭や街路樹に引っ掛けようと試みる動きはした気がする。

 だが、そもそもひとりだけが攻撃してるわけではないので、他にターゲットが移ると無意味だし、ラウーゼ君だけではすぐ追いつかれて即死だ。

 こうなると近接勢はいるだけ無駄にすら見える。


「そうだ、チカちゃん壁で動き封じれば…」

「あいつが迂回できないようにぐるっと包む壁なんて、作るのにしばらくかかるから全員攻撃やめてもらわないと…」

「…あー…」

「人間1人の立ってるスペースひとつひとつ置いてくしか出来ないからね、これさ」

「そう聞くとネタ職だね…」

「だねえ」


 かなりダンジョン地形に左右されるのは理解してたが、いい面見てただけか、私。


「それと、足止め罠とかは…」

「当然ボスには効かない」

「ですよねー」


 この追いかけっこを眺めるのが一番いいのだろうか…?

 そうこう言ってる間に、なんとか倒せていたらしい。

 逃げ回り、タゲを持ち回りでやれば3分くらいで終わるのか。

 恐ろしい敵だった…。


「はいはい、応援で呼んだ蘇生チームが回るから、余計に触んないようにねえ」


 ミカさんが事後処理らしい説明を始める。

 回復職がメインのギルドが助けてくれるらしい。


「終わったんですかね」

「どっちにしろ、一区切りついたと思って回復タイムは入れないと消耗するだけだからねぇ」

「落ち着いて、情報収集のターンか」


 それぞれ仲間がいる者たちは集合し、生きてるかと持ち物確認などをしておく。

 便宜上、私のサークルと三人組が合流してミカさんたちの近くで状況の整理をしていく。


「……ねーさん、やっぱ死んでるか」

「回復待ちで寝てるから、まぁ、まったりやりましょ」

「消耗品はミカさんから融通効くらしいけど、欲しい人挙手!」


 飛空さんとノネが即挙手してくるので、耳打ちで要件だけ通してもらってくる手はずに。


「チカちゃんは消耗品あるはずだけど、補給いいの?」

「姫が重量ギリギリまで死体から取ってたから、それ分けてもらってる」

「…そうだ…それ誰からだったかあとで教えてね…申告しないとただの強盗なんで」


 向こうも把握しているとはおもうが、一応本人伝手の確証取っておかないといけない。

 たしか長男とかいう商人だったはずだけど。


「あと、私も倒れた商人さんから弾丸もらってますよ」

「おっけー、取ったのの名前後で聞かせて」

「しかしまぁ、いろいろ出たけど、ボスから何か出てたかい皆様は」


 チカちゃんが普通になじんでるけど、三人組とこいつら面識ってあったかしら…。


「いやぁ、テーブルゼロの希望も無くなったって話を加味しても、やっぱり通常フィールドボスって渋いね、あれらに比べて」


 ワールドの中には、通常マップに出るフィールドボスと、アイテム消費で戦いを挑んでいく形式の独立フィールドのボスがいる。

 独立フィールドの、呼び出し式などとも言われるボスのほうが後からの実装で、さらに取り合いもないしドロップもいいとあり、一部以外は優先的に狩る人もかなり減ったようだ。

 ただ、私のようにメンバー集め出来ない人はフィールドのほうが突撃しやすくてメリットは残っている。


 ごく一部、誰も触らなくなったボスもいるらしいが…。


『報告ありがとねぇ……それと広場のサメが退治されたと言われてたり、まだ居るとか錯綜してて、ここは安定したけど混乱してる場所があるんだよね』

『ご苦労様です』


 ミカさんから経過が入る。

 やっぱり情報の集中する場所というと、ギルドの集積体のような組合に頼るほかない。

 それでも全体が解決したと把握できてないと…。

 和気あいあいとアイテム関連の会話が私の隣で繰り広げられている中、少々いろいろな違和感でその中に紛れ込めずにいる。

 何かがおかしいなとか、何かが足りないな、とか。

 そうこう考えていると、近めのところの自警団が一斉に動き出したのが見えた。


「どーしたのー?」

「リーダーが今、死んだとログが出たんです」

「いま?」

「ちょっと、探さないわけにはいきませんので」

「いくよ、私も」


 ギトギトくんの挙動にちょっと心配さが先に立ち、思わず言ってしまった。

 …そんな必要ないよな?

 そうか、自警団がたまっているのにリーダー居ないのが、違和感の一つか。

 それを確認してすっきりしたせいかもしれない。


「ちょっと行ってくるね」

「うちらは、ねーさんの蘇生見てからだからちょっと待ってくれたり…」

「大丈夫、様子見に行くだけだから」

「貰うと言う予定の弾どうしたらいいんです?」

「なら、そこで待っててー」


 軽い気で単独行動。

 あれだけ敵対に近い関係にもなった自警団相手なのに、私もよくやるものだ。

 まぁ、今の空気で荒っぽいことしないだろうという楽観姿勢と、今の世の中の空気がまだ批判的か、私自身で確かめないとずっと胃が痛いという計算部分もある。

 ガチ空気悪くなったら、みんなにも悪いからな。

 ということで、すたすたと金魚のフンになってみる。


 それと。


「しかしさ、あの日はホントびっくりしたんだよ?」

「どうしましたユメージさん…ほかの方は」

「それはいいの! それよりさ、そのまま使うのそんなに嫌だったの?」

「……どういった話で…?」

「剣! 使ってはいるけど、そっちのほうが役に立つでしょうがぁ」


 不満だ。

 これがあったのも大きい。

 一人になるのを待つ手もあったが、感情優先。


「それは、僕に渡した理由が納得できないのが最初じゃないですか!」

「私が持ってて、ぶっ叩かれるほうがいいっていう話でもしてる?」

「そんな意味じゃないでしょう!?」


 話して数秒で痴話げんかの様相。


「役に立つと思ったのに女のプレゼント返すとか、世の中大激怒のパターンだからね」

「そんな大それたもの、責任持てる人なんていないでしょう!?」

「なんだよお」

「なんですか」


 周囲が何も言わないが…。

 なんかにやにやしている雰囲気がしないか?

 きのせいか?


「今日受け取らないと、もうあげないからね!」

「そもそも、あなたが持たないといけないでしょう?」

「ずっとそれ言う!」

「それに、それはちゃんと使うなら人を固定…」


 不自然に口が止まるのを、聞き逃さない。


「総員、戦闘態勢!!」


 急に、自警団の偉いほうの人が叫んだようだ。


「ヨドさん、リーダー居ます、足元に」

「わかってる、回復は最大のをショートカットにちゃんと持っておけ」

「「はい!!」」

「…なんかいるの?」

「ユメージさんは、ちゃんと守りますから動かないでいいですからね」

「男らしいじゃないのー」


 ちょっとシチュににっこり。

 したはいいが…みんな警戒してるのっていったい…?

 自警団の後ろにいたから見えなかったが、のっそり建物から覗く姿がやっと確認できる。

 それは。


「……いたの? こんなドラゴンなんてこのゲームに…」


 城の二階か三階の高さがある、えらい大きさのものが目に入る。

 たぶん、厄介すぎて誰も手を付けなくなったという話の…あれだ。

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