守る人、守られる人
お知らせには記載されていたらしいことをみんなが呼び飛ばしていた。
『最強のフィールドボス出現にともない、モンスターも活性化することが予想されます。』
なる項目。
通常いないところに敵を運営判断でバラまいたり混乱させることも、含んでいたわけだ。
しかし、本来これはなかったと思う。
その最強ボスなるもの……だが。
更新時からずっと出現しているのに誰も本格的に仕留めようとしていないという事実。
それを運営が何とかしたいから、倒さないとこんな暴走が起きるよと見せしめを…したんじゃねえのかなぁ…。
いや、合ってるかは知らんけど。
どっちにしろ、こんなのが何回も起きるのはマジでやばい。
街に放置商人を置くことがリスクになって減ることになったら、取引の基本から面倒になりかねない。
ただですらギルド戦で物が高騰気味なのに、それでさらに言い値を吊り上げられたらたまらない。
商売敵が減るって、世の中全体でそういうものだから。
「MP回復もう使い切っちゃうよぉぽよぽよ……」
「えっ!! ちょっと、ちょっとまって!!」
『ミカさん、物資足りてない! 回復尽きたら商店街決壊です!』
『…じゃあ名前控えて、死んでる商人漁っていいよ、うちで賠償するからねえ』
『目撃されたら最低の生き物に認定されかねませんが!』
『いまのところそういう報告こっちに上がってないから、略奪かどうか説明できる空気はあるんじゃないかねえ』
『まぁ生死の境目ですから、どちらにしてもいよいよの時はしますが』
『なるべく早く応援出せる体制はこっちもしとくよ』
『感謝ー』
なんと心のこもってない感謝だろうか。
自分で言っててびっくりしちゃった。
「姫、そこの倒れてる人がMP薬持ってたら、名前だけメモして借りていいってさ」
「ぽよぽよがすごいこと言いだした!?」
「大丈夫、組合の了解済みだ」
「弾はどうしましょ?」
「都合よく持ってたら同じようにしていいよ」
まぁさすがにいねえだろ。
冒険で私はもともと回復全く使っていないので、多少は何とかなる。
しかしまぁ、防具外してるから下手すれば即死もある。
姫、ノネ、チカちゃんの消耗具合は単純に生死を分けるものなので用心したい。
…が。
結局他の人が来ないとジリ貧なのは変わらないんだよなぁ。
ボスひねりつぶす火力は流石にこのチームにないんだ。
ノネの銃が一番だが、弾にもランクがあってラウーゼ君は容赦なく最高級、しかも合わせた属性持ち。
ノネは今のところ昔用意してたnpc店売りでも買える標準…というか最下級ランクの弾がご愛用。
私も一線級の攻撃型ステ振りはしてないし、防御系タンク職が基本だし、剣はいい感じでも並外れた火力はない。
ソロボス挑戦みたいな夢は見られないわけである。
「火力来てくれー…」
ぼそりと泣き言をいう。
「なら行くかぁ」
……?
誰今の。
「待たせたね、本田さん!」
「気が付いたらすぐ行くってノープランはなかなかねーさんが許さなくってね」
「………回復はいるもん」
思いつかなかったけど、待ってたよ!
「そこそこ久しぶりじゃん、お三人さん!」
「結構あってるイメージだよお?」
「ま、狩りで揃っては、なかなかしてなかったよね」
「できたらゲロ吐いてるほうを遠距離の人優先でお願い! ほかは寄らないほうがいい!」
「わーっとるわーっとる」
頼りになる人がきてくれたよ。
「かいふくやく、貰っちゃったよ」
「ナイス姫!」
こっちも心配は減ったらしい。
個別に倒していけば何とかなりそうな希望は見えた。
ただ…あの触手はどうしようもないよ、今のとこ。
「ユメージさん! 言葉じゃなくやっぱり人助けに来てくれてたんですね」
「遅いんだよ自警団!」
「あのハチと広場のサメが一番問題と思ったので、皆そこを重点でやってましたので」
「あれ、居たんだ…」
詳しくはないがサメも範囲ダメージ多くてやばいとは聞く。
「人がいるんなら、自警団さん触手もっと叩いてよ! 無人商人全滅しちゃうよ!?」
「そっちのキメラでなくていいんですね!?」
「なんとかする!」
……言い切ってしまったが、よかったのだろうか。
まぁ、あっちに手を回す余裕なんてないし、いいんだろう。
いろいろ号令が飛び交ったり、この辺りもようやくにぎやかになってきたが、ここ中心でなくて本当によかったんかおまえら。
「ねーさんたちすごい!もうこんなに削ってくれたの!?」
ちょっと会話で見てなかった間に、山が半分以上もう体力減ってる。
さすが上級者である。
「ちがうちがう、うちらでそんなやれないだ、これが」
「奥にガンナーいるんだよ」
「…それはたぶん…」
もはや見なくてもわかろうもん。
ボスといえばあいつ、も、居るんだな、きっと。
「本田さん頑張ったねえ、まさかこんな目立つように壁してると思わなかったよ」
「ミカさんやっと話し合い終わったの?」
「まだ続いてるんだけどねえ……すこし負担減らしてくれる代行もいるんで動けるくらいにはなったよ」
「それはよかった」
これが今全然しゃべらないチカちゃんなことは、私としては全く知らないことなのだが…。
割と結びつきが強いことは、後々で知ることにはなる。
「アイテム足りてるかね?」
「そこの人からMPポ取ったらしいので耐えられました」
「長男のほうは耐えられなかったとは皮肉だねえ」
「……余裕ありますね……」
「これでも街の商店守れなかったら一番ご意見来るのウチのとこだから焦っちゃいるんだよね」
「ごもっとも」
基本、商人たちなので、ミカさんのお友達の火力はそれほど完ぺきではない。
ただ、彼らは自前の武器防具がさくっと調達できるので援護としては十分だ。
それに、要請で呼ばれた者たちも、各所で増加して何とかなる空気が漂う。
「……オマエはよく見るな」
「ラウーゼ君いつからいるの?」
「偶然だがほぼ最初からだ」
「来たらラウーゼ君一発でわかるねぇ」
「…おまえもな」
そろそろ山のほうが止めというころ、位置を変えたのかようやく見えた。
もはや普通に見えているラウーゼ君。
奥に見える子も、一緒に銃を撃っているようで減る減る。
「これが終わったらキメラからは離れろ」
「…珍しいね、注意なんて」
ゾンビキメラ、一体なんかあるのか。
「ユメージさん、あとはこっちで請け負いますよ」
「ギトくんまで…?」
そういってる間に、山がとうとう倒された。
周囲が触手とキメラにかかろうとした時。
「はなれなさーい!!!」
ラウーゼくんの後ろにいた女の子だ。
私がタゲ取ってるから、私が動いても無意味な気がするけど…と、思いつつ動く。
が、すぐ誰か自警団が殴って止めたのか、すんなり離れられる。
すると、である。
「うわ!?なにこれ!?」
ゾンビが変形して周囲にガスのようなものを一気に噴射。
ガスの弾のようになり、すっと収まる。
で、どうしてもその場を見るわけであるが。
「あれ…」
「死んでる!?」
「即死ブレス吐くんだよ、ヒットポイントの減少割合によって定期的に…厄介なんだあ」
驚くわれらをよそに、チカちゃんが不意に解説をかます。
即死って何さ・・。
多人数型の恩気でダメージ無視やめてくだちぃ。
「でも、それだと止められなくて商店街突っ込むよ?」
自警団が一斉に死んでてお前ら熟練者じゃないのかよと突っ込みたいところだが、それは今の空気ではやめておこう。
「まぁ、街の中だし復帰地点が近いのもいるはずだけど…」
「2%ごとに即死ブレス一度は吐くのと範囲攻撃のルーチンとで、デスペナ気にする人は近寄らないし…」
デスペナルティ。
通称デスペナ。
私のような初心者枠の開始一カ月の期間中はほぼないものなので気にしないが、通常のプレイヤーは死亡に際して損失がある。
武器を落としたり、お金が減ったり経験値が減ったり。
一番誰にも影響があるのは死亡時にPCにインベントリのものを漁られる危険性などだが、モンスターにも取られるし自然と減ってるものもある。
死亡上等で壁したい、何度も即死したくないと言うのはみんな同じなのだ。
…私なら平気って人、いるでしょ?
いや、私今、復活時の出現場所が、一度やめようと思ったときの山の小屋なのね。
そういえば再設定ずっと忘れてたよ。
よっぽどの移動手段ないと一時間くらいみんなと別行動だぜ、たぶん。
…厄介なの、残しちゃったなぁ。




