首都壊滅
「あの、つかぬことをお伺いしますが…」
「うちじゃないぞ」
「でもこれ、見るからにあの、テロですよね」
「テロっぽいよねぇ」
チカちゃんと同じ見解らしいが、向こうのギルドの計画的なものではないそうだ。
商店街の主要な売主がPCたちといえど、常に全員中身がいるわけではない。
価格設定して放置できるシステムもあるので、仕掛けて寝る人だって多いのだ。
要は自分のキャラを置いて自販機状態になっているわけである。
そうなると、周囲で戦闘などがあっても対応はできず、こうして死体の見本市ができるわけである。
ただ、昔にそういう行為があって、簡単にそれができないようシステム変わったって聞いたんだけど…。
そうはいっても、起きてるものは起きている。
今まだ生きてる放置商人を一応、生かしたい心情ではある。
半端に生きてるってことは、いましがた発生したっていうことなのだろうか…?
「守るよ」
「ういよー」
飛び込んで、中身なしを殴っている雑魚っぽいのをまず倒す。
ハチ?
小さいけど、見てると殴った後分裂してて数を増やす感じらしい。
「姫さまーこのあたりに回復ぶん投げてぇ」
「じゃあ、ボクこの辺に座ってるよお」
「ほならチカちゃん様子見ながら壁押上げなぁ」
「わーっとるー」
「ノネはありったけぶっ放して、私は固まり切り崩すよ」
「承りましたぁ」
さくさく。
人が全然いないのはどうなのかと思わないことはないが。
逃げていたり、仲間をかばう商人すらいないのは何だ。
まったくなっとらんなぁ。
と、思ったら、少し進んだあたりで花火のようなものが見える。
「……あ」
いる。
そういう人たちが、建物にさえぎられた壁の横あたりから出てくる。
……ボスの後から。
いたわ、こんなやつ。
クイーンビー。
取り巻きの雑魚が多いって聞いたけど周囲が強くてほとんど見なかった奴だ。
あたりまえだけど、その特性、街で出られると被害酷いな。
ボス蹴散らすほうが先とみんなは見ていたわけか。
しかし、わらわら殴っているけどすごい減ってない。
ガンナーがあまりに特殊なんだな、これ。
でも、人はいるのだ。
しばらくは生きてる放置キャラを守る優先で構うまい。
「あれ死体減ってる…?」
「敵きてないから蘇生順番にしてるよお」
「姫様えらーい!」
ケアまでできるとは、うちのメンバー思ったより事態見える人たちだな。
もっと幼児の集まりかと思っていたぞ正直。
出来ればボス戦の殴ってる人たちに移行してほしい気もするが、ボスもろとも回復エリアに入れて回復させたら嫌だしな。
この考えは破棄しよう。
「おーい、そんで、本田さんよお」
「なんだいトメさんご飯昨日食べたでしょ」
「入り口側にもボス見えてる」
「………はぁ!?」
チカちゃんの一言にさすがに面食らう。
今でもまだ、サマナーが召喚続けてるとでもいうのだろうか。
どんだけ執念深いのだ、犯人てやつ。
「誰も殴ってないよあいつ」
「あーもう、止める止める!」
ダッシュで寄って行って、商店街に入らない程度の場所に陣取って挑発、防御上昇、デバフ投与。
攻撃食らうのは承知でとにかく止める。
で、この何かを吐きかけられる感じ…こいつの攻撃にも見覚えが…。
「山だこいつ!」
「デスワームだよ!」
でも山なんだよ。
めっちゃ長いこと何かを吐きかけられた私の嫌な記憶の元ってやつなんだよ。
今となったら、一人で倒せるのかなぁ、こいつ。
出来ればやってみたいよな。
そう思い、とりあえず鎧は脱ぐ。
「ぽよぽよなにしてんの!?」
「こいつ、鎧とか防具耐久めっちゃ削る嫌な奴なの!」
「はだかじゃん!」
「2000万すんだぞこの鎧!」
ますます背に腹は代えられない。
インベントリ圧縮しているアイテムは、もうこうなったら捨てる。
気付いたら誰かしら拾ってくれるだろう。
『本田さん、ちょっと今首都がやばいんだけど、応援来れるかねえ』
そこにミカさんから耳打ちが入る。
『今やってるところです!』
『そりゃ助かるねえ』
『応援でどこか強いギルドとか呼べないんです?』
『言い方悪いけどねえ、本田さんの前にそりゃいくつか声かけてるし、今も10窓ひらきっぱでねえ』
『そりゃ大変ね…』
『でもドロップ悪くなったじゃん…好きで狩りたいやつ、もういないんだよ、惨状は理解してても自分たちの呼び出し式ボス行きたいってさ』
『現実って悲しいなぁ!!』
『あと、みんなに言ってるけど、テロだとしたらギルド戦が始まりそうなところで消耗品買い漁るギルドも増えたりして馬鹿みたいに数日でいろいろ値上がりしてるから、価格の不満があったのかって噂があったねえ』
『現実みてえなぶちぎれ方だ』
『困ったもんだねえ』
デバフ効果時間は殴って祈るしかないので、応援が来るまでは耳打ちで暇つぶしもできる。
「本田さん、悪いんですけどゾンビ融合100キメラと同時に殴られて耐えられる?」
「急に恐ろしいこと言わないでくれる!?」
弐乃…いやノネちゃんから言われて馬鹿なのかという勢いで反応。
この裸状態でボス複数って正気で言ってる?
「だって後ろに…いますし」
「どんだけだよ犯人の金の恨みってさあ!!」
有無を言わせるスキがない。
「ごめん姫様、こいつならダメージにもなるから私の足元きて回復エリアの発動してくれる!? しばらく!」
「ぽよぽよの横いくのお?」
「マジそれないと無理! 決壊する!」
「しょうがないにゃあ」
ぷにろりな姫が真横に来て回復を発動。
何とか耐えられるのと、アンデッドなので片方にはこれが反転するはず。
位置を変えれば、姫には攻撃がいかないで私が両方食らう形になるはずだ。
火力担当、誰か来て打開してくれえ!
と、そこに…。
「……なんで!?」
「今見た?」
チカちゃんと信じられないものを画面の端にとらえた。
この、神器の剣を手に入れた敵。
鉱物の触手の、よくわからないやつ。
動かないからそこそこ対処できた、というそのボスが…。
商店街の自販機商人たちの足元から出た。
なんで?
本当になんで?
その辺にサマナーいた?
「ゆめっちこれ、やっぱそうだ」
「本田さん!本田さんです!」
気が動転してもはやどれが自分なのか。
「これ、運営だ!やってるの!」
「運営のクソバカヤローーーー!!!!」
そりゃ叫ぶよ。
そうだよね、私あってるよね!?




