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JKたちは『AHO』なことをしています  作者: 畑楽 繰間


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帰国のお知らせ

「なんですとぉ!?」


 メッセージアプリの通知に反応したとたん、思わず叫び声をあげてしまった。

 メッセージは一件。

 

 かえってきた

 

 それだけだ。

 普通だと思われる方は多かろう。

 そうでしょうとも。


 カナダ行きで、始業式のある週の土曜日に帰る、と、堂々数日休む宣言していた人のメッセージでなければ。


「何を急に叫んでますの?」

「いや、リアル事情なので追及しないでくれ」

「了解ですわ」


 多少レベル上げがしたくなって、最近貧乏貴族を連れまわす日がちょいちょいある。

 ケダモノも毎日割と長く入っているのだが、もれなく配信中なので近寄りがたい。

 あっちはあっちで後輩をしっかり面倒見るのに当初の想像より目いっぱいなのだろう。

 合間合間に耳打ちをいつものようにしてきていたが、数が日ごとにみるみる減っているのがわかる。

 そして今日は小石ちゃんがいない。

 ちょっとでも回復がいたらいいのだが、無理ができないということだ。

 ポーションがぶ飲みで、損益ギリギリを目指して戦える場所を探していくことになる。

 二人組のいびつで装備もどんどん変わる状況で最適と言われても、そりゃ難しいし攻略サイトも当てにならないのだ。

 死ななそうなところを手探りで回って、経験値入手悪くないところを決める。

 そういう作業に明け暮れる。


 と、そんなとき。



 ピンポーン。

 おやセールスの来客かしら。

 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!


 !?


 このやり口は…!?

 母はいるだろうが応対はできまい。


「ちょっと用事で棒立ちになるけど耐えてね」

「ちょっと!?毒ワームに囲まれているときにちょっと!?」


 いや、悪いが本当に一大事なのだ。

 ヘッドセットを外して階段を駆け下りる。


「まって!ベル壊すのはやめてあげて!」

「おっそぉい!!!」


 玄関のドアを急いで開ける。

 そうするとそこには…。


 まぁかわいい!

 とても小さな金髪の女の子がいるではありませんか。


 小学生かな?


「うそなんだ」

「んん?」

「うそなんだ!かわいいから大事に大事にしたいって言ったのなんてうそなんだ!」

「うそじゃないよ? もうほんと大事だよお?」

「暑いのにこんなに待たせてたたせてた!」

「あーごめんね、ほんとごめんねえ!」

「ユーメ顔ニヤついてけつかーる!やあだ!」

「ほんとごめんねえ!」


 許せる。

 迷うこともなく許せる。

 たとえ嫌われていてもこの美少女を眺められるだけで許せる。

 それくらいにかわいい。


 我々のアイドル、稀・ロリーナ・レンティカちゃん。

 私にとって皆勤の理由であり生きる希望である。


「しゃがめよぽよぽよ」

「どしたの?」

「はーやーく!」


 純日本育ちのはずなのだが、方言や謎の暴言がよく混じる言葉。

 怒ると手が付けられない子供みたいな行動。

 人見知り発動しすぎで凄んだ次の瞬間人の後ろに隠れる小動物感。

 最高としか言いようがない。


 なので、できるだけ言うことは聞くように。

 ちなみにぽよぽよとは、私の胸に言う悪口らしい。

 許せる、というよりむしろ愛せる。

 その気持ちのまましゃがんでみると。


 ちゅ。


 脳が止まった。


 何が起きてるのか、少し理解に時間がかかっていた。


 今の何なんだろ。


 稀ちゃんに叩かれて、やっと自分が凍結から解除された。


 今の…?


「だめ」

「あれ?今何が…」

「だめ!やっぱり好きになれない!」


 あれ、なんか明確に拒絶された?

 何もしてないどころか、言う通りにしていたはずだが。

 今日は泣く日だっけ?


「ニクタイカンケイ持てば誰でも大好きになっちゃうもんだってチカが言ってたのにぽよぽよ大好きになんない!やあだ!!」

「チカちゃん、とんでもないこと吹き込んだもんだね…」


 グッジョブ!

 グッジョブチカちゃん!

 今までのPKとかすべてもう許すわ!


「まだユーメにやにやしてる!やあだ!」

「ごめんねえ、ほんとにねえどっなってんだろね」

「今日いつもよりぽよぽよがきーもーい!がまんできない!」


 いやだって、これで幸せにならない子はいないよ。

 どうしようもないんだよ。

 顔がどうしても元に戻らない私をよそに、稀ちゃんは電話をかけだしたようだ。


 警察かな?


 でも許すよ。


 そのまま待つと、スピーカーモードにして私の顔に、ぐいと向けてきた。


「朝霞さん? 稀ちゃんからだったけど、一緒にいるんですよね?」

「…あれ、警察じゃないの」

「……なにか犯罪でもしてました?」

「ぽよぽよきーもーいーの! 弐乃なんとかしーて!」

「キモイ罪だそうです」


 チカちゃんでないのが意外だが、もう一人の友人だ。

 四軒弐乃。

 凄い丁寧な変人枠。


「ところで本当に、稀ちゃんが来たのも何もかもわからないんだけど弐乃ちゃんは何か知らない?」

「ああ、稀ちゃん先に行ってたんですね」

「先とは」


 事情は知っている様子。


「みんなやってる、例のあのオンラインゲームなんですけど、稀ちゃんと二人でちょっとご厄介になる話になったので、引っ張ってもらう担当の夢ちゃんに挨拶しとこうねって話になってまして」

「はあ!?」


 何の話が私の外で展開してたんだ?

 リアル知人のグループ。

 私含めてこの話に参加してる三人とチカちゃんなわけだが。

 そろえて何かする計画をしているのか?

 何のたくらみが!?


「稀ちゃんがチカちゃんと旅行中も頻繁にやり取りしてたらしいんですが、夢ちゃんが大変という話もしたらしくて」

「……まぁ多少、大変ではありましたが」

「手伝いも欲しくていろいろ駆け回ってると話したあたりで、稀ちゃんが『チカ取られる!すぐ帰る!』って言いだし…」


 ぶちっ。


 稀ちゃん、慌てて切る。

 そうか。

 チカちゃんと仲良すぎる空気になってたと考えて嫉妬したんだね。

 かわいいね。


「くそったれの話なんて信じないの! そんなの関係ないけどゲームすーるの! ぽよぽよが来たらチカも来るって言ったの!」

「あーわかったわかった、一緒にいっぱい遊ぼうねえ」

「チカとあそぶの! ついでなの! おまえはそなえもの!」

「…多分添え物だね、かわいいね」

「もうー!いいの!かえるの!げーむするの!」


 同級生です。

 決して幼児をあやして和んでいるお母さんではないのです。

 かわいいね。

 そういったことで、割とすぐ帰っていった稀。


「全員揃ってAHOするのか…いや、すぐ誰か飽きるな」


 …と、思うが、なんであれにやにやが収まらない。

 稀ちゃんの不意のキスだけで半年はオカズに…いやいや、幸福感の補給には事欠かない。

 しかも一緒にやってしばらく休み中でも声も聞けるですって?


 最高じゃないこのゲーム?


 終始笑顔で部屋に戻る。

 いやあ、キャラどんなんなんだろ。

 いつ合流してくれるのかな?

 すぐかな?


 そして部屋に入るとなんか気分を害する音…。

 …何かうるさいなぁ、悲鳴か?

 テレビかなんかつけっぱなし?

 

 ……あ。

 

 ゲームに戻るとちょうど貧乏貴族が死ぬ瞬間だった。

 一応守ろうとはしてくれた…らしい。

 私はここの通常敵だと自動回復だけで帳尻合うのだよね…最高級プレートメイルの試運転でもあったから。


「……さすがにちょっと謝るわ」

『死んでいるんでございますが!』


 さすがにね、いくら貧乏貴族相手でも気に病むくらいにはなった。

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