陰謀とサプライズの境目で
「ミカさん大変らしいねぇ、呼ばれたから来たよ」
「結構久しぶりに感じるねえ…やめるかもと思ったら復帰が早くて安心するよね」
「実際あんな叩かれ方で普通に入るのは私も正気じゃないと思ってるよ…」
恐る恐る、街を歩いてみる反応やらを試して、意外と何も言われなかったのを確認した数日。
帰ってきた日にはそれこそ『いるのかよ』『はよ終われ』『チートだろやっぱり』みたいな耳打ちも結構混じってて、内心きつかったのだが。
実際、そういうのが、関係者扱いされてミカさんにも来てたのか心配にはなる。
そんなことなど含めて聞いてみたくなって、すぐ来たのもある。
ぱっと見、ダメージや被害を受けたようには見えない。
ことさら、本当はどうだったのかと突っ込んで聞くかどうかは、迷う空気である。
「ひとまず、面白いことは見つかっているのかねえ本田さんは」
切り出すのはミカさんのほう。
「まぁ、入ろうと思ったのが最上級職実装のお知らせだったんで、それっぽい衣装の強い人見てテンションは上げてますよ」
「ほうほう?」
レア狩りしすぎてそれ以外に興味持っているのが意外なのだろうか?
「でも、あれ最低でも基礎レベル制限があって70か80ないと無理のはずだねえ」
「気になるけど自分じゃ難しいってとこですよねぇ」
何やら頷いているが、この人の考えは実に分かりにくい。
別の商売の話で考えている何かなのか、私に何か仕掛けるたくらみでもあるのか、さっぱり区別がつかないから。
「それはそれ、で、要件は何なんです?」
「ああ、単純に、あの剣が戻ってきてるっていうのが驚いたのもあったからだねえ」
「…それだけなはず、ない気がしますけど」
「相変わらず信用ないねえ」
「信用したら夜のクラブに売り飛ばされたからな!」
「なんでもいいって言うから許容量試す最中だったのにねえ」
「初手強すぎるんだよなぁ」
思い出して、ちょいとエモート。
悪ふざけで、例の剣を突き出して脅すかのような見た目に。
「…そ、それが…」
と、その途端、周囲から声がした。
そういえば、仕事場だから何人か往来しているんだな。
近くで座ったままの人も何人か。
「この人たちは…?」
「ああ、ギルドのいつもの人たちだから、話には入ってこないよ」
「……どういうことなの……」
無言なのが仕事な人たち?
「ゲーム以外のところで作業中ってとこかねえ」
「…それならわかりますけど」
「アップデートでギルド戦がとうとうあるっていうので、オンオフ問わずに手を動かして頑張ってるギルドが多いのさ、今はねえ」
「そういえばそうでしたね」
ギルド戦。
これの詳細が、とうとうやってきた二度目のユーザークリエイト島を商品にした争奪戦だった。
これを予測していた人は多かったらしく、準備を前々からしたうえで、さらに物も人もかき集める作業が活発らしい。
大規模な商人系ギルドの集まりなら、それもさらに手広いのだろう。
「…で、今は私は、仕事の報告や作業待ちで、ここの人たちと『もし島が手に入ったら』のマップアイデア出して遊んでるんだよねえ」
「それはそれは、そこそこ楽しそうですね」
ちょっと興味を引く。
意外とヒマなのか、トップっていうのも。
「ここがどうしてもギルド的に必要なところで、鉱山施設を持ってくる場所を近くに置くとかなりラクになるなとかね」
拡大できる小マップを使って説明してくれる。
どうにも、マップ設置の器具がないと作れないアイテムもあり、クリエイトできるならそれらを集約して手間を減らし効率化したいらしい。
「ならそれをここに持ってきて…こうが楽しくない?」
「そうかねえ?」
「あと、街にある商店街持ってきて作ったの売れるよう、市街地判定をこう伸ばしていって、端に鉱山ダンジョン丸々入れて…」
「ほほう」
「この地域にレアドロップする敵だけ沸く土地作って、このあたりに飽きが来た人のための超難易度ダンジョンとか作ってえ」
「なるほど…」
「見た目がいいようにここに無駄に高台に大聖堂とか作って、見た目もかわいく!」
「楽しそうにはなるかねえ」
…ちょっと張り切りすぎたか。
「…ま、まぁ、よくないっすかね、昔そういうゲーム好きだったから、島を丸ごと整地して城作ったマイデータに似せてるだけですけど」
「………いや、役立ったよ」
「ならいいですが」
「ほら、後ろの人も、ちょっと興味沸いてるねえ」
「…ほんとだれ…」
「まぁ、レベル上げするならまたちょっとアイテム貸すから、ついででたまに布取ってきてほしいね、いつでもほしい奴だからね」
「ういういっすー」
呼ばれた理由は特に深いものではないっぽいか。
そうして、私は帰った。
そのあと。
私は知らない時間…だが。
――――――――――――――――――
「いかがだったねえ、職人ギルドマスター諸氏」
「確かに悪いことをする人とは感じないね」
「前聞いた話だと、もうちょっと悲劇を押し付けるメンヘラヒロインの空気していると思ってましたよ」
「明るいよね」
彼女、本田さんが帰ったと同時に動き出す、作業中と言われていた人たち。
彼らは、同盟または連合として、それぞれ40人以上はメンバーを抱える生産、職人ギルドのマスターたち。
さらに言うと、どうしても今回のクリエイト島が欲しい人たちである。
「それで、画像で回してみんなから提出してもらった島の理想形を統合するか選ぶか…なんだけどねえ」
彼らは、本業が違ったりする分、どれか一番便利かという要素も違う。
何がどれに近いほうがいい、何が欲しい、という優先事項を含み、図案を出し合ってうまくかみ合わせようとしている。
かみ合って理想が一致したなら、兵隊を統合して島クリエイトの権利をだれがとってもその通り建設する、というわけだ。
ミカたちは今、それで作った連合でオルアラなどのPKどんとこいな戦闘主体ギルドに数で勝とうとしている。
個々でやって粉砕されるのは確定なので、いろいろな提供案などで懐柔も含み数時間おきにどこかのギルドと会合。
島の商業エリアのクリエイト権確保か、勝者になる方法を模索しているわけだ。
しかし、最初の同盟ギルド内の意見でも難航している。
そんな合間に、ミカに一つの提案をして、スタッフを強くお勧めしてきたものがいる。
いま、その流れでまた会合が開かれている最中なのだが…。
「まず、今の彼女がぱっと書いた企画図を広げようねえ」
みんなに画像データを回す。
口々に、唸る声がした。
「少し変えてここに防具系のそこの提案を入れ、うちの陣取るのはここ、鍛冶系のマップ配置をここにしたとしようか」
ぺたりぺたり。
パズルにピースをはめるように、すんなりと各々の欲しいものが収まる。
「割といいものができる提案と、たのしそうな島の景観じゃないかねえ」
「…彼女を含めて、今回呼びましたね、ミカ氏」
横の薄着の筋肉質が言う。
「彼女の知名度を見て、今回ちょっと強めに推してきたおねた……あーいや、友人がいてねえ」
「この図を、持たせてみたと?」
「あれは本当に今ここであの子だけで作ったんだよ、いい才能じゃないかい?」
「…それが本当なら確かに…」
「これで完成に近いマップはできてしまっていますが」
「ま、我々が作っては観光地という楽しみの要素は絶対ないですからな」
「…そう…ですねえ」
それぞれが唸る。
「求心力の旗印として、悲劇のヒロインが最強の剣を持って戦う…これは、人が集められるんじゃあ、ないかねえ」
「酷いことを考える」
「インパクトは確かに…」
「うちの中の誰かで角が立つという意味では、人選に妥当なんですかねえ…しかし」
悩む声はするが、反対意見は出ない。
いや単純に、候補が絞れなくて出せないという現状をつついたから、こんな案が出たのだ。
「なら、第一面接はかろうじて通った、でいいんだね?」
ミカは、してやったりとほほ笑んだ。




