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JKたちは『AHO』なことをしています  作者: 畑楽 繰間


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36/61

AHOに正義はわからない

 ギトスジの急な進言と決闘の申し込み。

 入団前に変人呼ばわりされていることを知るものも少数いるのだから、またおかしくなったのかと言われもする。

 ギトスジというキャラの行動の一連からすると、確かにそう。

 たまにおとなしいトラブルメーカーの側面はあろう。

 ただ、九条彪勇の心理からくる真面目さと目的がわかると、悩みぬいたすべての、耐えかねた発露と知れる。

 そのすべてを知るわけではないが、今のこの自警団だ。


 正しく向かい合うべきだと、リーダー…ハジツ・シナノは感じる。

 彼自身、空気をどう変えるかは探っていた。

 自警団そのものにとって、タイミングは都合いいとも言えるだろう。

 

「いいだろう、一対一の決闘であれば、受けようか」

「ありがとうございます」

「私は神器の所有権をかけるが、そちらはどうする?」


 周囲がざわつく。

 自警団の箔をつける旗印と思っていた団員もいたことだろう。

 それ以前に、団員が団長から物を奪う行動に、それ時点で正気を疑うのも普通といえる。

 だからリーダーから先に条件提示した配慮の部分はあるのだろう。


「ならわたしは…団の千人勧誘くらいを条件にしないと最低のつり合いも取れませんね」

「…いいだろう、準備が整ったら首都のアリーナに来たまえ」


 するすると話が進むのにすべて動揺しかない。

 当然、やめろと言う声も上がっている。

 しかし、冷静に見ればリーダーのほうがお膳立てしたような不可思議な流れ。



 そのまま、対戦用アリーナを一時占拠した自警団の団内決闘が幕を開ける。

 

「使わないのですか、その剣」

「賞品が当たり前に出てくるような決闘じゃ、本来ないだろう?」


 どちらにしても勝ち目のない戦いだ。

 知る限りでも、レベルが開きすぎている。

 余裕とみてもそれはそうという差はある。


「…で、では構えてください…3…2…1…開始!」


 団員の掛け声で、今日ログインしていた団員すべてが見守る中の決闘。

 斬りつけ続けるのはギトスジ。

 受けて返すのがリーダーだ。

 このゲームの近接は、ある程度じゃんけんの要素を持つ。

 断つ、払う、突くの属性を持ち、それを組み合わせて組み立ててコンボが発生したりする。

 専門にゲームをし続けていたわけではないギトスジ、つまり彪勇は細かい設定をしているわけでもなく、タネを知っていればずっと読める。

 攻撃のスタンダードである突き主体のコンボは払いを続けていれば怖くなく、コンボ切れにスキルを打てば軽いもの。

 攻略系サイトの基本にすら載っている奴だった。

 これに20を超えるかどうかのレベル差は、あまりにきつい。


 しかも装備だって、神器がなくても平等とルールで決めたわけではない。

 絶望が最初から決まった勝負、だった。


「通じないなら、手動でじゃんけんしてもいいんだぞ」


 アドバイスが飛ぶ。


「では……そうします」


 連打を無視。

 目視でタイミングをすべて手動で技を組み立てる。

 予測は難しくなるが、コンボの補正による一連の攻撃ボーナスは消えるのでダメージ量はむしろ減る。

 どちらにしろよくはならない。


 斬れば突く。

 突けば払う。

 払えば斬る。

 向きを変えたり見にくくなればひとまずスキル技で距離を取る。


 対応に終始しても、まあ見事に相手を封じているものだ。

 ギトスジくんの手慣れていなさをけなすより、リーダーが強いことに驚くべきである。


「もっと目くらましでスキルを使わないとな!」

「今偶然に出たコンボとあわせて3つは対人で登録しないとこう読まれるぞ」

「最初の技を固定するのはバカしかやらん!」


 組み手をやさしく叩き込まれているかのようだった。


「回復は、別に使っていいんだからなセイヒくん」

「……わかって……います」


 言われたとおりにやる。

 それに、少年らしい嫌悪感が少し混じっていた。

 なぜ、そうでなくても、うまくできる自分になれないんだ。

 そういう自分への悔しさである。

 だが回復も全力で出し、言われたものをショートカットに入れてコンボの登録をして、初手の切りつけに駆け引きを想定する。


 そうすると。


 読みあいをした結果である。

 当然、前よりは当たりだす。

 だが納得はいかない。

 たまに手動を混ぜ、いくらでも試すつもりで切りかかる。

 そのまま、頭だけは使いながらガムシャラに戦い続けた。

 その時ふと目が留まった。

 言われたいくつものコンボを変えながら組み合わせて出す。

 中には防御の仕方で明らかに相手が出させてくれた連撃もあった。

 それを並べる作業の偶発。


 十二連。

 最長部類の連撃が、完成していた。


 そして。

 リーダー、ハジツは、静かに倒れた。


 どよめく周囲。


 信じられない自分。


 アリーナ戦なので、勝敗数が表示され、相手もすぐ復活してくる。


「いやいや、失敬…慌てて回復を持ってきてないのを忘れているの、言い忘れたよ」

「そんなわけが…!」

「君の勝ちだ、セイヒ」


 納得はいかない、誰よりもギトスジが。

 好き放題回復を使わせてこっちは回復ない、など、ハンデ戦でしかないし、再試合を申し出たら絶対に受ける。

 そもそも内容が、戦い方を教えられただけの真剣勝負と程遠い何かだ。

 それでも、リーダー自身が負けだと言っている。


「持っていくんだ…私は合わせる顔もないので、彼女によろしくな」

「あっさりそんな…」


 あまりにあっさりと手放される神器。

 逆に悔しい。

 しかし、したいことを叶えるためには、そんな出来レースも飲まないといけない。

 なにより、これがリーダーのやりたい筋書きだといい加減気づかないといけないのだ。

 手に取る…一度も振らないまま渡していた、託されたはずの剣を。


「そんなもんこっちが認められるか!」


 外野から入って切りかかる団員。


「やめとけ」


 リーダーが言ったときには、当然遅い勢い。

 ギトスジが初めてそれを振ったのは、仲間に対してになった。

 すかさず飛び出す十二の連撃。

 リーダーがつけた対人用、マンイーターのオーブはそれをさらに強烈にする効果絶大だった。

 相手を待つまでもなく、それだけで三人が切り刻まれた。

 即終了の暴力で。

 さすがに、そこにさらにという人間はいない。


「帰ってくるんだぞ」


 そのまま団を抜けるな、というリーダーの言葉だった。

 答えず、そのままギトスジはそこを去っていった…。

 

   ――――――――――――――――――

 

「ギト君何してんの!? ずっといたわけじゃないよね、中身は入ってる?」


 入ってすぐの客に、さすがに面食らう。

 なんだろうね、棒立ちで何してるのかわからないけど、話聞こうか?

 と、いう間もなく、なんでか取引を要請される。


「……ほんとにずっとここにいたの? いらないの?」

「あなたが……絶対に、あなたが持つべきです、これは」


 やっと言えた…その感慨に近い何かは、多少は伝わる。

 あと、変な改造されてるから、ずっとここにいたのではなさそう…な気配。

 でも、別に要らないんだよね、日々の遊びにそんなの。


「よくわからないけど…楽しい? ここのところは」

「……たくさん、考えました」


 返事なのかなぁそれ。

 自分に浸ったやつしか言わんよ、それは…。


「ま、ひどい辛くなきゃいいけどさ…リスト見たんでしょう?」

「まぁ」

「晒されて持ってもいないって、この先大変かもしれないよ?」

「そんなことは僕は気にも留めないですよ」

「そりゃよかった、ま、お互い頑張ろうか」


 できるだけ明るく言うが、なんか不安っぽいこと言う気がするんだよなぁ。

 ギトギトくん、自警団で肩身狭い?


「ユメージさん!」

「はいはい」


 近いのになぜ叫ぶのか。

 そういいたくもあったが、何か必要なんだろう。


「正しいとか、正義とか、考えたこと…ありますか」

「くだんないとしか思ったことない」

「……そう……で…」


 …がっかりなんだろうけど、締め付けは嫌だよ。

 靴もブラも心もさあ。

 合わないところにはいられんわけよ。


「でもさぁ」


 なんか、こだわりがあるなら、神妙そうだし取り繕う配慮くらいは忘れない。

 おねえさん、そこそこ大人なんで。


「私にとっては笑顔に囲まれることが全てなんだよ、楽しければみんなも楽しくなれるものだと思って、それが正しいと思えなきゃ、つまらんじゃないの」

「…楽しい…」

「じゃ、ちょっと気付かれて耳打ちがすげえうるさいんだわ、またそのうちになぁ!」


 去っていく。

 ずっと立っていただけのギト君だけど、大丈夫なんかね。

 


   ――――――――――――――――――



 そして彼は、立ち尽くした。

 まだ立っているだけだった。


 彼女が言う言葉に、惹かれていた。

 正義と呼んでいたものは一つを指していなかった。

 よくある話だ。

 だからそんなのは言われなくても定義として知っていた。

 法律な宗教のように、目指すものを先に立てて守らせる正しさ。

 時々の、人々の生きるために守っていく、安心と笑顔のための変えていく正しさ。

 それぞれの国の刑法が時代に合わせるように、倫理と理性の一般論を、下らないと捨てさせないための盾。

 いろんなものがある。

 自分の求めるものは、その盾なのだ。


 先に置かれている正義。

 人の後にある正義。


 先でなく、あとにある、またはできる正しさ。

 明かりを消さないで守ることで出来る笑顔のための盾。

 彼女の言っていたことは、僕の見ようとしていたそれなのか。


 こんなところに、九条彪勇の答えがあった。

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