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JKたちは『AHO』なことをしています  作者: 畑楽 繰間


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35/61

少年は今まで三度、自分を曲げた

 九条彪勇(くじょうひょうゆう)

 彼は、多感で規律を重んじる少年。


 お受験、賞状、期待、羨望。

 重みという重みを受け続け、自分で選んだものは何だろうと多感な時期にみんな悩むだろう悩みを順当に持った少年。

 憧れや希望は持っていたが、その一端だった父が失言で役職解任、目立つわけでもない昼行燈と化したなら、いろいろ考えたくなることはあるだろう。

 兎角(とかく)、正しさや正義については常に考える。


 そして、その定義についてはっきりしたものを求めすぎると、多感な時期に狂いかけたりはするものだ。

 自分の悩みではなく、親に対する不満のあまり死ぬことはないとわかっている方法で自殺未遂をしたり、不意に彪勇はレールを外れた。

 親から見ると何をしていいか何一つわからず、放置しかない時期があり。

 つま弾きものだった一人の親類がやってこなければ、ずっとそのまま家の奥にしまわれていたことは当人にも予想に難くない。


 そこでたまらず吐き出した悩み。

 何もわからなくて出てくる不満。


 それらに親類はうまく答えた。

 悩むことは必要で、必ず過去に同じ悩みを持っている人はいた。

 自分はただ一人と思っても、何十億何百億の過去の存在は、一人くらい同じことを考えていたりするものだ。

 どんな手段でも、何を見ながらでもいいから、それを探すのはいいものだ。

 そこにそれなりの解決法は転がっていて、その過程で自分で見つかるものもある。


 そうして、いくつもの「外」を見る方法を持ち寄ってくれた。

 年は離れていても、いい友だった。

 生徒会、風紀委員、球団、文化学芸員。

 過去にもいろいろ知り合いはいたが、腹を割って悩みを話し合えたことはない。

 なら、悩みを持つ、または持っていた人を探して自分と同じなら聞けばいい。

 考えたことのないルートだった。


 小説、情報交換サイト、チャット、テーマを厳選してみる映画、漫画など、なんでも世の中にはあった。

 しっくりするものはなくても、世の中に転がる悩み、そのいろいろは楽しかった。



 そこに、転がっていた。


 オンラインゲーム、AHO。


 人と交流でき、世界にゲームルールだけで実質的な法律はない仮想世界。

 盗みはいけない、殺しはいけないをどう守るかも、やりすぎでないなら人次第。

 現実でなくても、そんなテストケースが世では今までも点在していたということか。

 ふと、それに興味を持った。


 それが、この少年の物語始まりだった。

 名前は友人に貰った。

 どうせなら、固く行くより、自分の過去と目的で飾りをつけていいんじゃないか。

 正義一筋、一文字入れ替えてギトスジ=セイヒ。

 人の正義を見つける男だ。

 

 ただ、ここでも同じ悩みで親しくなれるものがいるわけではない。

 同じ考えの生き物が何人もいるとは考えていない。

 答えをくれるものがいるとは考えていないが、どれだけ腐ったとしても答えははじき出せる、いつか。

 そう思った。

 

 ……が。

 詳しく世界を知らない彪勇。

 PKなどの良識の範囲でやるやらないがあることに首を突っ込みすぎ、有名な変人扱い。

 なんとも言えない孤立を味わう。

 自警団に結局流れ着くのは、もはや既定路線といってよかった。

 自称警察、に準じたものであれば存在を知った時点で変な意味の有名になる前に参加すればいいでは。

 そう思う人もそれは多い。

 ただ、この当時自警団はまだ小さい。

 始めたの時ほどなく、彪勇はリーダーと話す機会もあった。

 しかし、その時から、自分と同様の考え、同じ悩みを持つ方向でないのはわかっていたのである。

 時期を経たものの相手は参加を喜んだが、彪勇にとっては、当初からして折れたようなものだった。

 法のない世界で理想的で正しい行動をするものと管理するもの。

 そんな窮屈なものに誰も舵を取る気はなかったのだ。

 リーダーを含め、そこにあるのは理想の主人公観と唯一無二の存在として見られるための顕示欲。

 理解はしても、興味のない世界だったのである。

 


「今回のイベントは狩場の占拠ちゃんと見張ってたかセイヒ」

「ヨドさん、そこまで警戒しなくても今回は広い範囲だと思いますよ」

「それでも声をかけていくのが我々だろう?」


 ある日の記憶。

 自分はだれとも食い違っているが、多面的な正しさを考えていく点で、ここは都合はいい場所だと思いはしていた。


「余計に言ってくる奴は通報すりゃいいんだよ、過剰に反応する奴なんて、どうせろくなもんじゃねえ」


 そもそも、トラブルもない注意喚起など役割でも何でもない。

 おのおの、漫画やアニメの気に入った主人公像をやっているものだと思う。

 しかし、誰も彼もが、人の中心になれるような主人公像には見えない。

 そこが極めて興味深かった。


「ヨドさん、一番きつかったのって、いつですか?」

「ん? まぁ炭鉱だけで特殊な石取れるってやつかもなぁ」

「そりゃ…ずいぶんイベント作った人も考えなしでしたね」

「掘り出しのポイントに何人か座ってまた取れるの待って…喧嘩もいくつもあったんでログをコピーして送り付けたりな」

「どこにです?」

「メッセージアプリにさ、反応いいから面白かったけど」


 自警の意味とは、どういうものなんだろうか。

 意思統一は少なくともできていない。

 それでも、おのおのの差異と正しさの意味を突き詰める。

 そこに答えが出るまでの過程はあると思う。

 それを、繰り返してきた。

 

 今、自警団は喧伝してきた主張をひっくり返され、余計なことをしたのかと責められる側だ。

 一部が、吐き出しようがないはけ口を自警団が余計にユーザを責め立てるようなことをして酷いことをしたと攻撃する流れも起きている。


 実際、それで神器を手にして得したのが自警団という図式でさらに事態が悪いのである。

 悪者であるという見られ方に耐えられず、ログインしていないものもそこそこいる。

 自警団という組織自体、今回のテーブルゼロ暴露騒動でわりとズタズタだった。


 彪勇そのものは、悲しんでもダメージも受けてはいない。

 正しさという定義に悩む頻度はまた増えたが、自分の理想や思想をここに重ねて持ててはいないのだから。

 だから不満もないし悔しさもない。

 どちらかといえば、ずっとあるのは、ユメージ…本田さんへの同情と約束に似た頼み。

 それを何もできなかった自分のふがいなさ。

 そこだけ、自分でけじめをつけたい。

 激しい衝動だった。


 それが。

 

「団長、僕と、決闘してください」

「……ずいぶん急だな……」


 この一言だった。


「あの剣は、やはりあの人に帰すべきです」

「そう考えるにしても、あの時の口ぶりでは剣に思い入れや拘りはないと思わんか」

「そうであっても、僕は自分の見る正しさを信じたいので…」

「彼女は、言葉でそのまま受け取るなら、君が持つことを望んでいるはずじゃないのか」

「言わないでください…それでもなんです」


 レールを外れたあの時。

 自分なりの正義を訴え続けられず自警団に入った時。

 本田さんにゲイズ・オブ・ロードスを受け取った後の自分すべて。


 自分の中で三度折れた、その悔しさの記憶も入り混じる中で。

 団員が集まるなか、彪勇が叫び続けた。

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