世界の流れについていけてない本田さん
本来、読みたくなかったAHOのチート扱いのブラフをまとめた様なインターネットの片隅のページ。
好奇心がつい勝ってしまい、読み進めてしまう。
かいつまむと、こうだ。
テーブルゼロの存在は確証はない。
そこが前提ですと書かれちゃいるが、それは建前だ。
言い切ると情報の元ページだと言われて消されるからだろう。
それがつい最近、正確には数日前。
裏で取引されている、それでしか出るはずがない正体不明で過去にどこでも報告がないアイテムのリストが出たというのだ。
どこかの匿名掲示板に、pdf形式のアップロードファイルとして。
中身は、今の所持者とアイテム名。
合計でそれが50弱もある。
意図もわからず、どこの了解も取れていないこれは、それら名前の記載されたユーザからそうだと言われなければ完全に与太話。
中傷目的の嘘でそんなものを作ったとしか言われない。
……が。
その周辺の数人、本人が持っているのを見たという証言がすぐ出た。
そこでもまだ、噂のレベルの、伝手で聞く与太話。
それはそうだ。
それが繰り返されて、ただのいたずらで済まされそうなとき…。
例の、悪名高くて私も一時パーティに入れてもらっていたギルド、オルアラ。
あの中の一人が、堂々、俺の名前のは本当だよ、持ってるよと。
そう言い切った。
これが、ゲームの中が大騒ぎになる火元だった。
リストはそこから真実味がある流出扱いとなった。
悪いやつの言うことを信じるのかという疑問よりも、そも、彼らは島でコントロールさせてボスを好きに出現されることも可能だろうという人たち。
チートツールなどではなく、その環境で常時出して、それらにギルド全員でドロップ増加を付けて殴ったりした結果。
前からゼロテーブルは狭いごく一部で確認され、実証の末に裏で取引するまでになっていたのかも、という話にすり替わったのである。
彼らが今まで、そういうアイテムを表で出しにくく腐らせていたのをついに見せつけたくなったのか?
リストの流出先もオルアラなのか?
そこはもう些細なことだ。
一気に祭りが起き、ボスを借りたい、持ってる奴は出せの大騒ぎが起きた。
私が例の、ぶっちゃけもういいやとログアウトしたちょっと後、すぐのことらしい。
そして大型連休の合間の平日に、最大のアップデートと銘打った長期メンテでほぼ一日丸々締め出され…。
そこで、改めてユーザーが大爆発した。
知らない間に何が起こってやがるのか…。
何に爆発したのか。
アップデート内容である。
ドロップ内容に関して長らくあったミスの修正を行った、という通知。
そこにテーブルゼロの修正がほぼ明記されたのである。
あったのだと公式が認めた。
その一言からパニックのように、事実がそのものだったか問い合わせる時間も惜しいお祭りだ。
もはやリストに疑うやつすらいない。
そのうえ、リストにあるものの流出は確認していますが回収は行いません、というお知らせまでついた。
これは大炎上である。
他にも、三次職追加、ギルド戦、最強エリアボス出現など数々あれど、一番誰もが見ているのは確実にこれだ。
なんで場末の匿名掲示板の変なリストに公式が口出してきたのか。
わざわざ今更潰しましたと報告に来たのか。
持ってないすべてのユーザーがイラっとした瞬間だったろう。
こんなまとめも、そりゃできる。
ここは、そんな事件を一覧でまとめてすべて有志たちで加筆していったページだった。
しかしおかしいのは、私の名前は、実はない。
ゲイズ・オブ・ロードスはリストにあるが、持ち主はギトスジ君になっている。
ポイしたのが、そこまで早く大々的に伝わっているものなのだろうか。
そして、そんなに数があるなら生産ギルド系にひとつはあると思えど、名前は一切ない。
効果的なアイテムなら、金の集まるあそこに一つはあるはずだろうに…。
つまり。
ミカさんだな? リストの出どころ。
本田さん…夢は、なんとなくそう思った。
確証はないが、全方位にアンテナもって情報集められる奴なんて、ほとんど限られていると言っていい。
オルアラの、裏で何らかの方法で売りさばいた張本人か、ミカさんあたり。
本田さんの汚名のためなんて、そこまで都合イイことは考えてないが、知る限りではそれがすんなりいく。
オルアラとミカさんがつながってたら、さらにばっちり確信になるけど、それはあるまいと。
この時の私は、ミカさんとオルアラのマリア、つまりチカちゃんが親戚関係で交流あるなんて知らんからな!
つまりそういうことだ。
そして、そこから流れてくる現在。
そう、今、火花の飛び散る真っただ中。
こわいねえ。
いろいろな人が、どれが悪い、何が許せないを書き連ねている。
運営ヘイトがとてつもなく多いのは間違いない。
なお。
リスト含めてすべてがチートで出したという説を唱える者もいる。
これは無くなることはないだろう。
あと、私に対してそれらと関わらず「あいつはやらかした奴だ」という考えを変えない層も。
しかし、これらは一気に鳴りを潜めつつある。
理由は、あるのだ。
ここで出てくるのが、例のカミングアウトしたケダモノである。
おそらく声優のファンだなんだ、ゲームの外から物申してくる一過性の存在たち。
彼らはまとめなど、出来上がった情報をもとに、特定のユーザ視点でないところから話を見ている。
そして、彼らが一致して言っていることがある。
「運営が言って認めてるならチートでもバグ利用じゃないし、なんなら持ってる奴をひがんでる奴が騒いだんじゃないの」
と。
まとめ系、ニュース系が、いくつか見てもどれもこんな意見優勢の空気を作っている。
私から見れば、これは誘導されているか、工作にしか見えない。
そんなもんばかりで統一されるもんだろうか。
しかし、仮にファンが例の声優、ケダモノの中の人が私に絡んでチートの片棒担いだだのの濡れ衣で炎上したのを鎮火するために意図的に同じことを言ってるなら…そりゃそればかり言ってるように見える。
しかも、そいつらはゲームはしてないのだから反論したり逆に叩こうとしても実体がない。
まとめの記事や掲示板の記事の一部と化した空気だけ染めるやつら。
そいつらは確かにいるが、本筋のゲーム内には関わりないし、反論や逆説的な意見を言うための場所には居ないのだ。
そういうのは基本、自分の正体や本来の居場所を話題に関係なくぽろぽろこぼしてわざわざ弱みを作るような奴らではない。
言い返す当てもなく、ただヘイトにあてられ、僻んでる悪者扱い。
公式掲示板やゲーム内には出てこないなら気にしなければいいだけではあるが、それとしても範囲が広いだけに影響はある。
周りが軒並みこういう意見だ、と、ゲームしている人間たちがその意見を普通だと染められだしたら、たとえ実態は無くても最終的に、広まり切った事実と化す。
怖い話である。
こんな流れで、局所的なヘイトに、広い範囲の別のヘイトが覆い尽くすようにマウントとって殴り掛かるという図式に。
この図式になることで、変わらない意見を持つそういった輩が、ことごとく意見を言えない空気にされていった。
そしてそのうち、ポットのお湯が冷めるように熱は話題ごと消えていく。
狙ってやったやつがいたとしたら…まさに悪魔だな。
偶然の産物なのだと信じたいが、計画的な絵図として描けるとしたら人間じゃないぞ、それ。
…いやぁ、社会人の、そういった事務所の学歴高い役職の人なら、そういう考えもできるんだろうか…。
実際のところは、わからん。
そうして、読み終えて。
AHOの最新アップデートを箸休めに読みながら思う。
「三次職か……やってたガードナイトの上位が確定してるらしいんだよなぁ」
僧侶、つまり回復系と近接系、シーフ系、魔法で二系統、弓系と、すごい量の上位職が実装されているようだ。
気になる。
バグ修正も大量、ギルド戦も正式に詳細公開…など、他の人がもっと注目しそうなのはあるが、特に関係ない。
このゲーム、基本職、上級職などなどいろいろあるが、終わり際になってやっと見分け方がわかったのだ。
装備で見た目が変わるので、その職業の特定はやりにくいのは確かなのだが、実は装備を付けると変わるものがある。
袖の装飾やら、短めのマントなど、上級職など特定の職は、たとえ布の服でも微妙に豪華になるのだ。
さらに上の職たと何がつくのか、みたいなの…気になる。
前からたまに、私が強い人なんだろうと言いたげな人はいたが、そういうことだったんだね。
私に対しての何かが止まっているかどうかを含めて…すこし、入ってみたくなるじゃないか。
「見つからないくらいの、ちょっとなら…いいかなぁ」
床にポイされていたヘッドセットの例のディスプレイを手に取る。
「充電は…まぁ、してるか」
どこから電気取ってたんだ、この無線給電。
ちょっとこわいぞ。
「んじゃ…少しだけ、少しだけだぞ」
言い聞かせると言っても、誰に聞かせるわけでもない。
寂しい独り言だが。
「お帰り、本田さん」
そう、自分であってなんか違う、彼女。
置いてけぼりだった本田さん。
彼女にちょっと、ねぎらいをかけてみた。
「と、いうことでぇ…はぁ、アイテムが適当だな」
ちょっと街を回るにしても、少し買い物がしたい気分だ。
今までひたすらしてなかったが、いろいろ知るとオシャレとかしたいよね。
数日前まで吐き気すらしたものだが、まぁ何でこんなに陽気なことを考えられるのか。
そんな考えで、あの時隠れていた小屋を意味もなく一周したり、うろうろしていたのだが。
「んや?」
誰かいる。
一般通行人か迷ってふらついてるユーザーだろうか。
何にせよ人の反応をちょっと見たいのもある。
それを試すためだから入ったのだし、それなら大多数の前でないほうがいい。
なのでちょっと、またしても好奇心優先。
「どなたかなぁ・・・っと」
ふらふら誘蛾灯に寄ってく何かのごとく寄っていく。
それは。
「ギト君…?」
いつもの鎧ではないが、おそらく…自警団の人。
あの、ギトスジ君と思われる人が、居た。




