ストーカー気質な日の本田さん
「こっちにいったはず…」
探偵しているわけではないが、気になるから探す。
そんな本能で生きてるような理屈でおいかけはしたが。
「本田さん、なんで急に山奥に駆け出したの…」
「ついてきちゃったか、小石ちゃん」
普通なら「先に帰ってて」を口癖レベルでやるのだが、さすがに急なので忘れていた。
「前に山に殺されかけたの助けてくれた鉄砲の人がいてね、その人を追いかけてみたくなったんだ」
「…わたし、人生の決意表明か何かされた?」
両方、ちょっと顔を見合わせる。
何かしら意味が通じていない。
「とにかくいるんだよ、鉄砲の人が、今いたの」
「…何言ってるかわからないけど、必要なことではあるんだね」
後から思い出すと、私もわかんない日本語だったかもしれん。
とにかく、何をしても混乱するなら落ち着くまではついてきてもらっていいか…。
用事があれば、小石ちゃんだし向こうから言うだろう。
そう思い、なあなあで山の奥にさらに。
普通に見失ってるし、気が済んだら何もなかったことにしよう。
「本田さん! そいつ! 殺してそいつ!!」
「えっ何!?」
私が探してる人見つけていきなり殺せっつった?
「盗まれた! アイテム盗まれたよソコのに!」
あ、そういうこと。
ここ、インベントリのものをスキルで持っていこうとする特殊な敵がいるのだ。
そいつを倒せば取り返せて、それに失敗するとたまに街の役場で回収されたものが運ばれている場合がある。
「何盗まれたのさ」
「ぱんつ!」
「…自宅のベランダの話?」
「ゲームの話!」
急な話で思考が止まるが、まあ、そりゃそうだよな。
しかしそうなると。
「怒る前に手渡す直前まで用意してんじゃねえよ!!」
「こっちからパンツ手渡しする状況ってどういう意味合いかってことでしょうが!!」
たしかに。
シカもだれかのプレゼント用に。
「もう一枚ぬすまれたっ!!」
「何枚穿いてんの!」
「わたしがはいてたの剥ぎ取られてるわけじゃないよ!」
わかってるけど!
もはやどれなのかよくわからない。
草むらに入ったりするから。
ちょいちょい叩いてはいるのだけど、出てこない。
すると。
パアン!
自分らの攻撃では出ない音。
知らない場所で倒れている敵。
…ドロップアイテムで出てくるパンツ。
彼かどうかは知らないが、居る。
「ほらほら小石ちゃんひろつてー………あ、いた!」
見下ろすくらいの崖上に立っているガンナー。
確かに、さっき見た人である。
「はろー、何度もありがとう!」
「何度?」
「ちょっとだけ場所移動しよー」
言いながらも殴って、なんとか残りの小石ちゃんのパンツを手に入れる。
そして、さすがにここで話しながら物を盗まれ続けたくないので移動を提案。
特に返答はないので追いかけて、捕まえてお話体制に持っていくことに成功した。
「ラウーゼじゃないの、なんか評判が…いまいちな感じの」
小石ちゃん、幾分オブラートに包む。
「とにかくありがとう」
「文句を言いたかったのか」
パンツに関しても感謝でもあるが、どうにも今日はことごとく言葉がかみ合わない感触がある。
とはいえ、小石ちゃんがわざわざ顔見て言うくらいなので、ラウーゼという彼、広い範囲でいろいろ言われているようだ。
私のことは覚えてもおらず、文句を言うために呼び止められたと思っており、何より彼は口数が少ない。
関係構築は思うより困難である。
だから事実の確認と認証から入る。
まぁ、二件だけなんだが。
「なるほど」
接点があれば、多少は糸口はあり、そして悪意も敵意もないと重点的に伝えることで逃げを防止する。
いや…一言いえれば本当はよかったんだが。
なんか、追いかけているうちにキャラとして楽しそうに思えてきて。
「じゃあ、もういいか」
一応、あの件を思い出すことまでは行けたので気は済んだんだが…。
「で、どう? さっきのはいいもの出た?」
「なんでだ」
「別に取ろうとしないから! どうせなら自分にできないものって聞きたいものなんだから」
自分の行動を解説しながら自分の奇行を叫び続けるのって、なんかの刑罰みたいなかんじ。
発言のキャッチボール失敗率のせいで過剰にフォローしようとしてしまう。
そうこうしているうち、段々諦めたのか雑談めいたものにつながるようになってきた。
ガンナーをそんなに多く見かけないことの理由、この人の行動原理などだ。
そもそも攻撃一回に安くて数十万、ボスだと百万単位の攻撃を繰り返す、効率なんて歯牙にもかけない浪費職。
これがいうなればガンナーの本質。
これを回すためにはほかで商売し続けるか、レアで他の職なら常に超成功な効率でトントンにするほかない。
その勢いでMVP常にかっさらっていれば、目立つし嫌われるわけだ。
そういえば最初の時も、殴っていいか、ちょっと遠慮気味に聞いてた気がするな…。
どこもそれなりに苦労はあるのだ。
「それとは別に、妬みなのか何なのか、噂だと狩るだけ狩って市場にMVP景品が出回らないから貯めこんでて価格操作してるって話も当然のように出回ってるわよね」
「小石ちゃんは、そういう時に歯に衣を着せない…」
「まぁ、知っている」
金出してもいいからと言っても、ほしいのが買えない気持ち…ちょっとわかる。
私もフィギュアの受注で10分迷ってる間に締め切られて予定数量の関係でオクにも出ないのに歯がゆい思いしてるよ。
……いや、話は戻そう。
「そういうふうに話が出ると、何かお礼したいなと言っても全部持ってるって言われそうなのはつらいよな」
「何の話だ」
「一応助けてもらったからさ、私だって何か感謝の記念品でもあげたいところだったんだけど…まぁ何だよね」
「本田さん万年貧乏で初心者だから」
「そうそう…っておいぃ!」
ちょっとはオブラート覚えて小石ちゃん。
「いたぁ!!!」
「んえ!?」
「ああ、すまない」
急な大声。
今の話からすると、急に文句言いたい勢が来たのかと少し警戒するが。
「次のボスの時間近いから、修理早くしてって言ったでしょお!」
「絡まれた」
「絡んでました」
「こっちも」
たぶん、彼の普通の友達だ。
見ると、身長がやたら小さい人間キャラの女子だが…。
「風属性の弾、たりてるの?」
「問題ない、狙い撃つ」
「それで、なんでこんなところで油売ってたの」
「絡まれた」
「前に少しだけ助けられてね、お礼言ってただけだから穏便にオナシャッス!」
関係性でこじれないような付与情報は与える。
「…お友達、よくこんな山中で位置特定できたもんね」
「パーティは位置特定くらいできますから!」
「元気なお子さんですね」
「いや…」
何か言いかけたが、まぁ、細かく探らないようにする。
「……小石ちゃん、拾いなおしたこれ、あとで返すからくれたってことにしといて」
「?? …まぁいいけど」
「ということでほい、お礼」
彼に手渡す、せめてもの感謝のしるし。
「作成しか入手がないはずだし、街のNPCに渡すとデートの時穿いててくれるらしいよ」
「……そうか」
とりあえずパンツ渡した。
ミカさんに渡すの除いたら本当にいいものなくてね、すまんね。
「さっさといくわよ!クイッククイックスロー!クイッククイックスロー!」
去っていく。
特に何もなく、会話だけで平然と終わってしまった。
特殊な暗号かな?
またボス狩りするときには、稀でなく会うんだろうな、この人たちとは。
「…追いかけてってもう一匹触って報酬とっとく?」
「……そういえば、ボス出る情報聞いたんだからだれか調べるのはありか」
すぐに外のブラウザで検索して、それっぽいの特定。
風に弱いというから、たぶん飛行系のこいつ。
「さて、あの人が行くってことはまたすぐ削られるから急ぐかぁ」
「次はいいもの拾えるといいねえ本田さん」
そして一応間に合ったが、私はクラフトに使うショートソードの図面で小石ちゃんが現物のレア、ブルーラインコメットイヤリング。
やっぱり幸運装備、都市伝説だよ間違いない。
そんなこんなで数日の日課、ミカさんに渡して終わりを達成した。
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なお。
その後…私の知らないところ。
「いよぅ、若い子はいつまでも起きてたらだめだよミカ?」
「おねたんだ」
「結構遠縁だからおねたんではないぞ、いつき」
「でもおねたんだし」
「そこはいいや…でも、いい子だろう私の推薦する爆乳お姉さんは」
「正直そこまで推す理由はわかんないかな…ルシテアが特にわかんないけど…でも悪い人ではないよね」
「まぁまぁ、またスキルポ融通してやるからしっかり後押ししてくれよ?」
「おねたんがいうなら…」
「私の入れ込む大事なリア友なんだから、すぐに何が光ってるかわかるさぁ、さっと大好きになる」
「テンション高いからおねたんの好きなタイプなだけだと思う…ねえ」
それはまだ私の踏み入ったことがない、商人ギルドの奥の部屋でのお話。




