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ホーンドトール、語る

「いやぁ悪いね、パーティがどうしてもさぁ」


 私はパーティじゃなかったか?


「どうも間が悪かったっていうかさ、そういう時あるよね」


 死体切り刻みながら言う言葉かい?

 神妙でもなくごきげんだよね?


「友達だと思って、まぁ差し引きはなしってことでまたやろうぜぇ」


 リア友を騙し討ちでざっくりやって差し引きなしって本当に思えてる?

 大丈夫か?


「……ま、てなわけで、回収はしたけどレベルはあるからさ、離れてもお互い頑張ろうぜ!」


 捨て台詞だ!

 これ完全に捨て台詞だよ!

 死体はボイスチャットできないので、まったく通じていない。

 相手の言葉を聞くだけだ。


 はぎとられて何も持っていない死体。


 なんという無様な姿であろうか、私。



   ――――――――――――――――――



 今日、さっきまで一緒に楽しく狩りをしていた仲間から追放されて即殺されるという悪夢。


 他の組んでた仲間に連絡取ろうにも、すべて拒否リスト入りらしく「連絡は出来ません」と言うシステムメッセージ。

 このゲームは友人ならログイン中も確認できるのだが、リストから相手が消せば表示されないので、そこで確認できてしまう悲しさ。


 

 ともあれ、これでゲーム投げ捨てて引退と言うのも思いだして最悪な記憶しか残らない。

 なんとか這い上がって、復讐ざまあとまではいかなくとも、見返すくらいはしたいところ。

 そして、楽しむということが全くないのは悲しいから、いろいろ物見湯残はしておこう。


 そう、誓った。


 そして、リスタートするわけだが…。





「…そんなとこが、事情と言いますか、あらすじと言いますか、現状と言いますか」

「た、大変でしたね」

「大変ですとも……」


 リア友に不意打ちでPK食らっただけでも相当なもんだ。

 あ、PKというのは要するに中身が人間の存在、プレイヤーを殺したりする行動、殺せる状態でそれ目的に動く人たちなどを言います。

 ゲームといえど、学友に殺されましたはトラウマものである。

 この後会ったらどうしてくれたらいいものだろう。


 そこで借りてた防具類は剥がされてしっかり金までとられ…。


 なんとか、安いものでいいから服が欲しいとマーケットに出向いた次第である。

 開始するとき、二人で最高の舞台に立つため頑張ろうと言われた気がするが、こんなのは最高ではない。



 そうだろ?

 ただ晒されて有名になるだけで楽しい奴いないよ!




「にしても、話の流れからしてはレベルが随分お高い…」


 貰った服を着た時点で驚かれたが、さらに重ねて言われる。

 ちなみに相手は、先ほど耳打ちをもらった相手だ。

 悪い人ではなさそうだったので、ゲームを友人と初めて、実質5日で急に追放されたいきさつをペラペラと話した。



 ま、嘘と思われてもいい。



 物をもらった代金分、楽しい時間をネタたっぷりの話で相殺できたと思ってくれれば十分。

 なので、恨みつらみではなく、笑えるようなつもりで吐き出した。

 レベルと状況に関しては、ゲームに隅々まで詳しいわけではないので、ありのまま。


「骨の馬の巨大な…騎士?」

「ワープで飛んだ廃墟の城…?」

「墓が並んでて合間に箱!?」


 が……口々に、聞こえるのは狼狽というのか、ショッキングという雰囲気。

 何が足りないのだろうか、予定したものと。


「……国境のガハーキの廃城ですよねフツーに聞くと」

「えっ即死城なんすか今の話のとこ」

「信じられないけど他にある? そんなところ」


 耳打ちの人を含め、私を囲んでいる数人が口々に困惑。

 ネタとして流すのではなく、真剣に真偽を討論しているようだ。

 おそらく。


「…なんかマズいんすかね」


 さすがにこの空気に耐えかね、すこし様子を聞きに回る。


「いや、話が本当だと仮定してだ…」


 耳打ちをくれた彼が、少し迷ったように話す。


「初心者連れたパワーレベリングで即死城なんて行ける余裕あるギルドいくつあるよって話なのよ…」

「それで思い浮かぶところの大半が、『コワイトコロ』なんで、それを含めると複雑な話に……」

「なるほど」


 力関係の話らしい。


 追放されたというものの、私がこの人たちの動揺を誘う人間の関係者だという事実があるなら容認できない、と。


「リア友と4人くらいの人以外は会ってなくて狩りに付き合ってもらってただけですけど、そんなにまずいものなんですか?」

「正式にギルド加入していた経緯がないなら、まぁ、絡まれないこともあるかもしれないけど、PK専門と直接絡む等は万一の可能性でも、みんなの気持ちにダメージはいるからね…」


 言われれば、そりゃそうか。

 関わらないほうがいいとわかる相手と、確定でいちゃもん付けられる原因は作りたくはない。

 自然でまっとうだ。


「まー、それもこれも、その話が事実だったとして、だけど」

「いやいや、冗談として聞いても、当然いいんですよ」


 言われる理由もわかるので流す気ではいたが、疑いを直接口に出されると……まぁ。

 何かしたいのは人情である。

 ので、その狩りの時に言われたものを試した。


「はいな、これその時のやつです」


 頭の真上にシステム表示の文を出してみせる。

 称号システム、と言うやつだ。

 実績と進行で、アイテムはとられてもシステムの称号は残る。

 見栄えとしてこれは持ってないと誰からも下に見られるからなぁ、と言う話で取らされた奴だ。

 この5日の間の仲間に。

 


 【光を穿ち冥府の闇に陽光の力示せしもの】



 御大層な文言が初心者マークの横に表示される。

 自分の名前と一緒に。

 ちょっと光って色が変わるのに、取った時子供のようにはしゃいだものだ。


「……即死城のクリア称号だ……本物だ……」

「しかもボス討伐の条件コンプじゃねえか!」

「はじめて5日の初心者…で…? 初心者?」


 いや。

 さらに困惑させてしまったようだ。


 舐められないハク付けになるとは言われたが、たぶんこれ、ちょっと方向が違う。



 やりすぎた。


 でも、ずっとダンジョン籠りで2か所しか狩場なんて行ってないんだ。

 これしか持ってないんだよ。


「……これは…ほしいな」

「んぇ!? この称号って譲渡できるんですか?」

「「ちがうちがう!」」


 奥から聞こえた、知らない別の声に、近くの周囲が総勢でツッコミを入れる。


「きみだよ、初期にそれだけ修羅場に行けた経験と集中力を、賞賛して招きたいと僕は考えている」


 奥手から出てくる、ローブと杖、そして何やら豪華な装飾と雰囲気の男性。


「お節介も役に立つものだね、ルシテアくん」


 話していた囲いのできているフロアの奥。

 そう、中から、何か偉そうな風体の長髪の男性が姿を現した。

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