表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JKたちは『AHO』なことをしています  作者: 畑楽 繰間


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/61

本田さんが女の子を泣かせた?

 このゲームの周年記念キャンペーン。


 いろいろあるが、そのうちの1つが、初心者応援。

 期間中無条件に経験値やドロップ率などが上がるが、新規ボーナスと初心者ボーナスで、いままで新規の期間限定購入アイテムだった経験値、ジョブ、スキルの各要素の極大増加ポーションが手に入る。


 これらは本来譲渡不可なのだが、一部の穴で手に入れる方法が、実はある。

 言いたくない方法だが、ある。

 ついさっき会ったこの…誰だっけ。

 没落貴族でいいよな、こんな奴だもの。

 

 これは、それを狙っているのだ。

 

 私はリア友PKの件でそれを実際されているので、身に染みて知っている。

 やり方を知っていれば、そりゃだれでも欲しいのだ。

 そして、それが欲しいがゆえにいくつかトラブルが起きているのも、知っている。

 そう、その真っ只中に、巻き込まれたわけである。


「クッキーと交換にしてはずいぶん大きく要求したもんよね」

「…む、いろいろ知ってるようですわね」

「そもそも、うんと言ったって、こっちの設定次第でグダグダするだけなのに、よくこんな初対面相手にする気になったね…」

「…詳しい…ですわね…」


 ちょっと引っかかるものがあるようだ。

 何度もやってるような感じではないな、これは。


「ちなみにPvPやったことは?」

「もちろんありませんがぁ!」


 素人か!


「それと、今どのくらいで取引されてるの、特にスキルポ」

「……アテクシが聞いた話だと200万マニマニ…」

「そんな安いわけないだろ!」

「そんなこと言われたって!」


 スキルポ。

 いわば使用スキルの熟練度貯めのボーナス効果のポーションのことだ。

 こんな素人っぽいのに価格を吹き込んでるのがいるくらいだから、実際はたぶん倍くらいだろう。

 その市場の取引価格。


 そんなに高いならお金に困ってる私も売ればいいと思われるだろうが、そうはいかない。

 経験値は、まともに周囲に追いつくのに生命線だし、ゲームそのものを楽しむためにジョブもいろいろとって楽しみたい。

 飽きて捨てるようなことにならないために、初心者には普通に必要なのだ。

 期間内の全体ボーナスと組み合わせると200倍くらい、ポーションの効果中は経験が入るのだ。

 既存の廃の皆さんからにはやりすぎだと抗議の声が上がったほど。


 そして私が嫌がる理由…。


 多分この話の最後あたりで語られることだろう。


「初心者だっていうのに、そもそもなんでアテクシより詳しそうなんですの!?」

「いろいろあんだよ、人生密度ってやつがさ」

「アテクシの密度が低いようないい方しないでくださいますかしらァ!」

「いやしらんが…ソロの遊びが得意そうだなとは思うけど」

「そ、そんなことないし!召喚して100人くらいすぐ来るし!」

「…言ってて空しくならんか…」

「ならないもん!」


 当人が満足ならそれでいいんだろう…。


「とにかく、渡すのか渡さないのか、ちゃんとはっきりしなさい!そうでしょう!」

「ある程度言っても、わからないか……そうか…」


 取り方のレクチャー受けてないのか…。

 そして調べてもしないのか。

 そんなのに引っかかった私は一体何なのか…。

 じゃ、そろそろ反省してもらおうか…。

 

「本田さんー? この区画だと話していたが聞こえるかね?」

「あいあい、オージンさん多分そこだよう」

「んな!?」


 わきが甘い。

 甘すぎる。


「話によると、うちのギルドの関係者を拉致しているそうだが、それなりに覚悟したうえでのことかね?」

「え??ど、どういう?」

「浅知恵ってこういうことをいうんだよ…」


 自分だけで解決するのが本来すべきことなのだろうけど。

 耳打ちの使い方を理解したので、AIへのアイテム受け渡しが終わったら遊びに来てと、ギルマスとずっと並行して会話していたのである。

 近いし、たまたま会えてたからギルマスだったが、そうでなければマジくんあたりでも呼んでいたろう。

 通報などの痛みを与える系ではなく、怖いことになるぞという程度の脅しが適当だと思うからである。

 その意図は通じているはず…だが。


「とりあえず、こんな形はよろしくないですよ犯人君…ハウジングの出入りで当人が買ったものと確定ならアカウント割れてしまうのを知ってますか?」

「えっなにそれ、脅しだよねギルマス」

「いえ、家の看板の表示のとこ、これ操作メニューなんですがねぇ、複数キャラで買って独占できないようアカウント自体と紐づけなんですよ」

「割とえげつなくないですか、その話し出すの!?」


 家の壁越しとはいえ、なんで普通に会話しているのか…。

 にしても、とりあえず話をしよう、という流れ違くない?

 あわあわして、没落貴族喋るの忘れてるよ。


「いえ、ご本人で買った家なら、取り返しがつかなくなるというのは知っておかないと大変ですよ?」

「…だってさ」


 本当かどうかは私は確認できない。

 ただ、誰かから入る権利を一時的に借りたものではないのは明らか。

 本人の家にプライバシーガン無視で案内しているのも間違いなかろう。

 この没落貴族…バカか。


「危ないですからねぇ、こういうのを繰り返そうとしているなら」

「……オージンさん、もうそれ背中切りつけるか首絞めしながら言ってるような話の流れなんよ」

「当然でしょう?」


 …こわ。


「うちのかわいい新入生を怖がらせるなんて、なかなかいい度胸ですから、そりゃ知恵くらい絞ります」

「は…? ルシテアさんいる!?」

「どうです本田さん、快適ですかそこは」

「あの、なんか急患が出そうで大変です」

「それはいけませんね、誰か呼びますか?」


 サブマスまで来てるよ。

 呼んだの? なんで?

 実は私が遠慮してると思って静かに切れてない?


「いやあ、お祭りだってギルチャがきたらそりゃあ集まるニャアよ↑~?」

「なんでだよ! ちょっと待てよ!」


 増えてる!

 増えてるって!

 想定の状況じゃないって!


「あのぉ、わっち配信者してるか弱いケモノ系ライバーにゃんですけど、名前出して配信してよろしいですニャンかねえ↑~」

「一線超えてんだよオマエのやり口はさ!!!」


 あいつはまずい!

 通報とか私刑のレベル超えてる!

 止めないと無差別に広域のヘイトが発生するやつだ!

 リアル突き止めて制裁だの、やるやつが出かねないやつだ!


「そのケダモノだけは縛り付けろ! 何もさせるな冗談抜きで!」

「いったい私を何だと思ってるニャ…」

「おそろしいやつだよ!」

「…もう、ゆるしてぇ…」


 ほら、泣いちゃった。

 おそらく個々に、悪いと思わせて解放させる手を考えて、ひとネタづつ持ち寄ったくらいの感覚なんだろうけど。

 ケダモノ、確実にオマエは一線を越えてしまった!



 こうして、本田さんは解放された。

 終始、罠を作った側がかわいそうになる苛烈な攻撃だった。


「…なんでこんなことしたん」

「…その…家を買うのに借金があって、利息でそれ持ってこないと…って…」


 深刻だな、リアルの話かそれ。

 完全に没落貴族で確定だよ、君は。


「利息といいますが、そんな拘束力がゲームのユーザ間で起きるもの…でしょうか」

「それは僕も思うね、闇が深そうですねルシテアくん」


 この二人の、なんか違う空間にいる感は何なんだ。


「ある程度やっていて辛くて投げ出す人を見るのは忍びありません…ので、少し事情をお聞きしても?」

「ルシテアくんはまたそれだ」


 楽しそうである。

 確かに、取り立てを保証する法律があるわけでなし、警察があるわけでなし、借金にしても貸したほうが悪いにできそうなものではある。

 しかし、話によるとギルド間の仲であるとか、生産系の取引の停止であるとか、厄介に人の信頼関係が絡んでいるらしい。

 計算して払い出す利息などはないが、延滞期間に相応のおまけはいるだろう、と、提案を出されたらしい。


 悪い奴もいるもんだ。


「ふぅむ、今すぐ私が代金を建て替えるとしても、それで済まなそうですね」

「そういうのはギルドのプール金でやりたまえよ、ルシテアくん」

「…こいつら損すること前提で考えてるニャ…」

「よくないよねえ、甘い組織って」

「ことさらアテクシが惨めになること言い続けないでくださる!?」

「「おめえは原因なんだニャ!」」

「すみません」


 しかしまあ、この没落貴族が悪いして、恩を売るのはギルドの固まった方針らしい。

 自身の取引のある生産系と掛け合って、その辺の解決と支払いを一度清算してしまうのは確定っぽい。

 PKの盗品を取り扱う悪名高いギルドの傍系っぽいものが絡んでいるらしいが、力関係で言うとこちらのコネが勝てる計算だという…。


 なんだこのギルド。


「で、すまないんだが本田くん…」

「わーかってる、私はルシテアさんへの恩ならちゃんと耳そろえて返すよ」

「いや、これに関してはギルド全体が本田さんに借りができたと受け取ってもらっていい」

「そんな大きい話じゃないでしょ?」


 また何か複雑にしようとするんだ、この二人は。


「いや、あの界隈の悪行で一つ尻尾をつかんだようなものだからねえ、ちょっとおもしろい話が頭の上で出来そうなのは、こちらの利益だよ」

「お手柄だね」

「わたしは地獄の窯に手を突っ込んだ気分で目の前結構暗いよ?大丈夫なんですかね」

「我々の立場で言えば、名前もろくに出はしないよ」

「……だといいんですが」


 言いながら、ケダモノに取引を頼んでアイテム類を渡す本田さん。


「えっ、なに脱いでるのそこの方は」

「ポーション欲しいんだろう? 準備してんだよオマエのために」

「…さっぱり…」


 ちょっと話をしていたような、していないような。

 初心者ログインボーナスを譲渡する、数少ない手段と私が嫌う理由。


「ほれ殴って」

「…何言ってますの???」

「死体から取り出さないと他人に渡せないんだよ」

「な!?」


 そう、普通に譲渡できないので、PvP設定が可能であるようにセキュリティいじって死んだ初心者から抜き取る。

 これが経験値増加ポーションの取引方法なのである。


 わかるだろう? いやな理由。

 このあと、しこたま没落貴族ちゃんの呼んだ怪物に殴られて死んだ。

 一番需要があるのは問答無用でスキル経験値増加ポーションなので、それだけを抜き取ってくれとは言ってある。


「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ!!」


 ギルドの面々に囲まれながら、召喚モンスターにタコ殴りにされて殺され、死体からごそごそモーションありでアイテム抜き取る彼女。

 正直ちょっと同情もする。


 あとはお金と一緒にこれを渡して、彼女の話も解決することを祈るだけである。

 けじめとして、しばらく私の手下として忠実に働くよう言質だけは取ってやった。

 家のキーももらったので、暇になったときは居座って反応を楽しもうと思う。

 

 そんなこんなで、今日も明るく過ぎていく日々。

 ああ、復活地点が元の街なので、また裸で街を行き来する変態がうわさになりました。




 …もう、好きにして。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ