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第74話 影の欠片の場所

やがて、彼らは大きな空間に出た。それは円形の地下広場のようで、中央には巨大な柱が立っている。恐らく、複数の路線が交差する予定だった場所なのだろう。空間全体が青みがかった光に包まれ、壁には無数の影が動いていた。天井からの水滴は空中で停止し、青い光の粒子のように浮かんでいる。時の狭間の力が、この場所では特に強いようだった。


「ここだ」


クロが言った。その声には緊張感があった。


「影の欠片はここにある」


ルカは懐中電灯で周囲を照らした。床には何も見当たらない。壁の影は彼女の光に反応し、次第にルカの姿に似た形へと変化していった。


「どこ?」


「上を見ろ」


三人は同時に頭上を見上げた。巨大な柱の頂上近く、天井との接合部に、青い光を放つ物体が埋め込まれていた。それは他の欠片と同じような結晶体だが、その中で影のような暗い物質が渦巻いていた。時折、その中から人の囁き声のような音が漏れ出し、空間全体に響き渡った。


「あそこね…」


「でも、どうやって取るの?」


蓮が疑問を呈した。柱は少なくとも10メートルはあり、表面は滑らかだ。ルカは魂写機を構え、上を見上げたが、この距離からでは撮影できない。


「欠片には守護者がいる」


クロが言った。「呼び出せば、なんらかの反応があるはずだ」


彼は前に出て、柱に向かって声を上げた。


「鉄川修、現れよ」


その言葉が地下空間に響き渡った瞬間、壁に映る影が一斉に動き始めた。懐中電灯の光が作り出す三人の影が、突然歪み、別の形に変わっていく。


「な、何が…」


蓮が驚いて後退った。影は三人から離れ、壁を伝って動き始めた。そして、それは人の形になった。体格のいい中年男性の影だ。その瞬間、空間内の時間が波打ったように感じられた。蓮の動きが一瞬スローモーションになり、クロの言葉が引き伸ばされて響いた。空間全体に、時間の軋む低い唸り声が響き渡った。蓮の測定器の針が振り切れ、装置から煙が上がり始めた。


「誰だ?」

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