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第25話 木箱の秘密

ふと机の上の古い木箱に目が留まった。その箱には「写祓成功」と墨で書かれている。


「この箱...」


ルカが近づくと、クロが突然声を上げた。


「開けるな!」


その声に、ルカは立ち止まった。クロの声には切迫感があり、本来の低い声と女性の高い声が一瞬混じり合っていた。ルカは震えが走るのを感じた。


「なぜ?」


「中身は...お前の記憶が戻る前に見るべきものではない」


クロの紋様が強く脈打ち、彼の体は緊張で固まっていた。ルカには、その恐れが不思議と理解できた。


「私は知る権利がある。姉のこと、全部」


「だが代償も大きい。お前はまだ...」


■チクワの導き


言葉を発している間も、ルカの手は箱に伸びていた。クロがもう一度警告を発しようとしたそのとき、チクワが部屋に飛び込んできた。


猫は興奮した様子で、ルカの足元で鳴きながら回る。その金色の瞳は、認識に満ちていた。チクワは障子の方へ走り、振り返って鳴いた。


「どうしたの、チクワ?」


猫は再び鳴き、今度は箪笥の方へ走り、爪で引き出しをかいた。ルカがそれを開けると、写真の束が出てきた。チクワは一枚の写真に爪を置いた——そこには影向稲荷の祭りの様子が写っていた。法被を着たチヨとルカが写っている。


「祭り...」ルカは写真に触れた。「影写りの祭り」


「チクワが記憶を呼び戻そうとしている」クロが言った。「彼は...チヨと特別な繋がりがあった」


ルカはチクワを見つめた。猫は静かに目を閉じ、開くと金色の瞳が青く輝いた。一瞬の現象だったが、ルカにはそれが幻覚ではないと分かった。チクワの全身から青白い光が放たれ、写真の上に広がる。チクワは写し世と現世を行き来できる存在—守り手であり、案内者なのだ。


鳴き声が続く。何かを伝えようとしているのは明らかだった。


「誰か来たのか?」


クロが窓から外を見た。写真館の前に、老婆が立っている。細い体に風が吹きつけ、それでも背筋は真っ直ぐだった。それは静江だった。


「静江さん...なぜ?」


クロの表情が面の下で変わったのを、ルカは感じた。


「下に行こう。彼女はめったに神社を離れない。何か重要な話があるはずだ」


ルカは箱を見つめ、ためらった。開けたい気持ちと、恐怖が入り混じる。その箱の中に何があるのか。なぜクロはそれを恐れるのか。


「後でまた来ればいい」


クロの言葉に、ルカは小さく頷いた。

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