第100話 新たな旅立ちの決意
現像室を出る準備をしながら、ルカは現像した写真を大切に鞄に入れた。彼女自身の記憶の結晶。写真の中の家族の笑顔—父の温かな眼差し、母の優しい手、チヨの守るような背中。それは今後の旅で、彼女の心の支えになるだろう。
「行きましょう」
二人は現像室を後にした。写真館の一階では、静江が朝食の準備をしていた。彼女の周りには穏やかな紫色のオーラが漂っている。経験と知恵の色だ。ルカはその色を見て、静江がただの老婆ではないことを改めて実感した。
「おはようございます、ルカさん」
静江が振り返り、彼女を見て微かに目を見開いた。
「目覚めたようだね」
彼女は何も驚かない様子で言った。おそらく、この変化を予期していたのだろう。
「ええ。私は『影写りの巫女』として…」
「説明は不要だよ」静江は微笑んだ。「朝食を食べなさい。長い旅の前に、体力をつけておくことだ」
三人で朝食を取りながら、ルカは今日から始まる旅について説明した。記憶をすべて失った村を探す旅。チヨの手紙に村の地図の断片が記されていたのだ。それは単なる場所の探索ではなく、失われた記憶を取り戻す旅になるだろう。
「私は『影写りの巫女』として、記憶を取り戻す手助けをするつもりです」
静江は穏やかにお茶を飲みながら頷いた。
「お前の選んだ道だ。迷いはないようだね」
「ええ。初めて、自分の進むべき道がはっきりと見えたの」
蓮は熱心にメモを取っていた。金縁の眼鏡の奥で、彼の目が輝いている。
「僕も全力でサポートします。祖父の記録によれば、記憶喪失の村は霧梁県北部の山間にあるはずです。祖父は『記憶の波紋』という現象を研究していました。気象観測データと写し世の活動に相関関係があるようなんです」
彼は熱心にノートを開き、祖父の残した地図と気象データを広げた。




