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俺とおまえと
俺はおまえを見ている。
おまえは俺を見ていない。
それでいいのだ。
それでいいのだと、自分に言い聞かせる。
たとえば、雨の日、
傘もささずに歩く俺を見て、
おまえは笑うだろうか?
いや、笑わないだろう。
そんなことに興味などないのだから。
俺はおまえになりたかった。
おまえは俺になりたいとは思わないだろう。
それもまた、仕方のないことなのだ。
夜の電車の窓に映る俺の顔は、
俺なのか、それともおまえなのか。
よくわからないまま、
煙草をふかしてみる。
苦くて、まずい。
こんなもの、おまえは好きだったか?
俺は、おまえの好みさえ、もう知らない。
それでも朝が来て、
俺は俺のまま、
おまえはおまえのまま、
また今日も、どうにかして生き延びるのだ。