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死者の目覚め

――ここはどこだ?どうしてこんなにも暗いんだ?

重くのしかかる何かに押し潰されそうな感覚を覚えながら、必死に光を探す。腕を動かそうとするが、思うように力が入らず、せいぜい芋虫のように蠢くことしかできない。

――このまま、死ぬのか?嫌だ。まだ、やらなきゃいけないことがあったはずだ。

そう自分に言い聞かせ、ただひたすらに動き続ける。爪の間に土の感触が入り込む不快さを耐えながらも、必死に前へ進もうとする。どれだけ時間が経ったのかわからない。だが、ついに指先にかすかな風を感じた。

――外だ!

確信した瞬間、力を振り絞って腕を伸ばす。だがその途端――。


「ひっ!」


何かに腕を掴まれた。それは冷たくも力強い、人の手の感触だった。ぐいっ、ぐいっと腕を引かれるたびに、自分の体が少しずつ地面から浮き上がるのがわかる。そして、ついに暗闇の中から引き出された瞬間、私は目の前に立つ一人の少女を見た。

やけに黒づくめの服装をした、思春期の少女だ。彼女は私をじっと見つめながら、呆れたように一言放つ。


「なんで土の中に埋まってんの…?」


その言葉にハッとして、自分の足元を見る。そこは――彼女の言うとおり、地面だった。


「で、答えてよ。なんで土の中に埋まってたわけ?」


黒髪の少女が腕を組み、少し苛立たしげに眉を顰める。質問に答えたくても、何も思い出せない。思考を巡らせようとするほど、頭は真っ白になっていくばかりだ。


「わ、わからない…気がついたら暗闇の中にいて、必死に抜け出そうとしてたんだ。まさか土の中に埋まってたなんて思いもしなかった…」


自分でも頼りない答えだと感じる。少女はじっとこちらを見つめ、深々とため息をついた。


「…まぁ、そんなことだろうと思ったよ。ここじゃそういうやつ、珍しくないし」

「ここ?」


思わず問い返すと、少女は周りを指しながら淡々と話し始める。


「ここは『怪異の国』。人間じゃない存在が彷徨う場所だよ。たまに人間も迷い込むけど、大抵はもう冷たくなってるしね」


その言葉に全身がぞわりとする。


「…じゃあ、俺は死んでるのか?」


少女は少し考えるように首をかしげる。


「ん…さぁね。でも、ゾンビみたいでもないし、生きてるとも言えない。ここにいるってことは、少なくとも普通の人間ではないってことだよ」


その曖昧な答えが胸の奥に不安を煽る。しかしさらに問い詰める間もなく、少女は立ち上がり、服に着いた土を払った。


「ま、とにかくさ。ここにぼーっと突っ立ってても何も始まらないよ。歩こう。みんなに会いに行こうよ。何か思い出せるかもしれないし」

「みんな?」


そう尋ねると、少女は振り返り、口元に薄く笑みを浮かべた。


「あんたみたいな子たちだよ。この国にはね、ちょっと変わった子達が沢山いるんだよ。」


彼女のその言葉に不安を覚えながらも、彼女の歩みに合わせて足を動かしていた。

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