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Page.1 桜咲く頃

――出会いと始まりの季節。4月、また四人の足が同じ方向に向く。

     いつまでも隣に居れるように。遥か先の未来も、また四人で......

「......い......るか、おい春香!」


「......っんう......なにぃ......」


「45分!遅刻すんぞ!」


「......んぇえ!なんでもっと早く起こしてくれないの!」


「てめっ......もう起こしに来て30分経つところなんだぞ!」


桜庭夏希の一日はここから始まる。学校に行く前にこの幼馴染をたたき起こすことから始まる。

今日は…...まあちょっといつもより寝起きが悪い、かも?だけど。


「ごっ、ごめんすぐ準備する5分待って5分急ぐから玄関で待っててごめんねっ!」


急にはきはきとしゃべりだした寝癖だらけ、服はだけかけ、片方だけ靴下残念幼馴染美少女は小緑春香。

そんな残念な幼馴染を待つこと5分。寝癖......はちょっと残ってるけど玄関前で合流して学校に向かう。


「ごめんね!お待たせ!」


「いぃよ、ちょっとくらい。この時間なら走んなくても間に合うだろ。」


そう、これが俺の日常だ。高校生活二年間ずっとこうだった。三年目もこれがずっと続いていく......


「......っ、はぁ......」


「ん、どしたの夏希。なんか悩み事?」


「ん、あぁ、いや、なんでもねえよ。」


あぁ。好きだ。俺はコイツが好きだ。このままで終わらせたくない。

でも、俺は十分楽しかった。幸せだった。何より、今のこの関係を壊すのが何よりも怖え......

そればっかり考えて足踏みしてばかりだ。情っけねえ......


「おう、夏希。おはよう。」


「......おはよう、夏君。」


「お、秋斗と冬雪か。おはよう。」


「秋斗君!ゆっきーおはようっ!」


後ろから声をかけてきたのはもう一人の幼馴染の白星秋斗とその許嫁の紅野冬雪。

人の事を言えた義理じゃあないが、朝から仲がよろしい事だ。


「......夏希、お邪魔だったか?」


「なっ......んだよ、余計なお世話だってんだ。」


「なに言ってんだよ、変わんだろ、今年は。」


「わーってるっての。」


秋斗にはよく相談に乗ってもらってる。俺の中の許嫁のイメージは親から強制された望まない結婚だった。それを根本から変えてくれたのが秋斗だ。本当に仲がいい......というかそれを超えていないか?

だから仲良くなるための話を聞いてるんだが......


――うーん、好きなんだろ?言って押し倒せば?


......とのことだ。具体的なアドバイス以外は聞くのをやめた。

基本的には文武両道、才色兼備。まあ完璧なやつなんだが、どっか抜けてるんだよな。天才とバカは紙一重とはよく言ったものだ。こんな奴が御曹司とはねえ......


「......お前今失礼な事思わなかったか?」


鋭い。あんまり思考の読めなさそうな冬雪と長く付き合ってるだけのことはあるってことか。


「......いんや別に。ただ、ちょっと顔が良くて勉強とスポーツができるだけの普通の男子高校生がお偉いさんになるなんて、想像つかねえってだけだ。」


「......普通、なんていうのここにいるやつらくらいだよ。」


「んな顔すんな。堂々としてろ。」


親の七光りなんかじゃないことは冬雪の次によく知ってる。それでも周りの目が気になるんだろうな。


「......夏君。秋は私のだから。」


「......なんでそんな怪訝そうな顔でこっち見てんだ取らねえよ。」


「......知ってる。」


冬雪も俺が変わろうとしてるのを知っている。が、秋斗よりズレている。知ってるなんて言いながら嘘をついているようには聞こえなかった。アレは本気の目だ......


「秋。まさか夏君と」


「ちょっと待て冬雪。僕はそっちの趣味は無いぞ。」


「ならいい。夏君の邪魔しちゃダメ。」


応援......は一応してくれてるんだろうが、相談は無理だ。何言われるか分かったもんじゃねえ。それはそれで正直聞いてみたい気持ちもある。


「秋。秋。」


「どうした?」


「今日私、下着可愛い。」


前言撤回だ。ダメだコイツは。もし俺たちが付き合えたとしても冬雪には相談しないよう春香に言っておこう


「な~つきっ!」


直前まで冬雪と話していた春香が後ろから飛びついてくる。昔からスキンシップの多い奴だったが、ここ最近は素直にそれを喜べない。今なら憧れのあのセリフも言える。俺の気も知らないで。


「......今年も同じクラスになれるといいな。」


「うん!4人一緒が良いね!最後の一年、うんと楽しまなくっちゃ!」


「......そうだな。今までよりもっと、楽しい一年にしよう。」


秋斗と冬雪も顔を合わせて頷く。その笑みには何か違う意味が含まれているような気もしたが、まあ気のせいということにしておこう。

......始まるんだ。俺にとっての勝負の一年だ。高校3年、やらなきゃいけないことは沢山あるだろう。それでも何より、一番大切な人を俺の手の届くところで守れるようにしたい。


俺が自分の手で掴むんだ。変わるんだ。ただ一人足を止めて、校門と立派に咲き誇る桜に誓った。

「ねぇ、クラス替え、成績順って本当?」


「い、いやただの噂だろ。それが本当なら春香だけ別クラスだぞ」

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