Page.0 Prologue
これは、君と僕の出会いの話――
――おい、大丈夫か!
あの、えっ、と、降りられなく、なっちゃ、て――
初めて話したのは、木の上で泣いている姿だった。
――今父さんよんでくるから!ぜったいうごくなよ!
う、うん!
走った。家まで全力で走った。初めて公園から家まで2分かからないことを知った。
――っと、父さん!こうえん、すぐ、来て!女の子が!
息も絶え絶え、焦りすぎて言葉もバラバラ。父さん、困っただろうな。
――......っいた!父さん、木の上!
......っう......
遠目で見ても分かるほど涙が流れているのが見えた。父さんは背が高くて、簡単に降ろすことができた。
――大丈夫かい?......君、もしかしてお隣の......春香ちゃんか?
......っあ、はいっ、おろく はるか......です!あ、ありがとうございました!
隣に同い年の女の子が引っ越してきたことは知っていた。もう少ししたらうちの小学校に転校してくるって母さんが言ってたから。
――っはぁあ、良かった......
あっ、あの!ありが、とう!お名前、なに?
オレか?オレはさくらば なつき!おんなじ小学校だと思うから、よろしくな!
もう暗くなるからって、家まで送っていったっけ。と言っても、帰り道は一緒だし、ただ一緒に帰っただけだ。家に着くころにはすっかり泣き止んでたな。
――それじゃあな!はるか!
うん!またね!なつきくん!
もうあぶないことするなよ!つぎは、オレが助けられるようになってからにしろよ!――
......あの時、お前が木から降りられていたら。俺が、なんとなく公園に行かなかったら。いろんな偶然が無かったら。今日この日は無かっただろう。
「あ゛~こんなクソ暑い日にタキシードとはねえ...」
「文句言っちゃダメだよ。秋斗君から指名されてスピーチ読むんでしょ?」
「ま、そうだな!春香も雪ちゃんのスピーチだろ?期待してるぜ!」
「ハードル上げないでよね......」
「……俺たちの分は、あいつらにやってもらおうな?」
これを聞いて照れて笑うお前も、俺たちを前に進ませてくれた親友たちも、全部、全部忘れない。今までもこれからも、俺の人生そのものだから。
あの花を見る度、きっと思い出すんだ。
――そして、その先の未来の話。