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72.連合軍の天敵

【消失のシェルドムート】

 暗黒五郷(レイトピア)の一角


 魔王討伐大戦において、最も3大陸連合軍の行方不明者を出したと言われている魔者。悪魔族。


 特筆すべき点は何と言っても”手のひらで触れたモノを別の場所に瞬間移動”させる事が出来るスキルである。腕は自由自在に伸ばす事ができ、これにより戦場では多くの連合軍の戦士が、音もなく姿を消す事態が頻発した。

 この大戦で行方不明になった連合軍の人間・約8割はシェルドムートによるモノだと推測されている。


 なお魔王最終決戦場においても多くの騎士団員やSランク冒険者を消失させたとされているが、クローブ騎士団の活躍によりシェルドムートは魔王を見捨てて敗走。現在はシェルドムート自身が行方不明となっている。


 情報が錯乱し、死角も増える大人数の戦闘においては非常に危険な魔者であり、特筆して厄介な存在であるシェルドムート。いち早く討伐されて欲しいものだ。


◇   ◇

 ”追記”

◇   ◇


 魔王討伐から数年後、当時の大戦で行方不明になった人間の死体・約9割が魔王城跡地の地下から発見された。

 その地下には毒ガスの蔓延した密室、危険な水棲魔獣を放った水だけの空間など様々な場所が存在しており、おそらく大戦前から事前にシェルドムート(あるいは他の魔者)が準備していたモノと思われる。

 そしてこの地下に飛ばされた人間は、何が起こったのかも分からないまま殺されていったのだろう。


 対戦中の情報、そして今回の情報から推測するに、シェルドムートの転移スキルは”シェルドムート自身が認知した場所、あるいは目視した場所"に移動させる事が出来るのではないだろうか。



【「魔王討伐大戦記」より、一部抜粋】


────



「集中しろサン、ヤツの腕は変幻自在に伸び縮みする。常に魔力感知を怠るな!」


 ナツキさんの忠告に頷いた俺は、改めて集中力を高めていく。なにせ俺にとっては初めての”魔王軍の元幹部”との戦いだ、ここで緊張しないはずがなかった。

 とにかくヤツの手のひらには触れないように、触れないように。それだけは絶対に意識を切らすな。



「いいかサン?シェルドムート1体だけなら、数的優位を取っていれば何とか対応はできる。とにかく2人で一気に畳み掛けていくのが最善手だ」


「なるほど、了解です」



 だが俺は返事をしたと同時に気付く。明らかに俺の魔力感知眼は異常を示しているのだ。



「あれ、ちょっと待ってくださいよナツキさん。数的優位を取っていたはずが、いつの間にか数的優位を取られてますよ…………?」


「あぁ、どうやらそのようだな。ここが奴らのホームという事を忘れていたよ」



 そう、気付けば俺たちの周り四方八方から、魔者や魔獣がゾロゾロと坑道を通してやって来ていたのだ!その数、ざっと見積もっただけでも15体ぐらいか?

 しかも1体1体の強さは、最低でも危険度B~Aランク以上と思われる。これが10体以上いるとなると、総合危険度は間違いなくSランクには匹敵するだろうな。


●魔物危険度ランク●

SSS:未確認

SS:世界崩壊・魔神王レベル

S:国家崩壊レベル

A:都市崩壊レベル

B:村破壊レベル

C:一般人殺傷レベル

D:子供は危険

E:無害


 しかもそれらに加えて、シェルドムートもいるのだ!それだけで一気に戦況の雲行きが怪しくなり始めている。

 だがさすがのナツキさん、こんな状況でも冷静だった。



「すまないが、シェルドムートがいる戦場で多人数の戦闘は絶対に避けたい。サン、少し頭を下げてくれ」



 それを聞いた瞬間、俺の脳はハッとする。生命の危機を感じた時と同じ、脳の回路の全てが”生き残るため”だけに最善の行動を導き出す感覚だ。


【バッ!!】


 俺は瞬時に片方のヒザを地面へ着け、ナツキさんの腰元ぐらいの高さへ頭を下げていた。そしてその直後だった…………。



火円輅(かえんぐるま)ッッ!!」



 ナツキさんの刀から炎が溢れ出たかと思えば、その炎はナツキさんの周りを円のようにして囲んでいた!さながら前世で言う”ドーナツ”のような形である。

 そして炎はギュンギュンとナツキさんの周りを高速で回り始めたかと思えば、ドンドン外側へと大きく膨張し始めていたのだ!


【ジュゥゥォォオオ!!!!】


 大きな音を立てながら広がっていく炎の輪は、一瞬にして周りを囲んでいた魔物達の胴体を真っ二つに切り裂き、切った体の断面に消える事ない炎をメラメラと燃やし続けていた。


 まさに瞬殺。切られた敵からすれば、いつ切られたのかも分からないほどの速さと精度だっただろう。



「さて、これで再び数的優位を取れたな。始めようかシェルドムート」



 ナツキさんの圧が空間を震わせていた。


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