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59.新居

「あっ!もう歩いて大丈夫なんですね、ベネットさん?」



 俺がナツキさんと共に病院を出て数分歩くと、部下と共に商品を運んでいるマグナクスタさんがこちらに気付いた。

 後々知った事だが、彼はカルマルの商業ギルドマスターだったそうだ。



「えぇ、おかげさまで完全回復です!病院も手配してもらったみたいで、色々とありがとうございました」


「いやいやぁ、町の英雄なんですから当然の事ですよ。それで?これからどこかに行かれるのですか?」


「実はその事なんですけど…………」



 そう、俺はここに歩いてくるまでの間に、ナツキさんから色々と話を聞いていた。

 それは俺が眠っていた5日間に起こった出来事のことだ。



「ナツキさんがマグナクスタさんを通じて新居を借りたって聞いたんですよ。だ、大丈夫なんですか?俺たち、元々ここの出身じゃない上に、領主さんや町長さんにも挨拶してないですよ?」


「大丈夫に決まってるじゃないですっ!!ここの人たちは皆んな、とっくにあなた達の事を心から信頼していますよ。それに竜に襲われた時には、領主様が派遣してくれている町の防衛団もいましたからね。そこを通じて、お2人の活躍はすでに領主様の耳にもシッカリと入ってます」


「領主さんは何て言ってましたか?」


「実際に領主様と話した町長が言うには確か…………”強い人が町にいてくれるのは、治安維持と周辺地域への抑止力になるし、別にいいんじゃね?てか町救ってくれて、マジサンキューね”だそうです」


「ギャルが治めてるの、この町?」


「ぎゃる……とは?」


「あぁ、すいませんコッチの話です」



 ちょっと予想外の返答はあったが、とりあえず大きなトラブルは起こっていなさそうだ。

 ならば残る疑問はあと1つ。



「それじゃあ………早速、新居に行ってみましょうかね!ナツキさんの家選びのセンスは果たしてどうなのか。楽しみですよ」


「あまり期待はするなよベネット。私は雰囲気重視で決めたからな」



 そう淡々と言い放つナツキさんの背中を追いかけて、いよいよ俺はこれから住むであろう新居へと向かうのだった。


────


「お、おぉ!これは……」



 俺は新居を目の前にして思わず声を漏らす。

 結論から言うと、別に悪くはなかったのだ。むしろ昔ながらの雰囲気が漂う、歴史ある2階建ての石造り住宅だった。

 今まで暮らしていた山の小屋よりは一回り程大きいが、ここの周りにある建物と比べると一回り小さい、そんな物件だった。


 ただカラフルなレンガ建築が有名でもあるカルマルの中では、少し……いや、かなり地味だ。パッと見では人が住んでいるとは思われないような気がする。



「思っていたより小さいですね」


「そう言われれば、そうかもな。確かに他にも色んな豪邸を見せてもらったが、私達にはこれぐらいがちょうど良いだろう」



 そう言って少し口角を上げたナツキさんは、目の前の自宅を見て満足そうにしている。

 まぁ俺だってバカデカい家に住むという小さな夢は多少あったとはいえ、実際住みやすいのはコレぐらいの大きさなんだろうと、妙に納得していた。


 なによりナツキさんが選んだのだ、俺にはそれ以上の理由はいらない。



「ここで鍛冶の店でもやりますか?」


「あぁ、私はそのつもりだ」


「じゃあここで俺たちは生活をしていくんですね。なんか将来を想像したら、ワクワクしてきましたよ」


「あぁ、私もだ」



 そして俺は”子供が出来たら狭いかもしれませんね”という言葉をグッと飲み込み、未来への期待に胸を輝かせる彼女の横顔を目に焼き付けるのだった。


 さて、俺もここから刀鍛冶への一歩を踏み出していこうか。




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