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42.本当の地獄

「………なんだよ、この感覚!?」



 一瞬にして辺り一帯を覆ったのは、クローブに伝わる神の剣竜・アテラの圧倒的な魔力のようなモノだった!


 だがそれは普通の魔物とはワケが違う。

 まるで海の奥底に引き摺り込まれてしまったような、そんな重たく息苦しい圧の魔力だった。



 …………いや違う、何か違うぞサン・ベネット。

 そうだ、光属性を扱う魔物と戦った事なんて無かったから忘れていた。


 光属性を扱うために使うのは【魔力】じゃない。

 奴らが使うのは【神力(じんりき)】じゃなかったか……!?


 冒険者時代に聞いた事のある、魔力とは別のエネルギー。

 光属性の術式は、全てこのエネルギーを使うって聞いた事があったじゃないか!



 だから今俺の背中に走った悪寒(おかん)は、おそらく光属性特有の”一定の魔力を否定する”効果に対して、俺の全身を流れる魔力が反応したからだろう。


 感じた事ない神力に、底知れない恐ろしさを感じてしまったんだ……。



「背中の魔法陣を狙っていたのかサン・ベネット!!?

 ……まぁよい、別にアナタを殺してから再び作り直せば済む話です。むしろアナタはラクに死ねる選択肢を失ってしまったのですよっ!」


「なるほどな……。アテラ自身の力で魔法陣を壊さないために、アテラ自身も神力を抑えてたみたいだな。どうりで魔法陣を壊した途端、あり得ない量の神力が溢れ出たワケだ……!」


「ほぅ……神力の事を知っているとは。

 そう、ここまでのアテラは力を抑えて戦わせていました。つまりここからが神の剣竜アテラの本気!!

 アナタが無惨な肉片に変わるまでのカウントダウンは、もう間近に迫ってしまったのですよぉお!!」



 仮面男がそう言うと、とうとうアテラは本当の実力を示し始める。

 赤黒いウロコはグッと逆立ち始め、尻尾の聖剣も”キュィィイイン”という光属性特有の高音を大きく発しながら輝きを増していく。


 おそらくアレに切られてしまえば一巻の終わり。

 失敗は許されないデスゲームの開幕とでも言っておこうか?


 ……だがさらに事態は悪化する。



「そしてワタクシも魔法陣を形成しておく必要がなくなりましたからねぇ。ワタクシも魔法でアナタを駆逐して差し上げましょう。

 さぁ、アテラの猛撃(もうげき)とワタクシの秀撃(しゅうげき)、はたして元Sランク冒険者は何秒耐えられるか楽しみですねぇえ!!」



 そして仮面男は右手を天に向けて、おそらく上級かそれ以上に匹敵する魔法を発動するのだった。



「サウザンド・メテオッッッ!!!」



 すると突然、空中に”多数”現れたのは、先ほどとは違う魔法陣。

 直径は10m前後って所か?


 だがしばらくするとその魔法陣は赤く光り始め、とうとう中心部から”大きな岩石”のようなモノを発現し始める。


 そして……。



「さぁ、千の数を超える隕石に潰されて、美しく無惨に死になさいサン・ベネット!!!」



 直後、赤黒い炎に包まれた隕石達が一斉に魔法陣から地面へと降り注ぎ始めていた!


 1つの魔法陣から止まる事なく降り注ぎ続ける、大量の隕石。

 そしてその隕石を()ぎ払うようにして俺に切りかかってくる剣竜アテラ。


 やはり背中の魔法陣がなくなってからのアテラは別格だった。

 先ほどまでとはスピードも、攻撃の精度も、全てが段違いになっていたのだ。



「なるほど……こういうのを地獄って言うんだろうな……!」



 俺は苦笑いを浮かべながら、いよいよ本気の戦闘体制に入る。

 常に体に雷を纏い、常に光速に近い速さで動ける状態へと入っていくのだ。


 このフォルムは強力な分、魔力消費も大きい。

 だがココで出し惜しみをしていては、間違いなく1分後には死んでいるだろう。


 それだけアテラと仮面男は強い。

 間違いなく今まで戦ってきた者の中でも最強クラスだ。


 なんならパーティーじゃなくて俺1人で戦っている分、前に逃してしまった悪鬼族の頭領よりも強く感じるかもしれない。



「うぉぉ!!雷導閃(らいどうせん)ッッ!!汎天塞鼓(はんていさいこ)ッ!!」


「ヘハハハハッッ!!良いです、良いですよサン・ベネット!踊りなさい、戦いなさい、命を燃やし尽くしなさいっ!それこそが弱く儚い人間のあるべき姿なのですからっ!!」



 俺の命を全てを賭けた戦闘は、その後20分間続いていた……。



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