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40.分身攻撃

【キュィィイン……ドゴォォオオン!!!】



 一瞬にして俺に着弾した閃煌(せんこう)と呼ばれていたブレス!

 当たった感じからして、これは4大属性の”火・水・風・土”とは別の”光”属性で間違いなさそうだ。


 光属性特有の高い音、そして魔力が浄化(否定)されていくような特殊な肌の感覚。

 紛れもない神の剣竜の一撃だった。



「クソ……が……!」



 とりあえず俺は、ギリギリで発動した雷を帯びた太鼓(たいこ)・【汎天塞鼓(はんてんさいこ)】で防御をしていた。

 タテヨコ20mはある大きな太鼓の防御技で、本来なら相手の攻撃を弾き返す事ができるカウンター技でもある。


 しかし残念ながら剣竜アテラの攻撃を完全に防ぐ事はできなかった。

 その証拠に、弾き返しきれなかった閃煌(せんこう)は周りの街並みをガレキに変えてしまった上に、太鼓を貫通してきた閃煌(せんこう)によって俺自身も大ダメージを食らっていたのだ!


 ”魔力による肉体強化”すらも否定する、光属性魔法特有の厄介な効果のせいだ。

 服の一部が焦げたように破れ、(ひたい)からはタラッと血も流れ始めている。



 しかし幸い、俺の背後にいた少女は無事だった。

 俺が壁になっていたおかげで、彼女の所に攻撃は届いていなかったのだ。



「おい、早く逃げろ……!あっちの高い建物がある方に、走って逃げるんだ……!!」


「う、うん!うわぁあああん!!パパ、ママァ~!!」



 突然起こった爆発に驚きながらも、少女は必死に俺達から離れていく。


 ケガがなくて本当に良かった。

 もし知らずに攻撃を避けて少女に当たっていたら、俺は気持ちが完全に切れていたかもしれない。


 でもまぁ……1番悪いのは問答無用で攻撃を放ったコイツらなんだけどな!?



「おい、なぜ攻撃を止めなかった。お前達は国を守る、国民を守る存在じゃねぇのかよ……!?」



 すると俺の問いに対し、剣竜アテラの頭に乗っている仮面男が”さも当然”のように答える。



「………はい?何を言っているんですかサン・ベネット。仮にあの子供が死んだ所で、明日からのクローブ王国に何か変化があるのですか?答えは(いな)、ありません。

 それよりもアナタという危険分子を排除する事の方が、よっぽど国王様にとって価値があるのです。ただの取捨選択ですよ」


「なるほどねぇ。とりあえずお前らは、ココで絶対に倒さないといけない存在なのは間違いなさそうだなあ……!?」



 フツフツと腹の底から湧いてくる熱い怒り。

 だが戦いにおいて怒りを優先して良かった事など1度もない。


 あくまでも怒りは戦いのエネルギーにして、頭は冷静に動かせサン・ベネット。

 俺はそうやって強敵に勝ってきたんだ。大丈夫だ落ち着け。


 まずはこのカルマルから離れないといけないだろ。

 このまま戦えば、街が廃墟になってしまうからな。


 じゃあどうやってここから離脱するんだ?

 刀の技を使って遠くに吹き飛ばすか?


 いや、アテラは光属性魔法を使える。さっきのブレスを当てられたら、技の威力は半減してしまうだろ。


 ならもう、”アレ”でいくしかないよな……。

 1番単純で、1番簡単な方法。



雷身兵団(らいしんへいだん)!!】



 俺は愛刀・百雷鳴々(ひゃくらいめいめい)の雷から生み出した”雷の分身達”によって、一斉にアテラへと切り掛かっていた。


 さすがに1体1体の戦闘力は"本体の俺"には及ばないが、それでもスピードはかなり早く、相手を惑わせるには十分な技だ。

 見た目は”雷を(まと)って発光している俺”みたいな感じにしているが、コレはあくまでも(おとり)

 本当の作戦はまだまだこれからだ。



「ほぅ、雷の分身ですか。器用なことをしますね。しかし浅い、浅すぎますよサン・ベネット!この程度の技でアテラを倒せるはずがありません。

 つまりコレは何かの時間稼ぎでしょう!?何をしてもムダだというのに、小賢しい元Sランク冒険者ですねぇ!!?」


「ハハ、分かってるなら最後まで付き合ってくれよ。俺の時間稼ぎにさぁ!?」



 俺は分身を率いて、一斉にアテラに襲い掛かる。

 四方八方、出来るだけ奴らの注意が分散するようにタイミングをズラすのだ。


【ブンッ!ブゥオン!!!】


 するとアテラも尻尾の剣をブンブンと振り回しつつ、口から弱めの光属性ブレスで対抗してきた。

 体長100mを超えるアテラは、動くだけでも凄まじい風圧で街を襲っている。


 それにしてもアテラの尻尾の剣、あれにも魔力を打ち消す力が込められているな。

 実際あの尻尾に切られた俺の分身は、”切られた”というより”消し飛ばされた”ような消滅の仕方をしている。



「あれに切られたらオシマイって事か?」



 俺は肝を冷やしながらも、分身の中に紛れて高速でアテラ達に攻撃を仕掛け続けていた。

 危険度Aランクまでの魔物であれば、この高速の全方位攻撃でほとんど追い詰めることができる。


 だが残念ながら神の剣竜と呼ばれるアテラ、そもそも分身程度の攻撃ではウロコにキズを付けることすら難しいようだった。


 いくらなんでも硬すぎるだろ……!



「こんなハエのような攻撃を続けてどうするつもりですかサン・ベネット!?そろそろ時間稼ぎはいいんじゃないんですか!?」


「あぁ、そうだな。じゃあそろそろ決めさせてもらうよ」



 そう言って俺はいよいよ行動に移そうとする。

 だがどうやら仮面男は俺の次の行動を予測していたようで……。



「どうせ背後から私を攻撃をするんでしょう!?アテラよりも明らかに弱そうな私から倒そうとするのが定石ですものねぇ!!」



 そう言いながら後ろにバッと振り向いた仮面男の視線の先には、案の定雷を纏った俺がいた。


 クソ、やっぱり読まれてたのか……!?

 防御する姿勢は取れていないのに、どうすれば……。



「私も神衛の4傑!アナタを殺す魔法ぐらい、いくらでも持っているんですよ!!食いなさい、【ヘル・フレイム】!!」



 そう言って仮面男の手から放たれたのは、悪魔族にしか使えないはずの闇属性魔法だった!

 一瞬にして俺の視界は黒い炎に包まれ、そして体の全てを灰になるまで焼かれて……。



「そんな訳ないだろ、バーカ。こっちだよ変態仮面」



 結論から言うと、焼かれたのは俺本体に似せた”分身”だった。

 分身の中の1体だけ纏っている雷の量を減らして、高速攻撃の中で”あえてそれが本体”だと錯覚させていたのだ。

 

 そして分身に紛れていた肝心の俺本体はというと……。



「よっしゃぁああ!気合い入れていくぜぇええ!!!」



 スキを見て剣竜アテラの腹部に入り込んでいた俺は、大きなウロコをガシッと数枚抱き抱えて……。



「ぶっっっっっ飛べぇえええ!!!」



 俺は魔眼スキル【魔力感知】とは別の”2つ目のスキル”使って、アテラを思いっ切りぶん投げていたのだった!




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