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39.弱者から狩るのが基本

「その眼帯と雷光龍の刀……。

 ようやく見つけましたよサン・ベネット!結論から言いいましょう、アナタには今日ここで死んでもらいます」


 そう言い放ったのは神竜、、、


 ではなく、その頭に乗っていた白い仮面の人物だった。



「誰だ、お前……!」



 俺は見た事のない仮面の人物に対して語りかける。

 なにせあの”剣竜”の頭に乗っているのだ、おそらくヤツがこの異常事態のカギを握っているのは間違いなさそうだからな。


 そして仮面の男も、隠す事なく俺の質問に答え始める。


「誰だと言われば難しいですが……強いて言うなら、この国において【神衛(しんえい)の4傑】と呼ばれております」


「神衛の4傑?あのクローブ王国の国王を守る精鋭集団ってヤツか……!?」



 おいおい、まさかこんな所で出会う事になるとは。

 白い仮面に黒いローブに身を包んだ、明らかに怪しい格好。


 これが今日、ケンプトン砂漠でアスロットと少しだけ話題に上げたあの神衛の4傑だってのか?


 本物なのか?だとしたら何で今まで会えなかった?

 そして何でこのカルマルに来たんだ?


 謎が謎を呼ぶ、そんな感覚だ……。



「それで話を戻しますが、アナタがサン・ベネットで間違いなさそうですねぇ。

 ナツキ・リードと共にチーリン山脈にいると聞いていたのですが、まさかカルマルの方にいたとは。まぁどちらにせよ国王様には良い報告が出来そうです」


「……まさか俺とナツキさんを狙いに来たっていうのか!?しかもお前の言い方から察するに、あのクソ国王の命令かよ」


「クソ国王ですと?撤回しなさい、あの方はこれからの時代を作る神ですよ。アナタのような下民が簡単に口にしていいようなお方ではありません」


「ハッ……どこまでも腐りやがって。救いようがねぇな」



 今の会話で、ある程度の状況が分かった。


 この剣竜と仮面の男は、俺とナツキさんが一緒に暮らしている事を知っていて、わざわざ小屋の方に行っていた。

 だけど俺たちが不在だったので帰ろうとしたら、近くの街に俺がいたと……。


 ……あれ、でもナツキさんは俺より先にチーリン山脈の方に帰ったよな。コイツらは気付かなかったのか?


 一応遠回しに聞いてみるか。



「それで、ナツキさんはどうするんだ?悪いが今の俺と一緒にいないぜ?」


「ナツキ・リードですか?あの女なら、ここにくる途中に見かけましたよ。おそらくチーリン山脈に帰る所でしょう?」


「……そうか。なら先にナツキさんを狙うのが定石じゃないのか?」


「ヘハ、ヘハハハハハハ!!!貴方、本当にバカなんですねぇ!!!」



 男は仮面をしていても、下卑た笑みを浮かべているのが分かった。

 それほどにまで俺のことを見下し、完全に舐めていやがるのだ。



「そんな事、少し考えれば分かるじゃないですか!

 要は少しでも勝率を上げる為の作戦です。敵を分散するのは戦術の基本でしょう。邪魔になるだけの”弱者”を先に狩ってから本命を叩く事の、何がおかしいのでしょうか!?」

 

「なるほど、ごもっともだな。だけどその油断がお前の敗因になるんだよクソったれが」



 よし、決めた。絶対に俺がコイツを痛い目にあわせる。

 その弱者にすら勝てないって事を、シッカリ体に教えてやらないとな……!



【キィィイン】



 俺は(さや)から愛刀の”百雷鳴々(ひゃくらいめいめい)”を抜き出し、そして剣竜と仮面男に向かって(きっさき)を向ける。


 さぁ、いよいよ開戦だ。



「悪いが加減はできないぞ仮面野郎。死んだことにも気付かないぐらい早く殺せるように努力するよ」


「フフ……その言葉、ソックリそのままお返しいたしますよ。アテラ、閃煌(せんこう)を見せてあげなさい」



 するとその合図と共に、剣竜アテラはガッと大きな口を開き鋭い牙を露わにする。

 シンプルに身体のサイズが大きいという事もあって、その牙の迫力も圧倒的だ。


 だが問題は牙ではない。

 光を放ち始めた口の中なのだ。


 俺は過去に1度だけ龍と戦った事があるが、奴らは口から炎などの攻撃を放ってくる。

 おそらくこれも、口から何かを放つ前触れだろう。


 まだ魔力をハッキリとは感知できないが、目で見た情報から対策を練っていく。



「仕方ねぇな、いつでも撃って来いよ剣竜。雷霆(らいてい)の速さナメんじゃねぇぞ」



 だがここで俺は気付く。

 気付いてしまった。


 ────ここは街中だと言う事に。



「うわぁ!大きなドラゴンだっ!!」


「……!?!?」



 突然俺の背後の建物から、幼い子供の声が響いたのだ!


 チラッと見た感じ、5歳ぐらいの少女だろうか?

 おそらく親とはぐれたか、そもそも親が気付いていないのだろう。


 少なくとも、俺が攻撃を避ければ彼女に当たるという事実だけは変えようがなかった。



「待てっ!!まだ国民が……」


「アテラ、放ちなさいっ!!!」



 国を守るはずの竜と、国を収める国王を守る神衛の4傑の1人。

 だがコイツらは問答無用で、俺とその延長線上にいる少女に向かって閃煌(せんこう)という名の強力なブレスを放つのだった。




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