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36.戦士の基本は食事から!

「うおお!デッカい肉だぁあ!!」

「……僕の盾ぐらい大きいね」

「私の身長ぐらい大きいよぉ……」



 既に夕暮れに差し掛かっているカルマルの街並みだが、飲食店はこここかが本番だ。

 夕食を控える客たちがドンドンと増え、店の前にゾロゾロと列を成し始めている。



「お前たち何が食いたい!?」


「「肉!!!!」


「若い男2人は肉だな。魔導師の君は?」


「に……肉」


「素直でよろしい!!ナツキさんも肉でいいっすよね?」


「あぁ、彼らの好きなモノを食べさせてやれ」


「了解っ!!」



 そして俺は自分の鼻を頼りに、美味しい肉料理店を探し当てる。

 貧困時代に鍛え上げた俺の嗅覚(きゅうかく)は、その辺の魔獣より精度が高い自信があるからな。



「よし、あそこだ!若者たち、雷霆(らいてい)の俺に遅れるなよっ!!」


「「「はいっっ!」」」



 隣で”やれやれ”という表情を浮かべるナツキさんをよそに、俺たち4人は肉料理店へと駆け足で向かっていく。

 けど俺はそんなナツキさんのリアクションすらも横目で見て、少し嬉しくなっていた。


 人との関わりを通じて、もっと彼女の色んな表情を見ていけたらいいな……なんて事を考えてしまったのだ。



「ナツキさんも、早く!!」


「あぁ、スグに行くよ。料理は逃げないからね」



 その笑顔を一生見ていたいと思う自分がいた。




「よし、次はデザート食べ尽くしだっ!!!」


「ちょ、ちょっと待って下さいベネットさん……少し休憩を……」



 既に5店舗をハシゴした俺たちは、いよいよ食後のデザートの時間を迎えようとしていた。


 ……だがどうやら若者3人は満腹が近づいている様子である。



「おいおい、そんなんじゃ強くなれないぞお前たち!

 アクタ、リジェ、メイジー、お前たちの胃はそんなもんか!?」



 先ほど知った3人の名前を叫んだ俺は、彼らの限界に訴えかける。 

 だがどうやら本当にしんどそうな様子だ。


 ちなみに剣士がアクタ、盾がリジェ、魔導師がメイジーという名前である。

 彼らには既にナツキさんの事も紹介済みだ。



「ベネット、もうその辺にしておいてやれ。普通の人間は君ほどイカれた消化器官を持ってはいない」


「そういうナツキさんもピンピンしてるじゃないっすか」


「私は……体が大きいだけだ。物理的に沢山食べられる」


「え、遠回しに俺の事チビって言ってます?


「そんな事言っていないだろう、気にしすぎだチビット」


「はっきりチビって言った。オブラートって知ってます?」



 この様に普段通りの会話を続ける俺たち。

 しかしどうやら若者3人から見れば、この光景は異常に映っていたようだ。



「なんであんな量の食事をして、普通に話しているんだ……。やっぱりSランク冒険者は食事から違うんだ……」


「信じられない」


「私、もう歩けないですぅぅ……」



 結局3人はその場から動けずに、座ってしまっていた。


 さすがに悪い事をしたかな?

 でもこれも冒険者として強くなるためには必要な部分だ。

 大きくなれ若者達……!!



「ベネット、私はそろそろ小屋に帰ろうかと思っているんだが」


「え?あぁ、了解っす。じゃあ若者達が動ける様になったら俺も戻りますね」



 ここでナツキさんは小屋に帰ることを報告してきていた。

 元々小屋に帰る予定だったのに、わざわざ頭に厚い布を被ってくれてまで食事についてきてくれたナツキさんの優しさには感謝だな。


 ちなみに厚い布は、ナツキさんが”赤竜の女王”という事がバレないために被っている。


 ……まぁそこまでして付いてきてくれたのは、沢山美味しい料理を食べたかっただけかもしれないけど。



「じゃあナツキさんも気をつけて帰って下さい」


「あぁ、3人を頼んだぞ。念の為に言っておくが、それ以上無理に食べさせたりはするんじゃないぞ?」


「分かってますよ~!俺もそこまで鬼じゃないっす」


「まったく心配だよ……」



 ナツキさんは3人を気にかけつつも、渋々帰路についた。

 さて、じゃあここからは3人の回復具合も見つつ、俺も明日以降の食材を買っておかないとな。



「お前たち、そこで座って休んどきな。俺は買い物の用事があるから、終わったらまた帰って来るよ」


「う、うっす……」

「……おぇ」

「た、食べ過ぎて死んじゃうぅぅ……」


「耐えろ耐えろ、強い肉体作りは戦闘においての基本だぞ。スグ帰ってくるから」



 こう言い残した俺は、本来の目的でもある食材の買い出しへと向かう。

 とはいえもう日は沈んでしまったので、以前立ち寄った市場の露店も閉店に向かいつつあった。



「ヤバいヤバい、早く行かないとっ。残り物は少しぐらいあるだろ」



 こうして俺は、駆け足でカルマルの街並みを抜けていくのだった。


 厄災が間近に迫っているとは気付かずに………。




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