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111.魔力と神力

 宴は終わりを迎え、人影もかなり少なくなってきた。宴会場に残っていたのは、俺達夫婦や数人の龍族ぐらいだ。



「おいお前らぁ、ちょっといいかぁ?」



 すると残っていた龍族の王・穿天様が俺たち夫婦を呼んでいた。どうやら最後に”二人に”伝えたい事があるらしい。



「改めて今回のツァンツィーの件、ご苦労だったなぁ。特にナツキがいなかったら、かなり厳しい戦いになっていたとリィベイやその部下達からは聞いてる」



 それを聞いて、少し気まずい表情を浮かべてしまった俺。まぁ俺が役に立たなかったのは事実だし、仕方のない事なのだが。


 ………なんて内心で思った直後だった。



「そしてサン。今のお前は刀が無いだけで、持っている力自体は相当なもんだ。俺の正殿でリィベイと模擬戦をした時にそれは分かっていた」

「えっ!ありがとうございます!!」

「あぁ。だけど一つだけ気になる点があるなぁ」



 褒められて浮かれている俺だったが、そのまま穿天様は事実も突きつける。



「お前、神力(じんりき)の使い方が下手くそすぎるんだよなぁ。魔力の使い方は慣れたもんだが、神力を全く使えちゃいねぇ」

「神………力?いや穿天様、神力は各国の一部の王族にしか流れていない特殊なモノでして………」



 だが俺の知っている知識を言い終える前に、穿天様はスグにその知識を否定し始める。



「いいやぁ、違うなぁ。人間の形をしている限り、必ず神力は流れている。神力は人間だけに許された、人間本来の力だからなぁ?そもそも考えた事は無かったのかぁ?なぜ人間が”魔の力”をエネルギーとして動いているのか。

 そう、本来魔力は魔族のモノなんだからなぁ」



 穿天様は俺が学んできた全ての歴史を否定し始めていた。だが確かに穿天様の言っている事は腑に落ちる。なぜ人間が魔の力・通称魔力を扱っているの、これまで疑問に思わなかったのだろう。


 つまり穿天様の言っている事が本当ならば、俺にも王族にしか許されない神力が流れているって事なのか………!?



「それに対して神力は人類全員に流れている。ただしその体内の割合は年々減っていくし、世代が後になればなるほど薄くなっていく。まぁお前の世代なら、大体一パーセントかそこらじゃねぇか?」

「一パーセント………。少ないですね」

「まぁ人類と魔族の歴史を知れば、仕方ない事だなぁ。まぁ今はそんな事はどうでもいい。とにかくサン、お前の中にある神力は何の仕事もしていない。むしろ神力を使っていないのにそこまでの強さを持っている事の方が異常だからなぁ」



 そして穿天様は両手を交えながら、俺に”イメージ”の話を始める。



「いいかぁ?魔力が炭だとしたら、神力は火だ。火があって初めて炭は本当の力を発揮できる。神力こそが、魔力の効率をさらに高めるカギだと思えぇ。今のお前は、その感覚を掴めばもっと強くなれるって事だなぁ」

「は、はい!ありがとうございます!」 



 俺はわざわざアドバイスをくれた穿天様に頭を下げ、感謝の気持ちを伝えていた。穿天様もそれに対し、満更でもなさそうだ。

 それにしても、正直このシージェンに来てからは知らない事を知る場面ばかりだな。以前来た時には特に感じなかったこの数々の刺激は、間違いなくナツキさんが一緒にいてくれるからなのだろう。

 とりあえず俺は内心でナツキさんにもお礼を言っておいて、後で二人きりになった時に直接伝える事にした。


 するとそんなナツキさんも、穿天様の話を聞いた上で口を開く。



「魔力と神力の使い方なら、私の剣術の先生に話を聞きに行くのが良いかもな。あの人ほど魔力と神力の扱いに長けた人はいない。私も先生からその技術を学んだ」

「そうなんですね!………あぁ、だからナツキさんの魔力効率の良さは異常だったのか!会った時から凄いと思ってましたけど、まさか神力を扱う技術を駆使していたとは」

「私はてっきり知っているモノかと。むしろ君は神力のブーストを意識せずにあの戦闘力だった事に驚いている」

「そんな褒めないでくださいよぉ~!もっとイチャイチャしたくなるじゃないですかぁ~」

「イチャイチャした覚えはない。断じてな」



 そう言い切って腕を組むナツキさんだったが、きっと今、脳内では俺とのイチャイチャの日々がフラッシュバックしている事だろう。知らんけど。



「それじゃあ、ワシから伝えたい事は以上だ」



 すると俺達の会話が終わるタイミングを見計らってか、穿天様は最後の締めに入る。どうやら穿天様と話すのはここが最後になりそうだ。



「フレアの最後の刀の件も、力になれず済まなかったなぁ。もし封印を解ける唯一の男が帰ってきたら、俺から使者でも送ろう。それじゃあお前らぁ、死ぬなよ。俺よりも長く生きて見せろ」



 そう言って穿天様は残り酒を一気に飲み干していた。


 初めて穿天様の姿を見た時は、あまりの威圧感に全身が震えた。だが一連の流れを終えた今となっては、懐の深い誇り高き龍族の長として尊敬の念を抱いている。

 偉大なる龍神王・穿天様。どこかで再び会う事が出来たら嬉しいな。



 こうして俺とナツキさんはそのまま龍宮城で一泊した後、いよいよシージェンの街を出発する準備を進めていった。


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